Netflix『アドレセンス』全編ワンカット撮影の裏側 主演スティーヴン・グレアムと製作陣が明かす「演劇とテレビの融合」

スティーヴン・グレアム、オーウェン・クーパー、Netflixシリーズ『アドレセンス』写真:Courtesy of Netflix
スティーヴン・グレアム、オーウェン・クーパー、Netflixシリーズ『アドレセンス』写真:Courtesy of Netflix
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13歳の少年ジェイミーが逮捕され、クラスメイトの少女の殺人容疑をかけられる―――。Netflixの新作シリーズ『アドレセンス』は、「もし、自分の10代の子どもが恐ろしい罪に問われたらどうするか?」という極めて難しい問題を投げかけ、“有害な男らしさ”と“いじめ”の心をむしばむような影響を探求している。

■『アドレセンス』の原点は?

エリン・ドハーティ、オーウェン・クーパー、Netflixシリーズ『アドレセンス』写真:Courtesy of Ben Blackall/Netflix

ジェイミーの父親役を務めたのは、『アドレセンス』と同じくワンカットで撮影されたフィリップ・バランティーニ監督の映画『ボイリング・ポイント/沸騰』のスティーヴン・グレアム。グレアムは、『アドレセンス』の共同クリエイターとしても携わっており、バランティーニと再タッグを組んでいる。

『アドレセンス』のアイデアの原点について、グレアムはイギリス各地で若い少年たちによる刃物犯罪がまん延していることを挙げ、「少年たち――大人の男ではなく、脳もまだ完全に発達していない――が少女を殺してしまう事件が特に印象に残っていました。だからこそ、『アドレセンス』(=青年期)というタイトルになりました」と説明する。

「ただ、『一体何が起きているんだ?なぜこんなことになるんだ?社会全体がどうなっているんだ?』と考えました。こういう事件がニュースになると、『カウンシルエステート(低所得者層向けの公営住宅)出身の子ども』と聞いただけで、みんなすぐに家庭のせいにしてしまう。誰もが、そんな風に思ったことがあるはずです」

■驚異のワンカット撮影の裏側

クリスティン・トレマルコ、スティーヴン・グレアム、Netflixシリーズ『アドレセンス』写真:Courtesy of Ben Blackall/Netflix

『アドレセンス』を表すなら、「大胆」かつ「革新的」という言葉がふさわしい。というのも、本作はすべてのエピソードがひとつの長いワンカットで構成されているのだ。製作会社Warp Filmsのエミリー・フェラー氏は、「ワンカットの技法は魅力的ですが、制作側にとっては信じられないほど大変な挑戦でした。でも、そのおかげで信じられないほどの緊張感が生まれたのです」と振り返る。

グレアムは、ワンカットの手法を「演劇とテレビの融合」と表現する。「技術的には演劇に近く、僕たちはカメラに向けて芝居をしています。毎エピソード、1週間かけてフィル(監督)と役者たちでリハーサルを重ね、すべての場面をひとつひとつ丁寧に分析していきました。脚本が本当に素晴らしくて、細かいところまで打ち合わせました。そして、完全にキャラクター没入していったのです」

またグレアムにとって、ワンテイクという制約の中で演じることは、むしろ精神的に落ち着く効果をもたらしたという。「カメラワークの段取りにも丸1週間を費やしました。一方、いざ役者として現場に入ると、自分たちの意見やアイデアも取り入れられます」

「すべてがシームレスになるように、テーブルの周りをどう動くかといったことを自分たちで考えなければなりません。本当に素晴らしいプロセスでした。同時に、役者としてこれほど心が静まる経験はしたことがありません。『アクション』の声がかかった瞬間から、『カット』がかかる最後の瞬間まで、ずっとそのキャラクターの中に居続けるのですから」

■緻密な調整の連続、1話の制作に3週間

Netflixシリーズ『アドレセンス』写真:Courtesy of Netflix
Netflixシリーズ『アドレセンス』写真:Courtesy of Netflix

『アドレセンス』は、イングランドのウェスト・ヨークシャー州ウェイクフィールドで実際のロケ地とスタジオ撮影を組み合わせて制作。12週間の準備期間を経て、1話ごとに3週間が割り当てられた。

製作会社Warp Filmsのマーク・ハーバートCEOは、「最初の1週間はキャストとのリハーサルで、ほぼリアルタイムで編集していくような感覚で細部を磨き上げます。2週目は、カメラやスタッフを含めた本番さながらのリハを行い、途中でエキストラを入れました。エキストラの配置は、まるで軍隊の作戦のように綿密でしたね。そして、3週目は7日間で撮影を行います。子役もいるのでさらに複雑になり、1日2回のテイクで進める体制を整えました」と説明する。

言うまでもなく、『アドレセンス』のワンカット世界を作り上げることは、他のテレビ制作とはまったく異なる作業であった。「本当に、ひたすらプロセスを見直し続ける日々でした。『もっと速くしなきゃ。あの部屋からこの部屋への移動をもっと短縮できないか』ってね。常に微調整が必要だったので、撮影には毎日立ち会わなければなりませんでした。クルーが本当に素晴らしくて、準備にはとにかく手間がかかりましたが、その反面、編集作業が一切なかったんです」と、ハーバート氏は語る。

視聴者に期待する本作への反応として、ハーバート氏は次のように述べた。 「考えさせられる作品を作るというのが狙いです。そして、観終わった後に一緒に観た人に『自分だったらあの状況でどうしたと思う?』と問いかけたくなるような、そんな作品を意図しました」

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌

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