Netflix『君との永遠』レビュー:ジュディ・ブルームの名作が現代的にアップデート

アメリカで1975年に初版が刊行されたジュディ・ブルームの『キャサリンの愛の日(原題:Forever…)』は、長年にわたり人気を誇っている。電子版には、著者ジュディ・ブルームによる小さなメッセージが1章冒頭直前に挟まれている。この部分は2014年に追加されたもので、性感染症の予防に関する最新情報を提供するためのものである。
ほんの1ページの追加ではあるが、これはジュディ・ブルームが自らの名作を現代的な視点で再考する意欲を示している。一方で、Netflixでドラマ化した『君との永遠』では、より大きな変更が施されている。しかし、これらのアップデートは原作の否定ではなく、その精神を引き継ぎつつ、現代の若者に再び共感を呼び起こす試みであるといえる。
シリーズは「基にして(based on)」ではなく、「着想を得て(inspired by)」作られたと表記されている。この違いが意味するのは、物語の核心部分を保ちながらも、現代的な要素を取り入れたということである。
物語の大筋と舞台設定の変更
物語の大筋は変わらない。第1話はレジーナ・キング監督によるニューイヤーズ・イブのフォンデュパーティーから始まる。そこで少年(ジャスティン役:マイケル・クーパー・ Jr)と少女(キーシャ役:ラヴィー・シモーン)が出会い、急速に惹かれ合う。しかし、高校卒業が近づく中で二人の関係には困難が訪れる。
原作では1970年代のニュージャージー郊外を舞台にしていたが、新作では2018年の南ロサンゼルスとハリウッド・ヒルズが舞台となっている。物語の中心人物も、白人少女からブラックティーンエイジャーのカップルに変更されている。
テーマと現代的なアプローチ
二人のカップルが抱える嫉妬や将来への不安、性に関する葛藤は原作同様である。ジャスティンは依然としてペニスを「ラルフ」と呼ぶ。しかし、21世紀ならではの恋愛模様が描かれている。インスタグラムのハッシュタグがロマンチックな演出として使われ、セックスビデオが恋愛の障害となり、送信されなかったテキストが心の記録として登場する。
『君との永遠』はティーンエイジャーの恋愛物語であるが、単なる恋愛だけにとどまらず、親や社会の期待、不平等な現実にも向き合っている。例えば、裕福な家庭に育ち白人が多い私立校に通うジャスティンが、黒人の生徒が多いカトリック校の友人たちと過ごし、「ブラックネス」を感じ取るシーンがある。これが彼にとって新鮮で解放的な経験であることが示されている。
キャラクター描写と課題
ジャスティンとキーシャの関係性を描く中で、キャラクターの深堀りが不足している点がある。キーシャとジャスティンの友人関係がほとんど描かれておらず、彼らの社交生活が希薄であることが気になる。
特に、ジャスティンにはパーティーに誘う友人が1人しかおらず、キーシャにはサポート役の親友が1人しか登場しない。キャラクターを多面的に描こうとする意図があるにもかかわらず、この点は物足りない。
親たちの視点と世代間の対立
Netflixドラマ『君との永遠』は、若者だけでなく親たちにも温かい視線を向けている。ジャスティンの母は、息子が一人で運転していると最悪の事態を想像してしまう。父は、自らの夢を息子に託そうとするが、それがジャスティンには重荷となっている。
一方、キーシャの母も、理想像に沿うことを期待しすぎているが、そのプレッシャーが娘に与える影響を描き出している。
親の不完全さを認めながらも、その愛情の深さを描き出している。若者を理解するためには、彼らを取り巻く環境や親の影響を含めて考察する必要があると訴えている。
ジュディ・ブルームが『キャサリンの愛の日』を書いた動機は、「死なないでセックスをする二人の良い子たちの話を書いてほしい」という娘のリクエストであった。思春期の性に対するタブーは少しずつ薄れているが、依然として重要なテーマである。
『君との永遠』は、現代の若者が抱える恋や悩みをリアルに描き、世代を超えて共感を呼ぶ作品である。原作のエッセンスを受け継ぎつつ、新しい時代に合わせたアプローチで物語を再構築している点が評価できる。これからも多くの世代に愛され続けるであろう。
※この記事は要約・抄訳です。オリジナル記事はこちら。
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