広瀬すず、10年ぶりカンヌで主演の『遠い山なみの光』お披露目「映画が届いたと実感」
第78回カンヌ映画祭のある視点部門に選出された石川慶監督の『遠い山なみの光』が15日、公式上映された。石川監督をはじめ主演の広瀬すず、共演の吉田羊、カミラ・アイコ、松下洸平、三浦友和と原作のカズオ・イシグロ氏が参加した。
ノーベル賞作家のイシグロ氏が、出身地の長崎を舞台にした長編デビュー小説が原作。戦後間もない長崎と、1980年代のイギリスで原爆を体験した女性・悦子の記憶をひも解いていくヒューマンミステリーだ。
初めてのカンヌとなる石川監督は、「この映画をずっと支えていただいたカズオさん、ずっと映画で戦ってくれたスタッフ、キャストの皆さん、会場に駆けつけていただいた皆さんと、この特別な瞬間を共有できることをとてもうれしく思っています」と感激の面持ち。イシグロ氏は、「私が25歳の時に書いたひどい本がベースになっています。ひどい本から素晴らしい映画になるという長い歴史があります。石川監督が映画化の企画をくださった時に、美しい映画が生まれる可能性に満ちていた。そして、その直感は正しかった」と、ユーモアたっぷりの挨拶で会場を沸かせた。
エンドロールが始まった瞬間から拍手が起き、約5分に及ぶスタンディングオベーションへと発展。石川監督、イシグロ氏、広瀬らは互いに握手、ハグを交わし、会場の熱気を全身で味わった。石川監督は、「見終わった後の皆さんの顔を見たら凄く感動して泣きそうになりました。皆でこの瞬間をシェアできたのは本当に良かったなと思います」と万感の表情で語った。
イシグロ氏は、1994年にコンペティション部門の審査員を務めたことがあるが、自身の作品を携えての参加は初めて。「役者の皆さんのパフォーマンスが本当に最高だと思いました。45年前に小説を書いた当時は、こんなに素敵な映画になってカンヌでプレミアをして、温かく歓迎されるとは全然思わなかったので素晴らしかったです」と太鼓判を押した。
広瀬は、「凄く特別な空間の中で、映画が届いたんだなというのを実感できる瞬間だった。いまだに景色が焼きつくような、そんな空間でした」とほおを紅潮させた。カンヌは2015年にコンペに出品された是枝裕和監督の『海街diary』以来10年ぶり。「当時は、ただついてきちゃったみたいなテンションで凄くラッキーな感覚でいたので、改めていろいろと感じること、思うことがありました。街ごと映画を盛り上げるというこの空気感はやっぱりなかなか経験できない、カンヌならではの世界だなと思います」と声を弾ませた。
『遠い山なみの光』は、9月5日に全国で公開される。
記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴木元
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