トランプ大統領、ブルース・スプリングスティーンに反撃「帰国後の彼の行く末を見届けよう」

米国のドナルド・トランプ大統領が、伝説のロッカーであるブルース・スプリングスティーンを「過大評価されている…才能のない男で、ただの押しが強く、不快な人物だ」と酷評した。
トランプ大統領は現地時間金曜日、自身のSNSプラットフォーム「Truth」で共有した。これはスプリングスティーンが5月14日水曜日、イギリスのマンチェスターでの「Land of Hopes and Dreams」ツアーの開幕公演でトランプ政権を痛烈に批判したことを受けてのものである。
トランプ大統領の挑発的発言の全容
「スリーピー・ジョー(ジョー・バイデン前大統領の愛称)は自分が何をしているのか見当もつかなかったが、ブルース・スプリングスティーンは『石ころのように頭が悪い』。
彼は何が起きているのか見えていなかったのか、あるいは見えていたのか(さらにタチが悪い!)」とトランプは綴っている。
さらに「この干からびた”プルーン”のようなロッカー(皮膚が縮んでいる!)は国に戻るまで『口を閉じておくべきだ』、それが『普通』だ。そうすれば、彼がどうなるか皆で見届けよう!」と、帰国後の行く末を暗に脅す内容が含まれていたのである。
ブルース・スプリングスティーンの政治的発言
ロックの殿堂入りを果たしたブルース・スプリングスティーンとEストリート・バンドは、2025年ツアーの欧州公演の幕開けとなるマンチェスターのエティハド・スタジアムで、米国大統領とトランプ政権を厳しく非難する内容のメッセージを発した。
ステージ上でスプリングスティーンは観客に向かってこう語りかけた。
「偉大なるEストリート・バンドは今夜、危険な時代においてアート、音楽、ロックンロールの正義の力を呼び起こすためにここにいる。私の故郷であり、私が愛し、歌い続けてきたアメリカ、250年もの間、希望と自由の灯台であり続けたアメリカは、現在、腐敗し、無能で、裏切り行為を働く政権の手に委ねられている。今夜、私たちは民主主義と私たちのアメリカの実験の最高の部分を信じるすべての人々に、私たちと共に立ち上がり、権威主義に対して声を上げ、自由の鐘を鳴らすよう呼びかける!」
政治的意図を帯びたセットリスト
公演では政治的意味合いの強い選曲が目立った。
セットリストには29曲が含まれ、その多くがアメリカのアイデンティティ、正義、市民生活に関連するテーマの曲であった。
コンサートは、アメリカはこうあるべきだ”というメッセージを込めた「Land of Hope and Dreams」で幕を開け、最後に「People Get Ready」の一部が演奏された。続いて「Death to My Hometown」「Lonesome Day」「My Love Will Not Let You Down」と演奏され、生演奏では初めて披露された「Rainmaker」はスプリングスティーンが「我らが親愛なる指導者に捧げる」と紹介した。
メインセットでは「Darkness on the Edge of Town」「The Promised Land」「Hungry Heart」「My Hometown」などが演奏され、アンコールは「Born in the U.S.A.」から始まり、「Born to Run」「Bobby Jean」と続いた。公演は「Chimes of Freedom」で締めくくられたが、これはスプリングスティーンが1988年の「Tunnel of Love」ツアー以来演奏していなかったボブ・ディランのカバー曲である。
米音楽家連盟の支持表明
トランプ大統領の発言(テイラー・スウィフトへの批判も含まれる)を受け、アメリカ音楽家連盟(AFM)は声明を発表した。
「(AFMは)会員である2人(ブルース・スプリングスティーンとテイラー・スウィフト)がアメリカ合衆国大統領から個人的に攻撃されることに対して沈黙を守ることはできない。彼らは優れたミュージシャンであるだけでなく、アメリカや世界中の何百万もの人々にとってのロールモデルであり、インスピレーションの源である。『Born in the USA』であれ『Eras Tour』であれ、彼らの音楽は時代を超え、強い影響力を持ち、深い文化的意義を持っている。ミュージシャンには表現の自由があり、我々はすべての会員と連帯する」と発表している。
芸術表現の自由と政治的介入の境界線
本件は単なる有名人と政治家の個人的な対立を超え、芸術表現の自由と政治的介入の境界線に関する重要な問題を提起している。
米国憲法修正第1条で保障された表現の自由と、大統領の発言力の間に生じる緊張関係は、民主主義社会において常に注目されるべき課題である。
スプリングスティーンのような影響力のある芸術家が政治的発言を行うことは珍しくないが、現職大統領から直接的な批判や暗に脅しともとれる発言を受けることは異例であり、表現の自由に対する潜在的な威圧として多くの関係者から懸念が表明されている。
一方で、ブルース・スプリングスティーンは5月17日と20日に再びマンチェスターで公演を予定しており、今後のステージでどのような発言をするかが注目されている。
このような芸術家と政治の対立は、2024年の大統領選挙とトランプの政界復帰を経た米国の政治的言説の分断を象徴するものとなっているのである。
※本記事は抄訳・要約です。オリジナル記事はこちら。
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