リチャード・リンクレイター監督、「トランプ関税」に対し私見語る

カンヌ国際映画祭に最新作『ヌーヴェル・ヴァーグ(原:Nouvelle Vague)』を引っ提げて参戦したリチャード・リンクレイター監督が、記者会見に応じた。
『ヌーヴェル・ヴァーグ』は1950年代末のフランス映画界を席巻した「ヌーヴェルバーグ運動」へのオマージュだそうで、リンクレイターは同作の制作に至った動機について「ずっとこの仕事をしていれば、映画を作ることについての映画を作れるんじゃないかなと思っていたので、これが私のそれです」と語った。
本作は、ジャン=リュック・ゴダールが『勝手にしやがれ』(1960)を撮影する過程を描いた伝記映画となっている。同作は全てのカットが4対3のアスペクト比に設定されている他、セリフも全てフランス語というリンクレイターのこだわりが凝縮された一作だ。ゴダール役には、フランスの映画監督ギヨーム・マルベが扮する。
ゴダールの『勝手にしやがれ』といえば、「ヌーヴェルバーグ運動」の金字塔として名高い一作だ。同作では警官を殺した自転車泥棒のミシェル・ポワカール(演:ジャン=ポール・ベルモンド)とアメリカから来たジャーナリズム専攻の学生、パトリシア・フランキーニ(演:ジーン・セバーグ)の恋模様を描かれる。リンクレイターはフランス映画史に残る一作を題材とした経緯について冗談混じりに語った。
「10年ほど前にこの映画について構想を練っていた時、きっとフランスの皆さんはアメリカ人の監督がやるといったら嫌がるだろうなと思っていましたね。だからこの作品はフランス以外で上映しようと思います」
しかしそんなリンクレイターの心配は杞憂だったようで、土曜日の夜に行われた『ヌーヴェル・ヴァーグ』のプレミア公開終了後はなんと10分間もスタンディング・オベーションが続いたのだそう。
リンクレイターは『勝手にしやがれ』を気に入っている理由として「それが自由を代表している、個人的な映画」だからだそう。さらに彼は語る。
「私は映画の撮影中に28歳に戻ったみたいでした。今までの経験を一旦忘れて、初心に帰りました。昔に戻った気分でしたよ」
ところで、アメリカ出身のリンクレイターはトランプ政権の「海外映画に関税100%」についてどう考えているのだろうか。
「実現するわけがありませんよ。だってあの人(トランプ大統領)は1日に50回くらいは言うことを変えるじゃないですか」
さらにリンクレイターはそんなアメリカの状況と比較した際にフランスの映画業界を羨ましいと感じているそう。
「私は本当にフランスの映画産業が制作に専念していて、自分の業界をケアしていることが素晴らしいと思いますね。業界が健全なものであるように常に配慮していますから。アメリカもその辺は見習ったほうがいいと思います」
ゴダールを始めとするユニークなクリエイターを産み出してきたフランス映画界。リンクレイターの言う通り、フランスを見習うことこそ今後のハリウッドが見出すべき活路なのだろうか。
※本記事は要約・抄訳です。オリジナル記事(英語)はこちら
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