新作『スーパーマン』レビュー:DCの新章開幕!ジェームズ・ガンが現代に放つ、人間味あふれる新たなスーパーヒーロー神話

新作『スーパーマン』より 写真:Courtesy of Warner Bros. Pictures
新作『スーパーマン』より 写真:Courtesy of Warner Bros. Pictures
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鬼才ジェームズ・ガンがDCスタジオの共同代表に就任後、初めて手がけた新作『スーパーマン』。これまで監督デビュー作『スリザー』やマーベル映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』などで、重厚なテーマを独自のユーモアで軽やかに描いてきたガンは、その手腕を『スーパーマン』でも遺憾なく発揮。王道のコミックス・アクションでありながら、温かく人間味あふれる物語に仕上げた。

本作は、クリストファー・リーヴ主演の『スーパーマン』(’78)および続編『スーパーマンII 冒険篇』(’81)への敬意を込めつつも、過去作を神格化しすぎることはない。作品全体には1938年の原作コミックへの深い愛情が注がれており、新鮮で躍動感あふれる1本となっている。

◆『スーパーマン』あらすじ

映画『スーパーマン』より 写真:The Hollywood Reporter
映画『スーパーマン』より 写真:The Hollywood Reporter

大手メディア「デイリー・プラネット」の記者として平凡な日常を送るクラーク・ケント(演:デヴィッド・コレンスウェット)。その正体は、クリプトン星から地球にやってきたスーパーマンであり、超人的な力を使って人々と地球を守っている。やがてスーパーマンは、自身の能力と使命に葛藤しながら、宿敵レックス・ルーサー(演:ニコラス・ホルト)の陰謀に巻き込まれていく。

◆クラーク・ケントとスーパーマン | 2つの顔の新たな描き方

映画『スーパーマン』より 写真:Warner Bros./Courtesy Everett Collection
映画『スーパーマン』より 写真:Warner Bros./Courtesy Everett Collection

デヴィッド・コレンスウェット演じるスーパーマンは、皮肉めいたユーモアと親しみやすさを持ちながらも、人類を守る責任に悩む繊細な内面を見事に表現。クラーク・ケントとしての姿も、従来の「気弱で不器用な記者」という型にはまらず、自然体で自信を持った人物として描かれている。

さらに本作では、物語冒頭からクラークとロイス・レイン(演:レイチェル・ブロズナハン)が恋人同士として描かれ、ジェームズ・ガンは新たなアプローチを提示した。

◆現代社会を映す悪役像 | レックス・ルーサーの再定義

映画『スーパーマン』より 写真:DC/YouTube
映画『スーパーマン』より 写真:DC/YouTube

ニコラス・ホルト演じるレックス・ルーサーは、従来の漫画的な悪役像を脱し、知的な策略家として描かれることで物語に緊張感を与えている。

また、本作のレックスは、イーロン・マスクやマーク・ザッカーバーグを彷彿とさせるテック界の億万長者として描かれている。はたして本当に異星人から人類を守ろうとしているのか、それともただ権力を求めているのか――その善悪の境界線は曖昧だ。ホルトは演技に絶妙な曖昧さを含むことで、多面的な悪役像を体現した。

◆注目の新キャラクター「エンジニア」と現代的テーマ

映画『スーパーマン』より 写真:The Hollywood Reporter
映画『スーパーマン』より 写真:The Hollywood Reporter

本作に登場する新キャラクター、エンジニアことアンジェラ・スピカ(演:マリア・ガブリエラ・デ・ファリア)は、ナノマシンを含む特殊な血液により、身体の一部を自在に変形させる能力を持っている。

彼女の能力によって、スーパーマンの秘密基地「孤独の要塞」のシステムに侵入可能となり、レックス・ルーサーはスーパーマンの両親からのホログラム・メッセージを修復。それを公開し、スーパーマンの地球での使命に対して疑念を植え付けるのだった。

さらに、レックス・ルーサーはSNSを駆使してスーパーマンのイメージ・信用を失墜させようとする。レックスの手下がネット上に大量の偽情報や陰謀論を拡散し、反スーパーマンのハッシュタグを次々と生成して世論を操作していく。

こうした展開は、AIやフェイクニュースといった現代の問題と重なっており、かつては荒唐無稽に思えた「偽情報によって崇拝される存在を社会的に抹殺する」という筋書きが、今では無視できない現実味を帯びている。

◆“鋼の男”スーパーマンの人間らしさ

映画『スーパーマン』より 写真:The Hollywood Reporter
映画『スーパーマン』より 写真:The Hollywood Reporter

壮大な物語の中で、最も“人間的な心”を見せるのは、皮肉にも地球外から来たスーパーマン自身である。デヴィッド・コレンスウェットはキャラクターに深い温かみと優しさを与え、物語が無秩序なファンタジーに傾きすぎないよう、常に現実的なトーンへと導いている。

レックス・ルーサーの策略により、スーパーマンは自分の存在意義を見失い、絶望の中で育ての親が営む農場に帰る。このシーンは、映画の中でも特に感動的で、美しく描かれている。

◆子ども心を忘れない、純粋なヒーロー映画の再生

映画『スーパーマン』より 写真:DC/YOUTUBE
映画『スーパーマン』より 写真:DC/YOUTUBE

『スーパーマン』は、ダイナミックなカメラワーク、創造力豊かな美術、世界最高峰のVFX技術、そしてジョン・ウィリアムズによる不朽のテーマ曲を織り込んだ迫力ある音楽によって、最後まで観客を楽しませてくれる。

 そして何より、本作の最大の魅力は、ここ20年ほどのスーパーヒーロー映画にありがちな「暗くて重い再解釈」を巧みに回避し、子ども心をくすぐるような純粋な驚きやワクワク感に回帰している点にある。

<『スーパーマン』作品情報>

■公開日:7月11日
■監督・脚本:ジェームズ・ガン
■キャスト:デヴィッド・コレンスウェット/レイチェル・ブロズナハン/ニコラス・ホルト/エディ・ガテギ/ネイサン・フィリオン/イザベラ・メルセド/アンソニー・キャリガンほか
■上映時間:129分

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌

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