「返金しろ!」がトレンド入り カニエ・ウェストの中国ライブが大炎上

アメリカのラッパー兼プロデューサーのカニエ・"Ye"・ウェストが2025年7月11日に上海浦東国際空港に到着した際に手を振っている。 ECTOR RETAMAL/AFP VIA GETTY IMAGES
アメリカのラッパー兼プロデューサーのカニエ・"Ye"・ウェストが2025年7月11日に上海浦東国際空港に到着した際に手を振っている。 ECTOR RETAMAL/AFP VIA GETTY IMAGES
スポンサーリンク

カニエ・ウェスト(本名:イェ)のライブ復帰は、波乱のスタートとなった。7月12日の夜、中国・上海で行われた彼のコンサートは、技術的トラブルや悪天候に見舞われたうえに、彼が40分以上遅れて登場したことで、何千人もの観客が『返金しろ!』と声を上げる事態に発展した。この気まぐれなラッパーであり、プロデューサー、実業家でもあるイェの復帰ステージは、混乱の中で幕を開けた。

彼は、度重なる論争で敬遠されがちで、協力的なパートナー探しにも苦労しているため、近年はライブパフォーマンスを行う機会が極めて少なくなっている。しかし、2024年9月に海南省海口市の五源河スタジアムで開催した収益性が高く非常にバイラルなリスニングパーティーの成功を受け、先週再び中国に戻ってきた。

カニエ・ウェスト 写真:Photo by Matthias Nareyek/Getty Images
カニエ・ウェスト 写真:Photo by Matthias Nareyek/Getty Images

最新アルバム『Bully』(いじめっ子)のプロモーションの一環として予定された今回の上海スタジアムでの待望のライブは、地元メディアによれば数分で完売しており、これまでの人種差別的発言やSNS上での数々の物議が、中国のファンの熱意を削ぐことはなかったことを示している。

国家主義的な論調で知られる中国の国営メディア『環球時報』は、イェのライブについて、「革新的なステージデザインやアップグレードされたセットリスト、国際的な制作チームによる、没入感のあるマルチセンサリー(多感覚的)な体験」として宣伝されていたと報じた。

さらに同紙は、「宣伝資料では、このライブを“音響、照明、映像、インスタレーションを融合させた、イェの音楽キャリア全体をめぐるジャンルを超えた旅”として打ち出していた」とも伝えた。

12日夜の上海スタジアムでは、開演直後から激しい雨が降り始め、オープンルーフの構造を通してステージや客席に雨が降り注ぎ、会場の雰囲気を大きく損ねた。午後7時30分の開演予定時刻を過ぎてもショーが始まらず、観客の間には次第に苛立ちが広がり、ついには数千人が「返金しろ!」と叫び始める騒ぎとなった。

イェは最終的に午後8時10分ごろに登場。背中に「China」と書かれたグレーのフーディーと黒いレザーパンツを着て、広大なグレーのステージに1人で静かに現れた。ステージには霧やプロジェクション、スポットライトが用いられ、彼の『Donda』時代を思わせるような厳粛でミニマルな雰囲気が演出されていた。ただし、今回は視覚的な演出はより控えめで、時折Yeの巨大な映像がステージ全体に映し出され、頭上のスクリーンには編集された追加映像が流されていた。

『環球時報』によると、今回のライブのチケットは中国の物価水準からすると高額で、価格は980元(約2万150円)から2,680元(約5万5,100円)だった。

中国のネット上に出回っている動画には、厳しい状況の中でもイェが全力でパフォーマンスする姿が映っている。ビートに合わせて激しく体を動かし、ヒット曲に合わせてラップしながら腕を大きく振り回すなど、気迫のこもった様子が見て取れる。

また、別の場面では最新シングル「Losing Your Mind」がスタジアムの音響システムから流れる中、イェは歌うのを完全にやめ、まるで打ちひしがれたかのように、ゆっくりとステージを後にする姿も見られた。

地元メディアによると、ショー全体を通して音響のクオリティは安定せず、音質は一貫性に欠けていたという。

コンサートがまだ終わっていない段階にもかかわらず、イェはすでに中国のソーシャルメディアでトレンド入りし、ファンの間で激しい議論を巻き起こしていた。

一部のファンは、悪天候の影響だとしてイェを擁護する声を上げたが、他の人々は彼の行動を「怠慢の表れ」と批判。中には「西洋でブランド価値が落ちているこのタイミングで、金儲け目的で中国に来たのでは」と、冷笑的な戦略だと見る意見まであった。

ニュースになり続けるという“奇妙な才能”を持つイェは、2025年に入ってさらに一線を越え、エンタメ業界やポップカルチャーの中で「のけ者(パリア)」としての立場を自ら受け入れるかのように振る舞っている。彼は物議を醸す音楽リリースやパフォーマンスを次々と行い、話題を集めている。

ショーン・“ディディ”・コムズとカニエ・ウェスト(2016年)写真:Dimitrios Kambouris/Getty Images for Live Nation
ショーン・“ディディ”・コムズとカニエ・ウェスト(2016年)写真:Dimitrios Kambouris/Getty Images for Live Nation

3月には、連邦レベルの人身売買裁判が始まろうとしていたショーン・“ディディ”・コムズにボーカルクレジットを与えた楽曲をリリース。6月13日には、長らくコムズを擁護してきたイェ自身がその裁判に一時的に出廷し、さらにその月の後半にはコムズの息子、クリスチャン・“キング”・コムズのEP『Never Stop』を発表した。

音楽活動では、今年3月に『WW3』というタイトルのアルバムを発表したが、その後『Cuck』に改題され、最終的に『A Perfect World』としてリリースされた。

この13作目となるスタジオアルバムからの最初のシングルは「WW3」で、そのカバー画像にはクー・クラックス・クラン(KKK)のフードが使われており、大きな批判を呼んだ。続く2枚目のシングル「Cousins」も、ミュージックビデオにKKKのシンボルやハーケンクロイツ(鉤十字)が登場したことで、さらなる物議を醸した。そして3枚目のシングルは、なんと「Heil Hitler(ハイル・ヒトラー)」というタイトルで、極めて挑発的な内容となっている。

※本記事は英語の記から抄訳・要約しました。

【関連記事】

スポンサーリンク

類似投稿