三宅唱監督『旅と日々』ロカルノ映画祭で金豹賞受賞、日本映画18年ぶり4作目の快挙

映画『旅と日々』ロカルノ授賞式にて、三宅唱監督
三宅唱監督 Locarno78, Palmarès, Concorso Internazionale, Pardo d’Oro – Grand Prize of the Festival and City of Locarno, Tabi to Hibi (Two Seasons, Two Strangers) by Sho Miyake
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スイスの第78回ロカルノ国際映画祭の授賞式が16日に行われ、三宅唱監督の『旅と日々』がグランプリに当たる金豹賞を受賞した。

日本映画の同賞は、1954年の衣笠貞之助監督『地獄門』、61年の市川崑監督『野火』、2007年の小林政広監督『愛の予感』に続き18年ぶり4作目の快挙。三宅監督はトロフィーを受け取り、「審査員の皆さま、選考委員の皆さま、全てのスタッフ、そして全ての観客の皆さまに心から感謝申し上げます」と喜びをかみしめた。

映画『旅と日々』ロカルノ授賞式にて三宅唱監督
三宅唱監督

同作は漫画家のつげ義春氏の「海辺の叙景」、「ほんやら洞のべんさん」を原作に、執筆に行き詰まった脚本家が雪深い山の宿の主人との出会いを通して人生と向き合っていく姿を描く。三宅監督は、「この映画に多大なインスピレーションを与えてくださったつげ義春さん、並びに二つの漫画の映画化を許諾してくださった(長男の)つげ正助さんに心から感謝申し上げます」としみじみ話した。

他の受賞者のスピーチを称えつつ、「とても驚いています。いい言葉が見つかりません。一緒に働いたすべての俳優、全てのスタッフの本当に美しい仕事が、このロカルノの地で評価されたことを心から光栄に思います。僕らは最高のチームです」と胸を張った。

映画『旅と日々』ロカルノ授賞式にて三宅唱監督
映画『旅と日々』三宅唱監督

主演のシム・ウンギョンは客席で歓喜の瞬間を見届け、「光栄に思います。監督に頼りながらスタッフの皆さんと一緒に旅したゴールがロカルノでとても、とてもうれしいです。審査員の方々、最高です」と笑顔。共演の河合優実もサムアップで偉業を称え、「びっくりして声が出ました。三宅唱監督、本当におめでとうございます。皆で映画を作った道のりの全て、初めて完成を観た瞬間、ずっと心を奪われ続けたこの作品が冠をいただき、心からうれしいです。関わってくれた全ての方と喜びを分かち合いたいです」と声を弾ませた。

15日 に行われたワールドプレミアとなる公式上映は、5分以上のスタンディングオベーションで迎えられた。「他者への不寛容や恐れが広がる世界で、他者同士がどんな時間を過ごせるのか別の可能性をつくりたかった」と製作意図を語っていた三宅監督。金豹賞という結果を出し、「この映画を作る前、最悪なことがたくさん起きているこの世界で一体映画に何ができるか深く悩んでいました。ただ、撮り始めて映画そのものに対する愛や信頼、そしてこの世界への愛をふたたび感じることができました。完成した映画を通して、多くの方とそれを共有できるならとても幸せです」と納得の表情で語った。

『旅と日々』は、11月7日に全国で公開される。

Locarno78, "Tabi to Hibi" Photocall, in the presence of Sho Miyake, Eun Kyung Shim and Yuumi Kawai, 15.08.2025
第78回ロカルノ国際映画祭に参加したシム・ウンギョン(左)、三宅唱(中央)、河合優実(右)

取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴木元

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