釜山国際映画祭2025、過去最多241作品を上映へ――アジアの名匠と新鋭が集結!

『No Other Choice(原題)』Courtesy of CJ ENM
『No Other Choice(原題)』Courtesy of CJ ENM
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釜山国際映画祭は、火曜日(現地時間)にソウルで2025年のラインアップを発表した。毎年秋に韓国最大の港町・釜山の海辺で開かれる本映画祭は、今年で30回目を迎え、9月17日から26日まで開催される。

開幕作はパク・チャヌク監督『No Other Choice』

開幕作には、パク・チャヌク監督のブラックコメディ・スリラー『No Other Choice(原題)』が選ばれた。本作はドナルド・E・ウェストレイクの小説『斧』を原作とし、25年間勤めた職を失ったマンス(演:イ・ビョンホン)が、新たな職を求めて必死に奮闘する姿を描く。

イ・ビョンホン主演の『No Other Choice(英題)』 Courtesy of CJ ENM
イ・ビョンホン主演の『No Other Choice(原題)』より Courtesy of CJ ENM

上映作品数は過去最多に

今年の釜山映画祭では、昨年の224本から241本に増えた公式選定作品が上映される。市内各地で関連イベントも開催され、上映期間中は地元観客を楽しませる多彩な催しが展開される。

また、アジアの現代映画に焦点を当てる競争部門も強化されている。今年は14本のアジア作品が、最優秀作品賞、監督賞、審査員特別賞、主演男優賞、芸術貢献賞などの主要部門で競う予定である。

アジアを代表する名匠と新鋭の最新作

さらに、アジアの名匠チャン・リュルの最新作『Gloaming in Luomu(原題)』、スリランカのヴィムクティ・ジャヤスンダラ監督による『Spying Star(原題)』、中国のビー・ガン監督の『Resurrection(原題)』、そして日本の新鋭・三宅唱監督がロカルノ国際映画祭で金豹賞を受賞した最新作『旅と日々』も上映ラインアップに加わっている。

注目の新進気鋭作品

ANORA アノーラ』の監督ショーン・ベイカーと、長年の共同脚本家ツォウ・シーチョンがプロデュースした『左利きの少女(原題:Left-Handed Girl)』も、今年の釜山で上映される。

さらに、台湾の俳優スー・チーによる監督デビュー作『Girl(原題)』、韓国のイム・ソンエ監督による『Seven O’Clock Breakfast Club for the Brokenhearted(原題)』、そして日本の新鋭・志萱大輔による長編デビュー作『猫を放つ』が主要ラインアップに加わっている。

毎晩、釜山では屋外シアターで「オープンシネマ」を開催し、観客に親しまれるジャンル映画が上映される予定である。

渡辺謙主演のミステリードラマ『盤上の向日葵』、トニー・レオンジャッキー・チェンが共演するアクション・クライムスリラー『The Shadow’s Edge(原題)』、さらにシュー・グァンハンとアンジェラ・ユン主演のラブストーリー『Measure in Love(原題)』などがラインアップされている。

海外で活躍する韓国映画人の作品

また、本映画祭は海外で活動する韓国映画人の作品群も集めている。

「ワールドシネマ」部門では、アンドリュー・アン監督による『ウェディング・バンケット(原題)』のリブート版が披露され、「フラッシュフォワード」部門では、韓国系カナダ人ロイド・リー・チョイ監督がニューヨークの配達バイカーを題材にした『ラッキー・ルー(原題)』を発表する。

さらに、中国からはベルリン国際映画祭で最優秀作品賞にあたる国際審査員グランプリを受賞した『The Botanist(原題)』、そしてベネチア国際映画祭コンペティション出品作、陳建航監督の『The River That Holds Our Hands(原題)』なども注目作品として登場する。

※1993年にアン・リーが監督した同名の映画作品をリブートしたもの

サテライトプログラムと特別企画

今年の映画祭ではサテライトプログラムとして、『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』の特別シングアロング上映が釜山で行われる。

Netflixのこの大ヒット長編アニメーションを手がけた韓国系カナダ人監督マギー・カンは、「カルト・ブランシュ(Carte Blanche)」と題した企画にも参加する予定である。

本企画は、ポン・ジュノ監督をはじめとする韓国および海外の文化的先駆者たちが特別上映と観客との対話を行うプログラムである。

『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』写真:Netflix
『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』より 写真:Netflix

レッドカーペットを飾る世界的映画人

記念すべき第30回を迎える今年は、アカデミー賞受賞監督ポン・ジュノ、俳優レオン・カーフェイ、ジュリエット・ビノシュ、そしてショーン・ベイカーら、世界的に著名な映画人がレッドカーペットを彩る予定である。

「アジア映画人賞(Asian Filmmaker of the Year Award)」には、権力による検閲に抵抗し、個人の自由とその強さを表現してきたイランのジャファル・パナヒ監督が選ばれた。代表作には『チャドルと生きる』(2000年)、『人生タクシー』(2015年)、『シンプル・アクシデント(原題:It Was Just an Accident)』(2025年)などがある。

一方で「韓国映画賞」は、韓国現代史を深く見つめる作品を発表してきたチョン・ジヨン監督・脚本家に贈られる。チョンの代表作には『ハリウッド・キッズの生涯』(1994年)、『南営洞1985 国家暴力、22日間の記録』(2012年)がある。

さらに、アジアを代表する監督・俳優・プロデューサー・脚本家として100本以上の映画に携わってきたシルヴィア・チャンに対し、本映画祭は「カメリア賞」を授与する。チャンの出演作には『あなたを、想う。』(2015年)、『妻の愛、娘の時』(2017年)などが含まれている。

グローバル・ビジネス・プラットフォームとしての進化

マーケット部門においては、今年のアジアン・コンテンツ&フィルム・マーケット(ACFM)が「グローバル・ビジネス・プラットフォーム」としての地位を再確認し、ネットワーキングの機会を強化し、新たな市場動向の紹介にも力を入れる。

新プログラム「Doc Square」

本年のマーケットは共同製作の拠点としての役割をさらに拡大し、新たに「Doc Square」を設立した。これはアジアのドキュメンタリー制作者同士の交流と協働を促進するために設けられたネットワーキングプログラムである。

本プログラムでは、アジア各国のプロデューサーが一堂に会し、それぞれの地域における制作環境や最新の動向について議論することで、アジアのドキュメンタリーの現状を映し出すことが期待されている。

AIと映画産業の融合

さらにACFMは、AIの動向にも注目している。

アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)、クラウドサービスプロバイダーのメガゾーンクラウド、中国拠点のAI映像生成プラットフォームPixVerseやKling AIといった世界的なテックリーダーを招き、産業と技術をつなぐ議論を展開する。

併設プログラム「InnoAsia」では、テクノロジーの専門家と映画業界のプロフェッショナルを結集し、創造的パートナーシップを育成することを目的とした一連のカンファレンスが、主要参加者によって開催される予定である。

アジアン・プロジェクト・マーケットとシネマ・ファンド

マーケットの主要プログラムの1つである「アジアン・プロジェクト・マーケット」では、アジアの新進監督による15か国からの30作品が紹介される予定である。

また「アジアン・シネマ・ファンド」では、脚本開発基金、ポストプロダクション基金、アジアン・ネットワーク・オブ・ドキュメンタリー基金の3つの助成プログラムが提供される。今年は850件の応募の中から14企画が選出された。

釜山ストーリーマーケット

20回目を迎えるアジアン・コンテンツ&フィルム・マーケット(ACFM)は、オリジナルIPを取り扱う主要マーケットとして「釜山ストーリーマーケット」も開催する。今年は特に台湾と日本の強力なIPラインアップに焦点を当てる。

※著作権や商標権などの「コンテンツとしての価値を持つ財産」を指す、Intellectual Property(知的財産) の略

台湾からは、洗練された物語の構築と独自のキャラクター性を融合させた6つのIPが選出された。日本からは書籍、漫画、テレビドラマを含む6つのIPが選ばれ、日本特有の物語性が強調されている。韓国IP部門では、ロマンス、ファンタジー、アニメーションといったジャンルを網羅する19のオリジナルIPが選定された。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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