李相日&クロエ・ジャオ両監督が東京国際映画祭・黒澤明賞を受賞
東京国際映画祭が選出する黒澤明賞の今年度の受賞者が、李相日監督と中国のクロエ・ジャオ監督に決まった。
同賞は、黒澤監督の業績を長く後世に伝え、新たな才能を世に送り出していきたいとの願いから、世界の映画界に貢献した映画人、映画界の未来を託していきたい映画人に贈られる。
李監督は、公開中の『国宝』が実写の日本映画として歴代2位となる興行収入115億2700万円(8月24日現在)の大ヒット。山田洋次監督ら選考委員は、「しばしば社会の矛盾や人間の罪の問題を扱った重厚なテーマを描きつつ、それを多くの観客の共感を呼ぶヒューマニズム溢れる人間ドラマとして昇華させてきました。今後の日本映画、そして世界の映画を牽引することを期待する」と授賞理由を説明した。
吉報を受け、李監督は「敬愛する山田洋次監督はじめ審査委員の皆さま、並びに東京国際映画祭に感謝申し上げます。なによりスタッフ、キャストの献身なしにこのような賞に浴すことはかないませんでした」と喜びのコメント。「私の中でも黒澤明という名は、永久に超えられない壁として君臨しています。映画をめぐる環境がいかに変わろうとも、人間の本質に迫るその力強さは色あせることなく、映画が社会や個々の人生に多大な影響を及ぼすことを示しています。その名を冠した賞を背負う意味を、この先も自らに問い続けたいと思います」と意欲を新たにした。
一方のジャオ監督は、2020年『ノマドランド』が、ヴェネチア国際映画祭の金獅子賞をはじめ、アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演女優賞の3部門を受賞。マーベル・スタジオ作品『エターナルズ』(2021)では共同脚本、監督を務めるなど世界的に高い評価を得ていることが支持された。「光栄に存じます。黒澤明の作品には、自然の最も広大なスケールと人間の心理の最も深い真実が共存しています。この系譜に連なることは、本当に謙虚な思いを抱かせられます。物語の語り手は文化、国境、過去と未来、光と闇、喜びと苦痛、愛と死を結びつける懸け橋です。私たちは経験を錬金術のように変容させ、それらに意味を与え、カタルシスを得ることを願っています」と真摯に受け止めている。
第38回東京国際映画祭は、10月27日~11月5日に開催。黒澤明賞の授賞式は11月3日に行われる予定だ。
取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴木元
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