クロエ・ジャオ監督が『ハムネット』で映画界復帰!4年間の休養期間とポール・メスカルとの運命的出会い ――「物語が私を選んでくれた」

クロエ・ジャオ監督 写真:Vivien Killilea/Getty Images
クロエ・ジャオ監督 写真:Vivien Killilea/Getty Images
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ノマドランド』(2020)でアカデミー賞を受賞したクロエ・ジャオ監督が、4年ぶりの新作『ハムネット』でついに映画界に復帰した。

マギー・オファーレルによる2020年出版のベストセラー小説『ハムネット』を原作とする本作は、ウィリアム・シェイクスピア(演:ポール・メスカル)と妻アグネス(演:ジェシー・バックリー)が11歳の息子ハムネットを亡くした後の人生を中心に描いている。この悲劇的な出来事が、シェイクスピアの傑作『ハムレット』の誕生につながっていく。

本作のプロデューサーには、クロエ・ジャオ監督の制作会社・Book of Shadowsに加え、スティーヴン・スピルバーグサム・メンデスらベテラン監督陣が集結。日本では2026年春公開予定で、10月27日(月)~11月5日(水)開催の第38回東京国際映画祭ではクロージング作品に決定している。

以下、米『ハリウッド・リポーター』のインタビューで、ジャオ監督がトロント国際映画祭でワールドプレミアを迎えた『ハムネット』の制作背景、長期間の休養を必要とした理由について明かした。

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――『ハムネット』はマーベル作品の『エターナルズ』以来、4年ぶりの長編映画となりますね。4年間の休養を決めた理由と、『ハムネット』が復帰作としてふさわしいと感じた理由について、お話いただけますか?

とても良い質問ですね。これまで誰にも聞かれたことがありませんでした。『エターナルズ』と『ノマドランド』の後、休みが必要だったんです。この2本は、とても強烈な作品でしたから。立て続けに制作して、公開に至りました。10年間休みなく働き続けた結果、疲れが溜まっていたのだと思います。そして、私自身も人間として大きく変わりました。次の作品に飛びつくのではなく、ただ気持ちを落ち着かせる時間が必要だと心から感じました。

『ハムネット』については、なぜこの物語を選んだのか、自分でもはっきりとは説明できません。物語が私を選んでくれたのだと思います。休養期間中に、私の中で感性や価値観が大きく変わりました。このプロジェクトは、私がそれを受け入れる準備ができたからこそ、私を選んでくれたのだと思います。

2021年のアカデミー賞で作品賞・監督賞を獲得したクロエ・ジャオ監督 写真:Chris Pizzello-Pool/Getty Images
2021年のアカデミー賞で作品賞・監督賞を獲得したクロエ・ジャオ監督 写真:Chris Pizzello-Pool/Getty Images

――初めて『ハムレット』の舞台を観たときのことを覚えていますか?

学校以外で、『ハムレット』の舞台を観たことはないと思います。映画は、オリジナルのモノクロ版(ローレンス・オリヴィエ主演)を観ました。それから、イーサン・ホークが出演していたものも観た気がします。

2本とも観ましたが、『ハムレット』の物語はとても暗く、難解でよく理解できませんでした。若者が短期間で経験する非常に困難な人間の苦しみについて多くを語っていて、最後には死が待っています。これらの映画を観たとき私は20代だったので、あまり理解できなかったのだと思います。マギー(・オファーレル)の小説を読むまでは、『ハムレット』の物語を深く理解することはできませんでした。小説を読んだとき、「ああ、すごい」と思いました。『ハムレット』という作品を、まったく違う視点から見ることができたのです。

映画『ハムネット』より 写真:Agata Grzybowska / © 2025 FOCUS FEATURES LLC
映画『ハムネット』より 写真:Agata Grzybowska / © 2025 FOCUS FEATURES LLC

――キャスティングのプロセスについて、そしてポールとジェシーに惹かれた理由について、お伺いしたいです。

最初は確信が持てませんでした。このプロジェクトの話を聞いたときは、まだ原作を読んでいなかったんです。ちょうどテルライド映画祭に向かう途中に、アンブリン(スティーヴン・スピルバーグ監督の制作会社)から電話がかかってきました。最初の直感は「ノー」でした。この物語を語るだけの人生経験がないと思ったからです。

そしてテルライドに着くと、誰かが「ポール・メスカルという俳優と会う機会がありますよ」と言ってくれました。当時はまだ『aftersun/アフターサン』が公開されていなかったので、彼の作品を知らなかったんです!でも、ほんの短い時間で、彼が若き日のシェイクスピアを演じるなら、もしかしたら私にもできるかもしれないと感じました。

ジェシーの作品は以前から知っていたので、ほかの多くの人があえて踏み込まないような場所に彼女は踏み込んでいると常に感じていました。そこにたどり着くには、本当に勇敢な心が必要だと思います。ですから、原作を読んだ瞬間、アグネスはジェシーだ、とすぐにわかりました。

そして、最も重要なケミストリーテスト(役者同士の相性を確かめる)を行いました。ケミストリーテストは、火花が飛び散るようなエネルギーに満ちた経験でしたね。

映画『ハムネット』より 写真:Agata Grzybowska / © 2025 FOCUS FEATURES LLC
映画『ハムネット』より 写真:Agata Grzybowska / © 2025 FOCUS FEATURES LLC

――休養を経て、『ハムネット』を世に出すことに対して、不安を感じていますか、それともワクワクしていますか?

子どもを育てるのと同じようなものだと思います。できる限りのことをして育てますが、その過程でまちがいを犯したり、もっとうまくやれたらと思うこともあるでしょう。そして、いざ世に送り出すと、思いもよらない反応が返ってきます。それは、自分ではコントロールできません。子どもたちの不完全さを愛することを学ばなければなりません。なぜなら、それは自分自身の不完全さを愛することだからです。

『ハムネット』を始めるにあたって、私は関係者全員に、作品づくりを恐れることなく、子どもを育てるような経験にしたいと常に伝えてきました。そうすれば、子どもが世に出る準備ができたとき、後悔することはないでしょう。今回は、1つひとつの過程で、これは私ができる最善のことだと自分に言い聞かせるようにしました。「愛しているよ。さあ、行ってらっしゃい」とね。

――現在取り組んでいるプロジェクトはありますか?

そうですね。今『バフィー ~恋する十字架~』のリブート版に取り組んでいることは、もはや秘密ではないと思います。順調ですよ。

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映画『ハムネット』は、2026年春に公開。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌

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