第30回釜山国際映画祭が閉幕──スー・チー初監督作品が監督賞を受賞

スー・チー 写真:Getty
スー・チー 写真:Getty
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第30回を迎えた釜山国際映画祭は現地時間2025年9月26日(金)夜に、光り輝くミニマルなデザインの釜山シネマセンターにて閉幕式を行い、新設されたメインコンペティション「釜山アワード」の受賞作を発表した。同時に、映画祭を象徴する「ニューカレンツ賞」「BIFFメセナ賞」「ソンジェ賞」などの各賞も併せて授与された。

釜山シネマセンター 写真:World Architecture Festival/Sipa USA/NEWSCOM
釜山シネマセンター 写真:World Architecture Festival/Sipa USA/NEWSCOM

釜山アワード:最優秀作品賞は『Gloaming in Luomu』

今回初めて設けられた公式コンペティション「釜山アワード」では、中国出身で朝鮮族のベテラン監督、チャン・リュルの『Gloaming in Luomu』が最優秀作品賞に輝いた。国境地帯の小さな町を舞台に、歴史の影に苛まれる人々の暮らしを描いた本作は、チャン監督ならではの叙情性と鋭い社会批評を融合させたドラマである。

監督賞・特別審査員賞

初監督に挑んだ台湾トップスターのスー・チーが、青春映画『ガール(原題)』で監督賞を受賞した。本作は1980年代の台北を舞台に、虐待のある家庭からの逃避を夢見る少女の姿を描くもので、スー・チー自身の青春時代に深く着想を得ており、完成までに10年以上を費やした作品である。

スー・チーが監督を務めた青春映画『ガール(原題:Girl)』写真:Mandarin Vision
スー・チーが監督を務めた青春映画『ガール(原題:Girl)』写真:Mandarin Vision

韓国のハン・チャンロク監督による『ファンキー・フリーキー・フリークス(原題)』は、ソウルの片隅で生きるアウトサイダーたちをブラックユーモアたっぷりに描いた群像劇で、特別審査員賞を受賞した。

俳優部門・芸術貢献賞

演技部門の栄誉は分け合う形となった。韓国の新星イ・ジウォンが『En Route To』での鮮烈な演技により最優秀俳優賞を受賞した一方、日本からは北村匠海綾野剛林裕太が『愚か者の身分』でのアンサンブル演技によって共同受賞を果たした。芸術貢献賞には、中国の美術監督トゥ・ナンとリウ・チュアンが、ビー・ガン監督のアートハウス作品『レザレクション(原題)』での美術的手腕によって選ばれた。

映画『愚か者の身分』
映画『愚か者の身分』 ©2025 映画「愚か者の身分」製作委員会

ニューカレンツ賞

さらに、アジアの新鋭監督たちの登竜門として知られる「ニューカレンツ賞」は、韓国のユ・ジェイン監督による『En Route To』に贈られ、本作のブレイクを決定づける結果となった。

ドキュメンタリー部門:BIFFメセナ賞

ドキュメンタリー部門では、優れたアジアの長編ノンフィクション作品に贈られる「BIFFメセナ賞」を、韓国のジュ・ロミとキム・テイルによる『レイニング・ダスト(原題)』、そしてクルド系イラン人監督ヘメン・ハレディの『シンギング・ウィングス(原題)』が受賞した。特別審査員賞は韓国のコ・ヒョジュ監督による『リレー・レース(原題)』に与えられた。

短編部門:ソンジェ賞

アジアの短編映画を対象とする「ソンジェ賞」には、キム・サンユン監督の『It Sounds Louder on Rainy Days』(韓国)と、ワン・ハンシュアン監督の『ディレイ(原題)』(中国)が選ばれた。特別審査員賞には川添彩監督の『幽明の虫(英題:INTERFACE)』(日本)が選出された。

メインコンペ審査員団

今年のメインコンペティション審査員団は、『哭声/コクソン』(2016年)で知られる韓国の名匠ナ・ホンジンが審査委員長を務め、香港の名優トニー・レオン・カーファイ、インドの映画監督・俳優ナンディタ・ダス、イランのマルズィエ・メシュキニ監督、韓国系アメリカ人映画作家・コゴナダ、インドネシアのプロデューサー、ユリア・エヴィナ・バラ、そして韓国の俳優ハン・ヒョジュらが名を連ねた。

開催概要

記念すべき第30回釜山国際映画祭は、現地時間9月17日から26日まで開催された。世界各国から200本を超える作品を上映し、国際的な映画人や観客を惹きつけ、東アジア最大級の映画祭の一大拠点としてその存在感を改めて示した。

受賞結果一覧

〈釜山アワード〉

  • 最優秀作品賞
    『Gloaming in Luomu』監督:チャン・リュル(中国)
  • 監督賞
    『ガール(原題)』監督:スー・チー(台湾)
  • 特別審査員賞
    『ファンキー・フリーキー・フリークス(原題)』監督:ハン・チャンロク(韓国)
  • 最優秀俳優賞
    イ・ジウォン『En Route To』(韓国)
    北村匠海、綾野剛、林裕太『愚か者の身分』(日本)
  • 芸術貢献賞
    『レザレクション(原題)』美術監督:リウ・チュアン、トゥ・ナン(中国)

その他の主要受賞結果

〈ニューカレンツ賞〉
『En Route To』監督:ユ・ジェイン(韓国)

〈BIFFメセナ賞〉

  • 韓国部門『レイニング・ダスト(原題)』監督:ジュ・ロミ、キム・テイル(韓国)
  • アジア部門『シンギング・ウィングス(原題)』監督:ヘメン・ハレディ(イラン/クルディスタン)
  • 特別審査員賞『リレー・レース(原題)』監督:コ・ヒョジュ(韓国)

〈ソンジェ賞〉

  • 韓国部門『It Sounds Louder on Rainy Days』監督:キム・サンユン(韓国)
  • アジア部門『ディレイ(原題)』監督:ワン・ハンシュアン(中国)
  • 特別審査員賞『幽明の虫(英題:INTERFACE)』監督:川添彩(日本)

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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