トランプ大統領、海外映画への「100%関税」を再び示唆

ドナルド・トランプ大統領が映画産業への関税導入を再び示唆
ドナルド・トランプ大統領(9月26日撮影)写真:Alex Wong/Getty Images
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外国映画への関税案が再燃?

アメリカでは予算案をめぐる議会のこう着状態によって連邦政府の閉鎖が現実味を帯びている。そんな混乱の中、ドナルド・トランプ大統領は再び映画産業への関税導入を示唆した。。

月曜日(現地時間)、トランプ大統領は自身のSNS上でカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事を批判する投稿をした。その中で大統領は「私たちの映画産業が他の国に盗まれている」とした上で、「あらゆる国外で作られた映画に100%の関税をかける」と綴った。

今年5月にも大統領が米国外で「作られた」映画に関税をかけると述べたことは記憶に新しい。問題は、「国外で制作された」という表現の曖昧さにある。映画制作の現場でもグローバル化が進む現在、この表現では解釈次第によってほとんどあらゆる映画に関税が課される事態にもなりかねない。事実、ニューサム知事側も大統領のアイデアは「100%愚かだ」と一蹴している。

トランプ大統領と映画産業:ハリウッドが直面する危機

そもそも、なぜ海外映画に対して関税がかけられるという話になったのだろうか。発端は今年5月5日にジョン・ヴォイトを始めとする有識者が大統領に提出した提案書だ。そこには国内映画産業に対する税制上の優遇や補助金などの救済措置が盛り込まれていた。実際、提案書の中で関税については「特定の限定的な状況における関税の使用も含まれる」と触れられているだけに過ぎない。

こうした背景を踏まえると実際のところ、ハリウッドにとって大きな目玉だったのは「税制上の優遇や補助金」なのだ。というのも、カリフォルニア州は米国内の他の州(ニューヨーク州やジョージア州、ニューメキシコ州など)やカナダ、オーストラリアと比較した時、制作会社などの誘致において遅れをとっている。その最大の原因とされているのが税負担の大きさだ。最近になってニューサム知事が税額控除の上限を3億3千万ドルから倍近い7億5千万ドルへ引き上げた背景にもこうした問題が指摘されている。

遅れをとる米国映画産業:今後の動向は?

映画業界の動向を調査する「ProdPro」の調査によると、アメリカでは2025年上半期に72億ドルを費やして216に及ぶ制作費総額1000万ドル以上の作品が制作された。実にこの数字は前年の上半期に比較すると27%もの減少なのだという。(もっとも、オーストラリアを除く各国でも減少傾向だというが)

その意味で、「ハリウッドを救おう」という意識は政治的立場を超えて共有されている。例えば、ロサンゼルスのカレン・バス市長(民主党)は「ステイ・イン・LA」キャンペーンを打ち出すなど、映画制作を地元に誘致する施策を打ち出している。さらに、ローラ・フリードマン下院議員(民主党)も大統領の映画産業に対する保護政策には理解を示している。ちなみに彼女のお膝元は撮影所などの集まるロサンゼルス郡バーバンクである。彼女も映画産業の窮状には強い危機感を抱いているのだろう。

しかしながら、具体的な方針は決まっていないのが現状だ。その上、予算案をめぐって共和党と民主党の対立が激化している議会の状況を考慮すると、具体的な措置を巡って合意が生まれる日が来るのはまだまだ先だろう。不毛な海外映画への100%関税よりも、実効性のある政策のため両党の歩み寄りが望まれる。

※本記事は要約・抄訳です。オリジナル記事(英語)はこちら

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