Netflixで大ヒット!『イクサガミ』岡田准一が語る、“新感覚サバイバル時代劇”の制作秘話…シーズン2の可能性も?――「時代劇の伝統に敬意を払いながら、現代的に進化」
「『SHOGUN 将軍』と『イカゲーム』が出会った作品です」―― そう語るのは、Netflixで独占配信中の新作シリーズ『イクサガミ』の主演俳優・岡田准一だ。『イクサガミ』は現在、独創的な設定、豪華な衣装やセット、激しいアクションがSNSを中心に大きな注目を集めている。原作は今村翔吾による同名小説で、漫画にもなった人気作品である。批評家からの評価も高く、Netflixにおけるアジア発の新たなヒット作品として話題沸騰中だ。
物語の舞台は1878年の日本、封建制崩壊後の侍が社会から疎まれていた時代。近代化が進む社会では帯刀が禁じられ、かつての武士たちは行き場を失っていた。そんな中、292名の侍が破格の賞金を懸けた謎のデスゲーム「蠱毒」へと誘われる。彼らには、互いに戦いながら東京を目指すという過酷な条件が課される。岡田は、病気の妻子を救うため死闘に身を投じる侍・嵯峨愁二郎を演じ、作品の中心に立つ。
『イクサガミ』は時代劇の魅力に、人気のサバイバル要素や苛烈なアクションを融合させた作品だ。配信開始直後から、米批評サイト・Rotten Tomatoes(ロッテントマト)では批評家スコア100%、視聴者スコア96%という高評価を獲得している。さらに、世界的ゲームクリエイターの小島秀夫がSNSで本作を絶賛したことでも大きな注目を集めた。
I binged “Ikusagami (Last Samurai Standing)” up through episode 6! It was so good. I love the Yamada Futaro × Squid Game kind of worldbuilding. The cutbacks between the Kodoku-game side, the organizers, and the government side all move with great pacing. And they don’t hesitate… pic.twitter.com/DmVfCkVvQ4
— HIDEO_KOJIMA (@HIDEO_KOJIMA_EN) November 15, 2025
Netflixでの配信開始を前に、米『ハリウッド・リポーター』は岡田准一にインタビューを敢行。主演・プロデューサー・アクションプランナーという複数の役割をどうこなしたのか、シーズン2への期待などについて話を聞いた。
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――さっそくですが、このプロジェクトに参加した経緯から教えてください。
僕はこれまで時代劇の仕事をしてきて、日本で壮大な作品に携わる機会に恵まれてきました。そんな中、Netflixから『イクサガミ』のお話をいただいたんです。オファーを受けた際には、主演として出演すること、さらにアクションプランナーとして参加することについても話がありました。もしそれらすべてに関わるのであれば、ぜひプロデューサーとしても作品に参加したいと思いました。
――『イクサガミ』では3つの異なる役割を担いましたが、それぞれの挑戦はどんなものでしたか?
3つの役割を持つということは、3つの脳を同時に使うようなもので、その意味ではとても大変でした。プロデューサーは、お金のことや制作の全体像を考える立場で、人に仕事を依頼したり、時には何かを止めたりする役割でもあります。
アクションプランナーは、自分がやりたい動きや挑戦したいことを提案する仕事です。そして俳優は、役になりきること、自分がその人物だと信じることに集中する立場で、通常は周囲の事情を気にしなくていいものです。しかし今回は3つの役割を担っていたため、周囲の状況を知りすぎてしまい、俳優としては間違いなく難しい環境でした。

――アクションプランナーとしてのお仕事についてですが、作中にはさまざまな戦闘スタイルが登場します。武術から剣術、殴り合いまで同じシーン内で戦い方が変化する場面もありましたが、その振り付けを作るのは難しかったですか?
俳優としてもアクションプランナーとしても、動きの構造や振り付けをしっかり作り込むことはとても重要です。そして、その要素はキャラクター像を作るうえでも大きな意味を持ちます。僕はキャラクターのコンセプトを考え、それをアクションを通して表現することを大切にしています。たとえば、彩八(演:清原果耶)というキャラクターがいますが、彼女は力の強さでは男性に劣るかもしれません。彼女の戦いには、陰と陽、見えるものと見えないものといった要素を取り入れています。たとえば、相手に“餌”となる動きを見せておきながら、実際には全く別の意図した動きに繋がる、といった工夫です。そうした構築には細心の注意を払い、丁寧に準備しました。
また彩八が体格の大きい男性と戦う場合、正面から互角に戦うのは現実的ではありません。そこで、彼女ならどうすれば勝機を見いだせるのか、どのような戦い方なら説得力があるのかを考え抜く必要がありました。戦闘の一貫性やコンセプトの整合性を大切にしながら、最善の組み合わせを追求したんです。

――作品に登場する戦闘スタイルは、何種類くらいあったのでしょうか?
そうですね、本当に膨大な数があります。これほど多くの戦闘スタイルが生まれた理由は、まずキャラクターごとに戦闘スタイルがあり、さらにコンセプトやアイデアも異なり、戦いやシークエンスごとにも別のスタイルが存在するためです。すべてを積み上げると、相当な量になります。ひとつの戦いのなかに3~4種類のコンセプトが混在することもあり、カットによってはさらに多くの要素が動いています。そういった意味で、本当に数え切れないほどのスタイルがあります。あるエピソードでは、僕自身が100ほどコンセプトを考えましたが、その多くは採用されていません。
――では、具体的な2つの戦闘シーンについてお聞きします。第2話「覚醒」では、あなたのキャラクターが黒服の隊士たちを次々に斬っていく場面があります。どのように撮影されたのでしょうか? また、第4話「黒幕」の居酒屋でのワンショットのシーンについても教えてください。
まずワンショットの戦闘シーンについてですが、時代劇を作るにあたって、僕たちは伝統的なジャンルへの敬意を大切にしつつ、それを現代的に進化させたいと考えていました。黒澤明監督の作品には長回しの名シーンが多くありますが、あの映像では“場所そのものが戦っている”ような臨場感があります。僕たちも、その魅力を自分たちなりの形で受け継ぎたいと思ったんです。
それに、僕自身は普段から武術の稽古をしているので、スタントダブルを使わずに自分でアクションをこなせます。顔を隠す必要もなく、その場の空気の中で本当に戦っているように演じられるんです。愁二郎が“野獣”のようになるシーンは、僕たちの間では“覚醒”と呼んでいます。あのワンショットでは、銃を持った相手と対峙するときのリアルさも大事にしました。距離を取れないので、必然的に至近距離の戦いになりますし、多勢に囲まれた状況でどう戦術を組み立てるかも見せています。あの一連の映像には、これまで話してきたこだわりをすべて詰め込みました。
一方で、居酒屋のシーンはまったく違う難しさがありました。登場人物が多く、それぞれの見せ場や技をどう配置するかを考えなければならなかったからです。僕たちはこの場面を“ヒーローを順番に紹介していく”シーンとして捉えていて、『アベンジャーズ』のように一人ずつ登場させる構成を意識して作りました。

――セットの数、衣装の種類、エキストラの人数など、非常に大規模な作品に感じられました。実際、このプロジェクトにはどれくらいの人が関わっていたのでしょうか? また、歴史的な正確さについては、徹底的に事実に忠実にしようとしたのか、それとも時代の“雰囲気”を大事にしたのでしょうか?
制作の規模についてですが、出演者とエキストラを含めると、本当に膨大な人数が関わっていました。時間があまりなかったため、AユニットとBユニットの2班体制で撮影しており、通常の倍の規模で、総勢2,000〜3,000人ほどになりました。衣装に関しては、日本中の仕立て職人に声をかけ、複数の工房に制作を依頼しました。それほど大がかりな体制で進めていたんです。
歴史の再現性についてですが、僕たちは日本文化を称え、それをエンターテインメントとして高めたいと思っていました。ただし、あくまでフィクションです。しかし一方で、ファンタジーとして描くことは避けたいと考えていました。暴力描写は、当時の時代がどれほど恐ろしく、凄惨だったかを示すためのもので、原作にある“必殺技”のような要素はあえて採り入れていません。現実に根ざした作品にしたかったからです。その一方で、会話の言い回しやニュアンスなどは、現代的に調整している部分もありますので、完全に史実どおりというわけではありません。
――原作から大きく変えた点はあるのでしょうか? 暴力描写についての違いは先ほど言及されていましたが、他にも大きな変更はありますか?
原作はまず小説で、そのあと漫画化されています。原作には特殊能力を持つキャラクターが登場しますが、ドラマのシーズン1では、そうした超人的な力は採用しませんでした。ただ、『イクサガミ』が人気となり、シーズン2へ続くことになれば、そうした要素を取り入れる可能性もあります。ですがシーズン1では、“ファンタジー要素を極力避けて、現実に寄せる”ことに重点を置きました。
今後どうなるかはこれからですが、現時点ではサバイバルゲームの要素に強く注目しています。『イクサガミ』には“神”とのつながりがあり、シーズン1でも神楽という儀式を登場させています。こうした“超越的な力”の気配は作品に存在しているので、将来的に神の力のようなものを取り入れる余地はあると思います。

――『イクサガミ』には『バトル・ロワイアル』や『SHOGUN 将軍』、『今際の国のアリス』など、日本発の人気作品に通じる要素もありますが、そういった作品から影響を受けたのでしょうか?
海外の方々に本作を一番わかりやすく紹介するには、“『イカゲーム』と『SHOGUN 将軍』が合わさったような作品”と言うのが手っ取り早いと思います。ただ、僕たちはそこにさらに歴史的な要素を加えていますし、時代劇である以上、当時の人々の暮らしや生活のリアリティを強く意識して描いています。花火、北斎、神楽、信仰など、日本文化を象徴するイメージを物語に積極的に取り込みました。キャラクターの深掘りや日本文化の魅力をしっかり伝えたかったからです。そしてこの日本の時代劇というジャンルを世界に届けるために、現代的にアップデートすることを目指しました。
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『イクサガミ』は現在、Netflixにて独占配信中。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌

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