ポール・トーマス・アンダーソン監督が語る『ワン・バトル・アフター・アナザー』撮影中断の舞台裏

映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』監督のポール・トーマス・アンダーソンと主演のレオナルド・ディカプリオ
映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』監督のポール・トーマス・アンダーソンと主演のレオナルド・ディカプリオ 写真:Courtesy of Getty
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11月19日(現地時間)、ロンドンで開催されたBFIサウスバンク映画祭の限定トークイベントに、『ワン・バトル・アフター・アナザー』のキャスト、ポール・トーマス・アンダーソン監督が登場、2億ドル(約314億円)の興行収入を記録している本作の熱狂的な反応や、撮影秘話を明かし、会場のファンを熱狂させた。

映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』キャラクタービジュアル © 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』キャラクタービジュアル © 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

観客の熱狂的な反応

「人々の反応は、信じられないほど素晴らしいものだった」と、『タイタニック』や『ウルフ・オブ・ウォールストリート』で知られるレオナルド・ディカプリオは語った。

「友人や家族だけでなく、私のところに来てこの映画の重要性を話してくれた人々もいた。この映画を制作し、人々がどのように受け止めているかを見ることは、本当に特別な瞬間だった」と笑顔を見せた。

そして、今イベントで最も盛り上がったのは、これまでも『ブギーナイツ』や『ファントム・スレッド』といった人気作品を手がけてきたポール・トーマス・アンダーソン監督が、ベニチオ・デル・トロを待つために撮影が中断されたことを明かした瞬間だった。

「ベニチオがウェス・アンダーソンの『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』の撮影に行かなければならなかったため、撮影を中断した。普通ならベニチオを失ったと嘆くだろうが、彼なしでは作品は完成できないため、撮影は2か月半中断し、その後再開した。幸いスタッフ全員が『もちろん、ベニチオを待ちましょう』と言ってくれたおかげだ。ベニチオを待たずに進めるなんて、到底考えられない」と語り会場を沸かせた。

また、この映画を制作するタイミングについて、アンダーソン監督は以下のように答えた。

「まず第一に、チェイス・インフィニティと出会ったこと。そしてレオ(ディカプリオ)がこの役柄にふさわしい年齢になったこと。私がこの物語を適切に語れる年齢になったこと。父親になり、子供たちを持つようになったこと…何よりも、この物語を語る自信がついたことだと思う」

『ワン・バトル・アフター・アナザー』写真:Courtesy of Warner Bros.
『ワン・バトル・アフター・アナザー』写真:Courtesy of Warner Bros.

ショーン・ペン演じるロックジョー

レオナルド・ディカプリオとアンダーソン監督は、テアナ・テイラーを含むこの映画の女性主演陣について熱く語り、さらにショーン・ペンが演じた敵役、ロックジョーについても言及した。

ディカプリオは「ロックジョーがどんな人物になるかについて、私たちは多くの議論を重ねた」と語る。

さらには「ポールがショーンをその役に決定し、映像で見たときに驚いたことがあった。他の役者の演技はあまり見ていなかったのだが、ショーンが演じたロックジョーは、純粋に威圧的な人物として演じられるであろう役柄に、ある種の人間的な脆さを感じさせていた」と絶賛した。

ショーン・ペン、『ワン・バトル・アフター・アナザー』より 写真:Courtesy of Warner Bros. Pictures
ショーン・ペン、『ワン・バトル・アフター・アナザー』より 写真:Courtesy of Warner Bros. Pictures

またディカプリオは、ショーンによるロックジョーの解釈について次のように続けた。

「信じられないほど哀れで、時には同情さえ感じさせる人物だと思わせてくれた。特に彼が椅子に座り、自分の机を見つめている場面。長い旅路の末にたどり着いたその場所には、ごく普通のイケアの机が置かれていた。窓の外には…ダラスだろうか?その瞬間に、彼は座りながら『私はついにここにたどり着いた』と、まるで理想郷に着いたかのように言う。その姿は、本当に哀れさが滲み出ていた」。

これにはアンダーソン監督も同意し、「ショーンが素晴らしいのは、時折、スタッフの中に『認めたくはないが、私はロックジョーの味方だ!』と公言するような、おかしなサブグループを作ったことだ」と語った。

レオナルド・ディカプリオ、ベニチオ・デル・トロ『ワン・バトル・アフター・アナザー』より
レオナルド・ディカプリオ、ベニチオ・デル・トロ、『ワン・バトル・アフター・アナザー』より 写真:COURTESY WARNER BROS. PICTURES

象徴的なカーチェイスシーンの裏側

そしてアンダーソン監督とディカプリオは、司会者から、象徴的な砂漠の道路でのスリリングなカーチェイスのシーンについて質問を受けた。

「あの道路を見たとき、圧倒されたことを覚えている。まるでジェットコースターに乗っているような気分だった。レジーナ・キングが『3台の車が直線で追いかけっこをするカーチェイスで、こんなに緊張したことは今までなかった』と言ったのが、よく理解できる」とディカプリオは笑いながら語った。

一方のアンダーソン監督は、撮影には困難な場所だったと認めつつ、この道路が「ただ本で探すのではなく、実際に車に乗って走り回り、ロケハンをする」ことの重要性を示す証拠だと語った。

「ああいう場所は、たいてい誰かに先に撮影されてしまっているものだ。運が良ければ、丘陵地帯の川のような場所に偶然出会えるかもしれない。残念ながら、私の想像力はそういった素晴らしい場所を思いつくほど優れてはいないのだが」。

「おそらく私だったら、皆をただ平坦な道路に並べて、『さあ、カーチェイスを始めよう』と考えてしまうだけだろう。想像力に限界を感じたら、実際に現場に出て確認することが重要」と、監督として実際に感じることの重要性を示唆した。

『ワン・バトル・アフター・アナザー』は、すでに賞レースで話題を呼んでおり、ポール・トーマス・アンダーソン監督とレオナルド・ディカプリオは、米『ハリウッド・リポーター』のアカデミー賞予想でも最有力候補に挙げられている。

『ワン・バトル・アフター・アナザー』に出演するベニチオ・デル・トロ、チェイス・インフィニティ、レオナルド・ディカプリオ、テヤナ・テイラー、ショーン・ペン 写真:Joe Maher/Getty Images
『ワン・バトル・アフター・アナザー』に出演するベニチオ・デル・トロ、チェイス・インフィニティ、レオナルド・ディカプリオ、テヤナ・テイラー、ショーン・ペン 写真:Joe Maher/Getty Images

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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