山田洋次監督、91作目『TOKYOタクシー』公開も「判決を待つ被告のような気持ち」
山田洋次監督の最新作『TOKYOタクシー』が21日、全国372館で封切られた。山田監督は出演の倍賞千恵子、木村拓哉、蒼井優、迫田孝也、優香、中島瑠菜、神野三鈴とともに東京・丸の内ピカデリーで初日舞台挨拶に登壇した。
2022年のフランス映画『パリタクシー』を原案に、山田監督と朝原雄三氏が舞台を東京に置き換えて脚色。個人タクシーの運転手と高齢の女性客の1日の交流を通して、その先に起こる奇跡を描く。

山田監督にとっては91作目。だが、「1本目から同じだが、一生懸命作ってはいるけれど、喜劇であれば笑わせられるのか、どんな映画ができたかは作り手には分からないし、それを考えて演出するべきではない。観客に言われて初めて評価が下されるであって、だから初日は判決を待ち受ける被告のような気持ち」と持論を展開。その上で、「今回は大勢の俳優、スタッフが僕に気を使ってくれて、その思いのたけの結晶だと思っている」と控えめに語った。
主演の倍賞は178本目の映画出演となるが、そのうち70本が山田監督作品。初出演は1963年『下町の太陽』で、「山田監督はその時『二階の他人』を撮っていらして、スタジオにご挨拶に行ったら、かぶっていたハンチングが落ちそうになるくらいお辞儀をされた。それが初めての出会いで、今の私を形作っている」と懐かしそうに話した。

だが、山田監督は「セットで会ったのは覚えていないなあ」と苦笑い。その上で、「倍賞さんは既に松竹の輝けるスターで、若い監督は皆あこがれていた。僕にとってもあこがれの人でした」と相思相愛ぶりを明かした。
2002年『たそがれ清兵衛』以来の山田監督作品となった木村は、「監督が撮り終わって、全員に『携わってくれた人の思いが作品の艶(つや)になっている。艶に恵まれたことに感謝している』とおっしゃられて、凄くいい場所に参加できたという思いにあふれた」と感慨深げ。観客に向けては、「迎えてくださる表情が温かくて忘れられない。こういう思いをしたからこそ、違う現場に向かっていける」と感謝した。

「山田組が大好き」という蒼井は、かつて山田作品のオーディションに落ちたことがあり、「芝居の世界に向いていないと1年弱お休みして、やっぱり芝居が好きかもと思い始めた頃に、山田監督から『おとうと』(2010)のオファーをいただき感謝してます」と最敬礼。さらに、「あと46道府県できると思っているので、木村さんのいろいろな運転手を見たい」と長期シリーズ化を熱望。木村も「なら、やろうか」とまんざらでもない表情で応じていた。
取材/記事:The Hollywood Reporter Japan 特派員 鈴木元
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