ジェシカ・アルバが明かすプロデュース業の舞台裏──女性クリエイターとラテン系の未来を切り開く挑戦とは
物語への情熱を語ったレッド・シー国際映画祭トーク
ジェシカ・アルバが俳優、起業家、母、そして近年は精力的なプロデューサーとして活躍し続ける日々について語った。サウジアラビアで開催されたレッド・シー国際映画祭(RSIFF)でのトークイベントでは、彼女のキャリアの裏側が明かされることとなった。
自身の制作会社で切り拓く新たなステージ
レッド・シー国際映画祭(RSIFF)への二度目の参加となった今回は、「In Conversations With」シリーズに登壇し、旧作・新作を含む『ファンタスティック・フォー』への思いから、近年のプロデュース業に至るまで幅広い話題が取り上げられた。とりわけ焦点となったのは、設立からわずか2年ながら存在感を放つ自身の制作会社、Lady Metalmark Entertainment(レディ・メタルマーク・エンターテインメント)での活動である。

なぜ制作の道に踏み出したのかと問われたアルバは、12年間かけて成長させたパーソナルケアブランド「The Honest Company」を新CEOに託したことで、再びエンターテインメントの世界へ戻る余裕が生まれたと説明した。「自分の本来の情熱である“ストーリーテリング”に注力したかった。人の心と視野を開く力を持つメディアほど強いものはないと思うのだ」と語り、その眼差しには新たな創作への意欲が宿っていた。
多様性の欠如から見えた“ホワイトスペース”
制作会社を立ち上げる必要性を感じた理由をさらに問われたアルバは、自身が育った頃には「多様性のある物語がほとんど存在しなかった」と振り返る。ただし、その状況をだれかの責任として断じる考えはないと強調する。「多様性が欠けていたのはハリウッドのせいだとは思わない。トップには多くの白人男性がいて、彼らは自分たちの視点で物語を語ると最も心地よいと感じる。それは単に彼らが慣れ親しんだやり方なのだ」と語った。
アルバは、企業社会、エンターテインメント、政治のいずれにおいても、指導的立場に立つ女性は依然として少ないと指摘し、そこにこそ「ホワイトスペース」、すなわち未開拓の可能性があると見ているという。「女性は人口の約50%を占め、家庭の収入の約70%に大きな影響力を持っている。だからこそ、私たちに向けたエンターテインメントがもっと必要だと思う」と語り、さらに「いつもだれかに助けられる存在として描かれる女性ばかり、という作品はもう少し減ってほしい」と付け加えた。
女性クリエイターが牽引する現場づくり
アルバは、自身の言葉を裏打ちするように、制作会社を通じて実際の変革を進めている。彼女が主演・製作を務めた2024年のNetflixアクション作『トリガー・ウォーニング』では、主要部署の責任者やクリエイティブチームの多くを女性が占めていたという。監督のモーリー・スリヤ、撮影監督のゾーイ・ホワイトをはじめ、キャスティング、プロダクションデザイン、美術、セット装飾、衣装、メイクといった部門でも女性が中心となって制作を支えたのだ。

ラテン系コミュニティのイメージを書き換える
また、アルバはエンターテインメントにおける女性像だけでなく、ラテン系コミュニティの描かれ方も変えていきたいと語る。ラテン系の物語は「偏った視点から定義されている」と指摘し、多くの偏見やステレオタイプが存在する現状を憂える。

「ハリウッドは麻薬組織、ドラッグ、家事労働者といった題材が大好きだ。でも私たちはそれだけではない。しかし、彼らがそういう物語だけを見たい、そういう物語しか見ていないとなれば、視野を広げるのは難しい。だからこそ私のように、プロデューサーとしての立場を生かし、私に似た人々、そして今日ここにいる観客のみなさんのような人々を支えることで、本当に真実味のある人間ドラマを届けていく必要があるのだ」と力を込めた。
ロバート・ロドリゲスと挑む“ラテン系オールスター”アクション
さらにアルバは、詳細こそ明かさなかったものの新作に関するニュースも披露した。彼女は『シン・シティ』(2005年)、『シン・シティ 復讐の女神』(2014年)でタッグを組んだロバート・ロドリゲス監督と再び新プロジェクトに取り組んでいるという。

それは「とても楽しいアクション映画」であり、「家族ドラマとコメディが融合した強盗劇」で、キャストは全員ラテン系だと語った。
企画を最初にロドリゲスに持ち込んだのは、実はアルバ自身と俳優マイケル・ペーニャであり、現在はスタジオへの売り込み段階に入っているという。
サウジの名匠ハイファ・アル=マンスールとの“優しい物語”
またアルバは、サウジアラビアでもっとも著名な女性映画監督ハイファ・アル=マンスールと、数年来にわたり共同で企画を進めている作品の存在も明かした。『少女は自転車にのって』(2012年)や『メアリーの総て』(2017年)で知られるアル=マンスールと取り組むその企画について、アルバは「いま一緒に温めているのは、とても繊細で美しい物語。年老いた親と娘の関係を描いた優しい物語よ」と語った。

これまでのキャリアを振り返る
話題はやがて、アルバの過去作品へと移り、キャリアの要所が振り返られた。ジェームズ・キャメロン製作のTVシリーズ『ダークエンジェル』(2000~2002年)へのキャスティング秘話に観客はおおいに沸き、ダンス映画『ダンス・レボリューション』(2003年)への懐かしい思い出も語られた。

そして『ファンタスティック・フォー』シリーズについて問われると、スー・ストーム役を演じた経験自体は楽しめたとしながらも、1作目の橋の上での“裸に見える”シーンだけは「最悪だった」と本音を漏らす。撮影を心から恐れ、「屈辱的ですらあった」と語ったアルバは、「私はかなり保守的な家庭で育ち、自分自身も控えめな性格だ。あのシーンは何週間も前から憂鬱だった。あの頃のことを思い出すと、いまでも首をすくめてしまう」と振り返った。
母としての顔と変わらぬマーベル愛
さらに、近作『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』(2025年)を観たかどうか尋ねられると、まだ機会がないものの近いうちに観る予定だと答えた。

「私はたいてい、そういう映画は子どもたちと一緒に観るのよ。でも『ソニック』が公開されたら、息子はそれを85回連続で観たがるの。家族向け映画となると、何を観るかは完全に子どもたち次第。でも今回ばかりは説得しないといけない。だって観ないといけないのだから!私はマーベルが大好きだし、すごく楽しい作品ばかりだから」と笑顔で語った。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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