ギレルモ・デル・トロ『フランケンシュタイン』を支えた特殊メイク担当が語る撮影秘話「怪物役のエロルディは完璧なプロだった」

『フランケンシュタイン』の特殊メイクでプロテーゼを施されるジェイコブ・エロルディ 写真:Courtesy of Netflix
『フランケンシュタイン』の特殊メイクでプロテーゼを施されるジェイコブ・エロルディ 写真:Courtesy of Netflix
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Netflixで配信中のギレルモ・デル・トロ監督作品『フランケンシュタイン』では、監督の長年のパートナーであるコンセプト・アーティスト兼特殊メイクデザイナー、マイク・ヒル氏が特殊メイクを担当した。ヒル氏は米『ハリウッド・リポーター』のインタビューに応じ、本作で怪物を演じたジェイコブ・エロルディへの特殊メイクについて語った。

『フランケンシュタイン』の特殊メイクを担当したマイク・ヒル 写真:Ken Woroner/Netflix
『フランケンシュタイン』の特殊メイクを担当したマイク・ヒル 写真:Ken Woroner/Netflix

デル・トロ作品を支える特殊メイクの名匠

ヒル氏は、数々のデル・トロ監督作品で重要な役割を果たしてきた。クリーチャーデザインを担当した『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017年)は、第90回アカデミー賞で作品賞と監督賞を受賞し、第71回英国アカデミー賞(BAFTA)の視覚効果賞にノミネートされた。Netflixホラーアンソロジーシリーズ『ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋』(2022年)では、各話で多彩な技術を発揮している。

デル・トロ監督の長年の悲願だった『フランケンシュタイン』でも、ヒル氏による特殊メイクは必要不可欠だった。ヒル氏によれば、デル・トロ監督から「マイクが引き受けなければ『フランケンシュタイン』は撮らない。この映画を作るかどうかは君次第だ」と言われたという。

『フランケンシュタイン』の怪物の体を制作中のマイク・ヒルとチーム 写真:Ken Woroner/Netflix
『フランケンシュタイン』の怪物の体を制作中のマイク・ヒルとチーム 写真:Ken Woroner/Netflix

デル・トロ監督版『フランケンシュタイン』は、19世紀の舞台設定や、ヴィクター・フランケンシュタイン博士(演:オスカー・アイザック)が生み出す怪物のイメージなど、メアリー・シェリーの原作小説を忠実に表現している。

ヒル氏は「従来の多くの『フランケンシュタイン』に登場する怪物は、まるで事故に遭った人の体を修復したように見えました。本作ではそのような仕上がりを避けたかったのです」と語った。「本作では、機械的に縫い合わされたような、幾何学的な見た目の怪物にしたいと考えました。そうすることで、観客は『誰かがこの男を“組み立てた”のだ』と気づくでしょう」

ヒル氏は、19世紀の史実を取り入れながら怪物をデザインした。怪物の誕生シーンでは「1800年代の解剖学の教科書からそのまま出てきたような見た目」にしたかったという。「当時の医者たちは、現在では考えられないような非常に厄介な場所を切開しました。きっとフランケンシュタイン博士もそうすると考えたのです。彼は切る必要のない場所を切開し、失敗しても修復していったでしょう」

ギレルモ・デル・トロとオスカー・アイザック、Netflix映画『フランケンシュタイン』の舞台裏にて 写真:Netflix
ギレルモ・デル・トロ監督とオスカー・アイザック、『フランケンシュタイン』撮影現場にて 写真:Netflix

過酷な特殊メイクの裏側──ヒル氏とエロルディ“挑戦”の56日間

ヒル氏のデザインでは、頭部と首の14個を含む、計42個のシリコンラバー製パーツを要した。エロルディはそのすべてのパーツを装着し、計56日間の撮影に臨んだ。

エロルディのメイク時間は1日最大10時間にも及び、ヒル氏は夜9時半に起きて撮影現場に向かうこともあったという。その際、4人のメイクアップアーティストのサポートが必要だった。「非常に過酷でした。フランケンシュタイン博士より大変だったと思います。しかし、『もしこの仕事を私以外の誰かがやったら、私は非常に悔しがるだろう』と自分に言い聞かせていました」とヒル氏はユーモアをまじえて振り返った。

また、エロルディの協力的な姿勢もヒルに良い影響を与えたという。当初キャスティングされていたアンドリュー・ガーフィールドがスケジュールの都合で降板し、エロルディに交替したため、撮影は急ピッチで進められた。にもかかわらず、エロルディは「まったく動揺せず、完璧なプロフェッショナルでした」とヒル氏は語る。

『フランケンシュタイン』撮影現場にてメイク中のジェイコブ・エロルディ 写真:Jacob Elordi/Netflix
『フランケンシュタイン』撮影現場にてメイク中のジェイコブ・エロルディ 写真:Jacob Elordi/Netflix

当初は代役について不安視していたものの、ヒル氏から見てエロルディは怪物役にぴったりだったという。「彼の体格や手足の長さ、手首の動き、そしてボリス・カーロフ(1931年版『フランケンシュタイン』で怪物役を演じた)によく似た大きな鹿のような目を見て、『まさに求めていた俳優だ』とすぐにギレルモにメッセージを送りました」

最近の米『ハリウッド・リポーター』のポッドキャスト「Awards Chatter」に出演したエロルディは、本作の特殊メイクについてこう語っている。「非常にカタルシスを感じる経験でした。長時間立ったり座ったり、トランス状態になったり落ち着いたりするのを繰り返していたので、メイク用の椅子から立ち上がる頃には、まるで血流が変わったように感じました。撮影に入る頃には、まるで修道士のような気分になっていました」

ジェイコブ・エロルディ、『フランケンシュタイン』より 写真:Ken Woroner/Netflix
ジェイコブ・エロルディ、『フランケンシュタイン』より 写真:Ken Woroner/Netflix

ヒル氏とエロルディの化学反応によって、最終的に怪物は長い髪を持つ「大人の姿」に仕上がった。ヒル氏は茶髪をベースとして、黒髪とブロンドのような白髪が少し交ざったヘアスタイルをデザインした。この複雑な髪型に決定した理由は「意味をなさないものにしたかったから」だという。しかし、ヒル氏が「怪物は人間の過ちを学び、この世界の残酷さを知りました」と語るように、この複雑さこそ本作のメッセージを表しているのだ。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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