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ジェームズ・キャメロンが語る『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』と映画の未来|『タイタニック』裏話から『ターミネーター』新作構想まで語り尽くす

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ジェームズ・キャメロン『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』公開ロングインタビュー
ジェームズ・キャメロン 写真:Mark Griffin Champion; Fashion Assistant Elliott Pearson
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ジェームズ・キャメロン監督による期待の最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』が、12月19日(金)に日米同時公開された。

キャメロン監督は米『ハリウッド・リポーター』のインタビューに応じ、『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』の成否や、噂されている『ターミネーター』新作を含む今後の作品、そして映画業界に対する率直な心境を語った。


AIは俳優に取って代わるか?ジェームズ・キャメロンが語る

キャリア全体を通じて、キャメロンは「大衆に訴えかけながら、最も困難で、芸術的にやりがいのある課題は何だろうか?」と自問し続けてきた。

姿を変える悪役をかつてないCGI技術で表現した『ターミネーター2』(1991年)か?何カ月間も水中で撮影したクション・スリラー『アビス』(1989年)か?775フィート(約236メートル)ものレプリカの船を使用した『タイタニック』(1997年)か?それとも、パフォーマンス・キャプチャー撮影と3D映像の先駆け『アバター』(2009年)だろうか?

その成果は明らかだ。キャメロンは数々の作品をヒットへ導き、映画史に残る記録をいくつも打ち立てた。『アバター』と『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(2022年)は世界で計52億ドルもの興行収入を記録した。

しかしキャメロンは、特に『アバター』シリーズの制作に注ぎ込んだこだわりや労力を、多くの観客は理解していないと語る。実際、インタビュアーの友人は「今の映画は何でもAIで作っているみたい」と言っていた。

キャメロンは「AIが俳優に取って代わるという問題を語る時、なぜか私たちは一括りにされてきました。しかし、私たちの撮影方法を見れば、かなりパフォーマンスを重視していることに誰もが驚きます」と語る。キャメロンは『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』のプレスツアーでもこの点を強調してきた。

リアルさにこだわった『アバター』最新作

それは、18カ月に及ぶ本作の撮影期間中、キャメロンが俳優たちと同じだけの時間と労力をかけて撮影に取り組んだからだ。その後、数々のテクノロジーによって、俳優の細かな表情の変化をキャラクターに反映させた。本作でキリ役を演じるシガニー・ウィーバーは、この撮影法について「最も解放的なやり方です。皆さんが想像するやり方とは全く違います」と評している。

キャメロンは「実写映画の撮影現場は、動いている列車の前に線路を敷いているようなものです」と語る。「しかしパフォーマンス・キャプチャーの撮影現場では、必要なだけ時間をかけます。カメラや照明のことを心配する必要もなく、ショットリスト(何をどのように撮影するか書いたリスト)も必要ありません。重要なのは、各シーンで感情の核心に迫ることだけです。『これは本物の演技ではない』という人もいますが、それは史上最大のデタラメです。舞台でも、30列目まで届くような大声でささやく演技をすることはありません」

『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』では、海兵隊員からナヴィ族の革命家に転身したジェイク・サリー(演:サム・ワーシントン)と妻のネイティリ(演:ゾーイ・サルダナ)、そして彼らの子どもたちが、ジェイクへの復讐を目論むクオリッチ大佐(演:スティーヴン・ラング)から逃げることになる。クオリッチは、シリーズ初登場となるアッシュ族のリーダー、ヴァラン(演:ウーナ・チャップリン)を味方につけ、ジェイクたちと戦うことになる。

ゾーイ・サルダナとサム・ワーシントン、『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』より
ゾーイ・サルダナとサム・ワーシントン、『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』より 写真:©︎ 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

キャメロンは世界旅行に出た際、パプアニューギニアで出会ったバイニン族から「アッシュ族」のインスピレーションを得たという。キャメロンはバイニン族の火を使った儀式を見学し、火山の噴火によって壊滅した町の遺跡を巡った。

「彼らはトランスのような状態で、本物の炎の中で7時間も踊り続けていました。それから子どもたちが灰の中に入り、荒廃したような地で楽しそうに遊んでいました。『アバター』に取り入れようとは思っていませんでしたが、私の夢の風景を形作る要素の一つになりました」とキャメロンは回想した。

続いて、キャメロンは『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』で描かれる多様な美しさや野生生物たち、壮大な冒険アクションの舞台となった星の描写について語った。本作には、サリー家の子どもたちが荒れた川を泳ぐシーンが登場する。このシーンは大量のブラウンシュガーを投入した水槽で撮影されたが、完成した映像はあまりにもリアルだ。

「映画は短い方が稼げる」論をキャメロンが一蹴

本作は最初の編集時、4時間近い上映時間があったにもかかわらず、試写会は熱狂的な雰囲気に包まれた。「本作をもう一度観たいか」と問われ、観客全員が手を挙げたという。しかし、長すぎる上映時間には不満の声も挙がり、その後時間を3時間15分まで削ることになった。

このように、キャメロンは試写会における観客の意見を重視している。「観客から受け取った意見はすべて読み、データに基づいて独自に分析しています。重要な要素は映画に残しますが、譲歩できる点もあります。私は何より観客を喜ばせたいのです。映画館を出て『あれは何だったの?』と思われるのは嫌です」

ディズニー社内では上映時間をさらに短縮するよう求める声もあったという。キャメロンは「何十年も前から『1日の上映回数を増やせば収益が上がる』とよく言われています。しかし、大衆を惹きつける作品であれば、口コミが広がっていきます。私は『タイタニック』(上映時間:3時間15分)でそのことを証明しました」

同時に、キャメロンは「これは『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』が『タイタニック』と同じくらいの興行収入を上げるという意味ではありません」と前置きした。

『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』の興行収入は、同シリーズの命運を左右する重要なポイントだ。キャメロンは同シリーズをあと2作で完結させる構想を練っており、すでに撮影済みのものも含まれる。そして、この構想は『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』の成否に影響されるという。

ウィーバーは、キャメロンによるシリーズ第4作・第5作の計画を「本当にすばらしいです」と評した上で、「もしシリーズの制作が中止になったら悲劇的ですね。続編も含めて、一つの大きな物語の一部ですから」と語った。

そしてキャメロンは、「これ(『アバター』シリーズ)が最後になるかもしれません。この物語には、一つだけ未解決の疑問があります。しかし、現在の映画業界は衰退しており、『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』がその証明になるかもしれません。あるいは、以前と変わらず、映画体験は強力なものだと証明する可能性もあります。今は賭けのような状況で、結果は来年1月中旬頃まで分かりません」

インタビュアーが「この映画の結果はどうなってほしいですか?」と尋ねると、キャメロンは「ちょっとした岐路に立っている気がします。大成功して今後の続編2作を撮るのか、それとも失敗して他のことをするのか、という岐路です」と答えた。

ジェームズ・キャメロン
ジェームズ・キャメロン 写真:Mark Griffin Champion

実写とCGのメリットとは――『タイタニック』伝説の夕日シーン撮影秘話

先日、ソーシャルニュースサイト『Reddit』で「ジェームズ・キャメロンが『アバター』シリーズに35年以上を費やすのは、才能の無駄遣いだと思うか?」というトピックがトレンドに上った。この議論は、10年間にわたりファンの間でも繰り返されてきた。

しかし、キャメロンはこれを一蹴した。「これは私の決断であり、彼ら(批判的なファン)の決断ではありません。私は芸術家として充実感を持っています。彼らが映画監督になり、自分で決断すればいいでしょう。あるいは、私と一切関わらなければいいだけです」

キャメロンは現在、数年ぶりに『アバター』シリーズ以外の作品に着手しようとしている。「『アバター』以外にも作るべき物語があります。何年も『アバター』の制作に留まり、深みにはまるつもりはありません。化学反応を起こせるような、もっと別の方法も探すつもりです。監督業を引退するわけではありませんが、制作過程の細部にまで介入するのは控えようと思っています」

実際、キャメロンは徐々にセカンド・ユニット(主要キャラクターが登場しない場面を撮影するチーム)の役割を拡大しており、次作ではセカンド・ユニットが大きな役割を担うという。ディズニーがキャメロン不在の状態で『アバター』続編を制作するかどうかは不明だ。また、キャメロンが同シリーズの権限を手放す意思があるのかも分かっていない。ただ、キャメロンにとって同シリーズが重要な位置を占めていることは確かだ。

キャメロンによれば、「『実写撮影は常に(CGIより)すばらしい』と言われることが多いです。確かに『コストが安い』という点では、実写撮影は優れています。しかしCGIであれば、完璧な夕日を何十分も待つ必要はありません。また、本物の車を走らせることなく最高のカーチェイスシーンを作ることもできます。しかも、観客はCGIであることに気づかないでしょう」

これまでの作品で最もお気に入りのシーンを問われたキャメロンは、『タイタニック』で夕日をバックにしたキスシーンを挙げた。当時、キャストとスタッフは“完璧な夕日”を待たなければならなかったのだ。

キャメロンは当時について楽しそうに振り返る。「その日は曇っていて、夕日のショットが撮れるとは誰も思っていませんでした。しかしその時、雲が晴れて赤く美しい空が現れたのです。映画におけるロマンスと破滅の前兆のようでした。夕日が見えるのはあと数分という中、ケイト・ウィンスレットがはしごを駆け上がって船首に向かい、『撮って!』と叫んだのです。ややピントがズレてしまっていますが、映画史上最も象徴的なショットの一つになりました。俳優から『撮って!』と叫ばれたのは、後にも先にもあの時だけです」

しかし、キャメロンでも「もしCGIで理想的な夕日を作れたら、あのシーンはどうなっていたか?」と考えるのだろうか。それを問うと、キャメロンは「私自身もそれは考えてきました」と認めた。

レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレット、『タイタニック』より
レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレット、『タイタニック』より 写真:20thCentFox/Courtesy Everett Collection

キャメロンの新構想「AIでVFX作業を効率化」

話題は『アバター』シリーズとAIのことに戻る。キャメロンは、同シリーズの映像にあえて不完全なショットを入れている。その理由について、「私は“完璧な不完全さ”を追求しているのです。例えば『このショットは露出オーバーにして、急いでいるように白飛びさせよう』という風に。あえて不完全なものを組み込んでいます」と説明した。

これは、『アバター』シリーズのようなデジタル制作映画のみならず、AIを活用した映画にも言える点だ。どちらもコストやスケジュールといった映画制作の悩みを解決できるが、現実世界で得られる機会やインスピレーションを逃す可能性も高まる。

これまで、キャメロンはAIを声高に批判してきた。『ターミネーター』シリーズには、世界を破滅へ導こうとするAIコンピューター「スカイネット」が登場する。キャメロンは「『俳優がいなくても映画を作れる』と考える世代が出てくるのではないかと心配です」と語り、AIがハリウッドの雇用を妨げる可能性にも警鐘を鳴らす。

しかし同時に、キャメロンはあるAI分野にビジネスチャンスも見出しているという。それは「VFXの効率化」だ。VFXアーティストの仕事を奪ったり、魔法のように映像を生成したりするのではなく、AIによってVFXアーティストがより簡単に映像を加工できるようになる。これにより、映画制作コストを劇的に削減できる可能性がある。

キャメロンはここに注目し、VFX制作をサポートするAIツールの開発を検討しているという。同様の取り組みとして、キャメロンは1993年にVFX制作会社デジタル・ドメインを設立している。

溺れかけたことも……波乱万丈な撮影裏話の数々

数々の映画監督の中でも、キャメロンは特にドラマに満ちたキャリアを歩んできた人物だ。『タイタニック』撮影時には、スタッフの誰かがケータリングのスープに薬物を混入させ、50人以上が病院に搬送される事件が起こった。

元妻のキャスリン・ビグローが監督を務め、キャメロンが製作総指揮を務めた映画『ハートブルー』(1991年)では、キャメロンが秘密裏に脚本を執筆したと言われている。キャメロンも「『ハートブルー』の脚本は私が書きました。しかし、脚本家組合にはデタラメを言われ、完全に無視されました」と認めている。

過酷な水中撮影を敢行した『アビス』では、潜水中にキャメロンの酸素が尽きて溺れかけたこともある。同作にはネズミを液体酸素に沈めるシーンがあるが、実際の撮影時にネズミが溺死しかけるトラブルも起きた。キャメロンはとっさに心肺蘇生を施し、ネズミは息を吹き返したという。キャメロンはこのネズミの「ビーニー」をペットとして迎え入れた。

キャメロンは「ビーニーとは兄弟のような関係でした。『ターミネーター2』の脚本の執筆中、彼はいつも私の机の上に座っていました」と、心温まるエピソードを明かした。

キャメロンと深海と言えば、ドキュメンタリー映画『ジェームズ・キャメロン 深海への挑戦』(2014年)が思い出される。同作の中で、キャメロンは自身が設計に携わった潜水艇に乗り、マリアナ海溝の底へ向かった。そして6.6マイル(約10.6km)もの深さに到達し、有人潜水艇での単独潜水の世界記録を樹立した。

キャメロンの潜水中、妻で俳優のスージー・エイミスは「二度と彼に会えないかもしれないと思い、とても不安でした。しかし、彼はまるで子どものように興奮していました。彼が何年も取り組んできた挑戦を止めることはできません」とインタビューで語っている。

キャメロンはドキュメンタリー映画『エイリアンズ・オブ・ザ・ディープ』(2005年)でも、深海に棲む神秘的な生物たちの姿を捉えた。

潜水艇を操縦するジェームズ・キャメロン、『エイリアンズ・オブ・ザ・ディープ』より
潜水艇を操縦するジェームズ・キャメロン、『エイリアンズ・オブ・ザ・ディープ』より 写真:Buena Vista/Courtesy Everett Collection

『アバター』の力を信じ続けた名プロデューサー

キャメロンはキャスト・スタッフに厳しい人物として知られているが、同時に「優しい人物」と評されることも多い。ウィーバーは「いつも私にとても優しくしてくれました。私は彼の厳しい一面を見たことがありません。とても遊び心があり、一緒に仕事をするたびにワクワクします」と語っている。

『アバター』シリーズをはじめ数々のキャメロン作品に携わったプロデューサーのジョン・ランドーとは、特に親交が深かった。2人は1日に20回もメールのやり取りをしていたこともある。昨年ランドーが亡くなったことについて、キャメロンは「まるで自分の両親が亡くなった時のようです」と悲しみをあらわにした。ランドーの葬儀から1週間、キャメロンはランドーのアドレス宛にメールを送っていたという。

キャメロンは「彼は、私より『アバター』の可能性を信じていました。私は『もうダメだ、これはすべて無駄な物語だ』と思うこともありましたが、彼は信じてくれたのです。ずっと昔、私は彼によく怒鳴っていましたが、彼が私に怒鳴ることはありませんでした」と回想する。

アバター
ゾーイ・サルダナとサム・ワーシントン、『アバター』より 写真:20thCentFox/Courtesy Everett Collection

新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』はランドーに捧げられている。「皮肉なことに今作は、喪失と悲しみ、立ち直って前進すること、そして希望を見つける方法、前進し続けるための絆を見つける方法を描いています。これらがすべて詰まった映画なのです」

キャメロンの感傷的な性格は、その作品を成功に導くキーポイントでもあった。彼の書くセリフは「安っぽい」と評価されることもあるが、つまり「誠実」ということなのだ。キャメロンが描くキャラクターのほとんどは、観客の胸が痛むほど誠実な性格である。キャメロンによれば、生死の境目にいる人間が冗談を言ったりするのは現実的ではない。「皮肉なセリフは書きません」と彼は述べた。

キャメロン、悲願の“原爆映画”が本格始動

そしてキャメロンは、近況と今後について語った。キャメロンが共同監督を務めたビリー・アイリッシュのコンサートフィルム『ビリー・アイリッシュ – HIT ME HARD AND SOFT : THE TOUR (LIVE IN 3D)』は、2026年3月20日(金)に日本でも公開される。

『ビリー・アイリッシュ - HIT ME HARD AND SOFT : THE TOUR(LIVE IN 3D)』より @HENRYHWU
ジェームズ・キャメロンとビリー・アイリッシュ、『ビリー・アイリッシュ – HIT ME HARD AND SOFT : THE TOUR(LIVE IN 3D)』より 写真:@HENRYHWU

さらに現在、世界をめぐるドキュメンタリー映画の準備を進めているという。詳細は明かされていないが、原爆投下をテーマとするチャールズ・ペレグリーノ原作の『ゴースツ・オブ・ヒロシマ(原題:Ghosts of Hiroshima)』もその一つとされている。キャメロンは先日、この原作の映像化権を取得した。

またキャメロンは長きにわたり、同じくペレグリーノ原作の『ザ・ラスト・トレイン・フロム・ヒロシマ ヘンリー・ホルト(原題:The Last Train from Hiroshima Henry Holt)』の映像化も試みてきた。このノンフィクションは、広島と長崎で被爆した「二重被爆者」の山口彊(つとむ)さんに焦点を当てている。2009年、キャメロンは山口さんと病床で面会した際に映画化を約束し、その直後に山口さんは逝去した。

キャメロンによれば、『ゴースツ・オブ・ヒロシマ』の脚本はまだでき上がっていないが、多くの業界関係者が協力を名乗り出ているという。キャメロンは「ポストアポカリプスの世界は、SFの世界ほど面白くないでしょう。突然変異体やモンスターといった面白いものは一切登場しません。まさに地獄なのです」

また、本作のリアリティを高めるために、多くの日本人スタッフを起用するアイデアもあるという。「反発を受ける可能性は気にしませんか?」とインタビュアーに問われると、キャメロンは「そんなことはどうでもいいのです。それでも私はこの作品を作ります。なぜなら、誰もやっていないことだからです。もし他の誰かが本作を撮りたいなら脚本は差し上げますが、誰も手を挙げないでしょう。恐らく、これは私の作品の中で最も観客動員数の少ない作品になります。核兵器が人間にもたらした被害は、本当に見苦しいものですから」

新『ターミネーター』構想と、キャメロン流「人生・創作活動」論

キャリア初期の『ターミネーター』(1984年)から終末世界を描いてきたキャメロンは、同シリーズの新作を企画している。「今後数カ月で『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』の仕事が落ち着いたら、本格的に『ターミネーター』新作に取りかかるつもりです」とキャメロンは明かす。

同シリーズの復活にあたり、課題は多いという。「ストーリーの中で解決すべきことはたくさんあります。最大の課題は、現実世界の出来事を先取りしながらSFとして成立させることです」

そしてこの『ターミネーター』新作に、アーノルド・シュワルツェネッガーは出演しないとキャメロンは断言する。「新時代のキャラクターが登場するタイミングが来たのです。『ターミネーター:ニュー・フェイト』(2019年)の時、私は『必ずアーノルドは参加するべきだ』と主張しました。その結果、T-800(シュワルツェネッガー演じるターミネーター)は最高のラストを飾りました。現在の『ターミネーター』には、時空を超えた戦いや超知能といった、さらに幅広い解釈が必要です。人々が想像もしないような新しいことがしたいのです」

ターミネーター2
アーノルド・シュワルツェネッガー、『ターミネーター2』より 写真:TriStar Pictures/Courtesy Everett Collection

ノア・ホーリー監督がAIをテーマに『エイリアン』シリーズを再構築したドラマ『エイリアン:アース』(2025年)について問われると、キャメロンは「とても楽しくてすばらしい作品です」と称賛した。しかし、「このドラマは映画『エイリアン』の初期2作品を参考にしていますが、私はそういうことはしません。批判ではありませんが、過去の『エイリアン』作品はすでに観ているので興味がないのです」と厳しい指摘も飛び出した。

さらに、話題は私生活について及んだ。現在71歳のキャメロンはビーガン食を実践しているが、エネルギーに満ちている。その健康の秘訣について、「50年後の人類がみな実践しているであろう食生活を、私は実践しています。さもなければ人類は生き残れません。また、週に2~3回はキックボクシングをしてアクティブに過ごしています」と語った。

最後に、キャメロンは人生と創作活動における持論を語った。「同年代の人たちを見ると、まるでただタイムカードを切り、時が過ぎるのを待っているかのようです。私には一生かかっても到底実現できないほどのアイデアがあり、やるべきことが山ほどあります。自分が一番怖いと感じることこそ、一番やるべきことなのです。創作活動をする時、安全な位置にとどまるべきではありません」

これこそ、キャメロンがさまざまな大作シリーズを作り続ける最大の理由なのかもしれない。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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