『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』VFXチームが撮影舞台裏を明かす│ジェームズ・キャメロンのこだわりから続編の展望まで
『アバター』(2009年)から最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』(2025年)まで続くジェームズ・キャメロン監督の『アバター』シリーズでは、さまざまな特殊効果が観客を魅了し続けている。本作のVFXチームは第82回アカデミー賞視覚効果賞を受賞し、今年の第98回アカデミー賞でも同賞にノミネートされている。
米『ハリウッド・リポーター』は、『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』のVFX制作に携わった以下の3人に取材を行った。
- リチャード・バネハム:製作総指揮、VFXスーパーバイザー、セカンドユニットディレクター
- エリック・セインドン:Wētā FX(VFX制作会社)シニアビジュアルエフェクトスーパーバイザー
- ダニエル・バレット:Wētā FXシニアアニメーションスーパーバイザー
このインタビューでは、最新作で最も表現が難しかった映像や、キャメロン監督が特にこだわったショット、そしてアカデミー賞における視覚効果賞と衣装デザイン賞の扱いについて深掘りした。
『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』の炎と水、表現が難しいのは?
――最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』で最も難しかったエフェクトは何ですか?
セインドン:観客の皆さんは大爆発や水のシーンを想像するかもしれませんが、実際に最も難しいのは繊細なショットです。特にジェイク(演:サム・ワーシントン)のショットはどれも本当に繊細でした。サムは決して大げさな演技をしないのです。
バレット:その通りです。ヴァラン役としてシリーズに初参加したウーナ・チャップリンに、サムは「カメラがどこにあるか分からないから、すべてのショットがクローズアップだと思って演技しなさい」とアドバイスしていました。演技のすべてに微妙なニュアンスが含まれるため、非常に難しいのです。

バネハム:観客から見て、俳優の視線は照明によっても違って見えます。私たちが最も重視するのは「キャラクター同士の関係性」です。スクリーン上でそれを表現するために、かなり細かく調整することもあります。
――炎と水では、どちらの表現が難しいですか?私は水だと思いました。
セインドン:水だと思われるかもしれませんが、実際には炎の方が難しいと思います。炎の特徴は予測不可能で、ショットごとに少しずつ違って見えます。スピードや露出が少しでもズレると、不自然な映像になってしまうのです。水の場合はもう少し柔軟に対応できます。

バネハム:私たちは水の基本原理を熟知しており、その知識によって形を予測できます。しかし、炎はさまざまな外的要因によって変化します。例えば、燃料や風向きなどが変われば炎の性質も変化します。
セインドン:火炎放射器を使い、実際の炎を撮影することも多かったです。
ジェームズ・キャメロンがこだわり抜いた撮影法とは
――ジェームズ・キャメロン監督が特殊効果でこだわっていた点はどこでしょうか?
セインドン:彼はよく「これは何のショットだ?」と私たちに訊ねてきます。それは、「大げさなエフェクトでショットの魅力が薄れてしまうのではないか」と危惧しているためです。例えば、照明が暗すぎると表情の演技が見えなくなってしまいます。
試作版の戦闘シーンでは、完成版の3倍もの数の戦士たちを映していました。しかし監督は、背景で起こっている小さな戦闘の一つ一つまで見えるようにこだわっていました。あまりに雑然としたショットだと、それらの戦闘が見えなくなってしまいます。
――キャメロン監督が最も悩んだ、最も試行錯誤したショットはどれでしたか?
バネハム:監督が何度も試行錯誤していたことはほとんどありません。しかし、ヴァランとクオリッチ(演:スティーヴン・ラング)が幻覚剤でトリップするシーンでは、どうアプローチするか試行錯誤していました。最終的に、監督がカメラを高速で揺らしてエフェクトを加えることになりました。
衣装デザイン賞への疑問を一蹴!「すべて俳優が着用している」
――『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』は、今年のアカデミー賞で視覚効果賞と衣装デザイン賞にノミネートされました。しかし、「撮影中は衣装を着ていない」と指摘する人もいます。これについてどうお考えですか?
バネハム:その意見には異議ありです!(衣装デザイナーの)デボラ・L・スコットと衣装チームは約2,000点の衣装と小道具を製作し、それらを使用して膨大なテストを行いました。これらの衣装は基本的にすべて手作りで、俳優たちが実際に着用し、動きを確認します。
確かに、最終的にはCGを使って表現するため、見落とされる部分もあるでしょう。しかし、それは「俳優の演技に意味がない」と言うようなものです。

――本作の映像は非常にリアルで、シリーズ4作目への期待が高まりました。次作でパンドラの世界を表現する時は、さらに進化したVFX技術を用いるのでしょうか?
バネハム:視覚効果のクオリティは向上し続けており、かなり写真に近いレベルに到達しています。本シリーズで描かれるテーマは現実離れしているため、そのバランスは難しいです。しかし、制作プロセスやワークフローには改善の余地が残っています。シリーズ4作目と5作目の視覚効果についても、面白い課題がいくつかあります。
バレット:VFXは、学べば学ぶほど細かい部分を知ることができ、どんどんディテールを追求することになっていきます。ですから、今後さらにブラッシュアップされていくと思います。
セインドン:私たちが常に進歩を目指さなければ、この業界は退屈なものになるでしょう。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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