A24映画『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』日本ロケ敢行|上野公園で撮影、ティモシー・シャラメ主演
A24製作の話題作『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』は、日本・東京での大規模ロケ撮影でも注目を集めている。クライマックスの決戦シーンは、東京・上野公園で撮影された。
2026年3月13日に日本公開予定の本作で、美術デザイナーの巨匠ジャック・フィスクが、再びアカデミー賞候補入りを果たした。
彼が本作で挑んだのは、1950年代ニューヨークと東京を舞台に、天才卓球少年マーティの軌跡をリアルに描き出すこと。とりわけ、日本ロケでの大規模なセット再現は大きな見どころとなっている。

1950年代ロウアー・イースト・サイドを再構築
主人公マーティ(演:ティモシー・シャラメ)は、ニューヨークのロウアー・イースト・サイドの長屋で育つ。フィスクは当時の街並みや店舗、屋台、そして雑多な生活感を徹底的にリサーチし、1950年代初頭の空気感をスクリーンによみがえらせた。
参考にしたのは、実験映画作家ケン・ジェイコブスによる16mmドキュメンタリー『Orchard Street』。日曜でも活気にあふれる商店街の姿を手がかりに、“生活の匂い”が残る生きたセットを構築した。
フィスクは「時代劇は“ある年”を再現するのではなく、“時代”を再現するものだ」と語る。1950年代の物語であっても、壁には1930年代の塗装が残っている可能性がある。コンセント裏の塗装や木材の裏面まで調査し、当時の色彩を丹念に再現したという。

実在の卓球場「ローレンス・ブロードウェイ卓球クラブ」を再現
物語の重要な舞台となるのが、マーティが通い詰める卓球場。モデルとなったのは、かつてニューヨークに実在した「ローレンス・ブロードウェイ卓球クラブ」だ。
建物はすでに取り壊されているが、設計図や『Time Life』誌の写真資料をもとに再現が試みられた。かつて屋内ゴルフ場だった2階フロアを改装した空間には壁画や風景画が描かれていたといい、フィスクはそれらも忠実に再制作。
赤みがかった床、深いブルーの壁、シガレットマシンやコカ・コーラの自動販売機、当時のエレベーターまで再現し、賭け卓球の熱気を立体的に表現した。
この空間は単なるセットではなく、マーティという人物の“原点”を象徴する場所である。フィスクは「彼の人生はこの長屋と卓球場から始まる」と語っている。

靴店セットの大胆改装と色彩設計
もうひとつの主要ロケ地は、主人公マーティが働く靴店。実在の店舗を借り、老朽化した天井を補強し、数十年分の在庫を撤去。現代に多いニュートラルカラーではなく、当時特有のくすんだ色彩と深い木目を生かした空間へと改装した。
35mmコダック製フィルムとの相性も計算され、家具や椅子の色味が映像全体のトーンを決定づけたという。細部の積み重ねが、フィルムならではの質感を最大化している。
日本ロケが実現した理由
当初はアメリカ国内で日本人エキストラを集め、セット撮影を行う計画だった。しかし、大規模な日本人キャストの確保が困難だったこと、本物のロケーションによる臨場感を重視したこと、文化的ディテールの精度を高める必要があったことなどから、最終的に東京での現地撮影が決定した。
現地の美術チームと連携し、事前にデザインコンセプトを共有。日本パートは単なる異国情緒としてではなく、物語上の重要な転換点として描かれている。
上野公園に設置された特設セット
日本での試合シーンでは、竹製のタワー型セットを設置。和風グラフィックや当時の大会ポスター風デザインを施し、1950年代の国際試合の雰囲気を再構築した。
ニューヨーク編の赤みがかった色調とは対照的に、日本編では落ち着いた木目や自然光を生かした演出を採用。主人公マーティの心理的変化を視覚的に強調している。
ジョシュ・サフディとの創造的パートナーシップ
監督はジョシュ・サフディ。スマートフォンでラフイメージを共有しながら、日米それぞれのビジュアルトーンを緻密にすり合わせた。
ニューヨークの雑多な熱量と、東京の静と動。その対比が物語後半の緊張感を高めている。
また、マーティが英国で女優(演:グウィネス・パルトロー)と出会い、五番街の邸宅へ移る展開も、環境の変化によるキャラクターの変容を視覚的に表現する重要な要素となっている。

ハリウッド最高峰の美術デザイナー
フィスクはこれまでに、テレンス・マリック、デヴィッド・リンチ、ブライアン・デ・パルマ、ポール・トーマス・アンダーソン、アレハンドロ・G・イニャリトゥ、マーティン・スコセッシといった巨匠たちと仕事をしてきた。80歳を迎えた今もなお、“生きている空間”を創り出す第一人者である。
日本ロケが物語を決定づけた『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』
『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』は単なる海外映画ではない。本格的な日本ロケによって物語は国際的スケールへと拡張した。
日本ロケは単なる背景ではなく、主人公の運命を変える“舞台装置”となっている。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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