韓国映画がアカデミー賞の常連になったワケ 大手スタジオ・CJ ENMが仕掛ける緻密な世界戦略に迫る
韓国映画が近年、アカデミー賞の舞台で存在感を高めている。その中心にいるのが、韓国の大手エンターテインメント企業CJ ENMだ。『パラサイト 半地下の家族』の歴史的快挙を皮切りに、同社は国際共同製作やリメイク戦略を通じてグローバル市場を拡大。直近では『ブゴニア』でも賞レースに食い込み、韓国映画の世界的な地位をさらに押し上げている。
▼『パラサイト』から始まった韓国映画の躍進とアカデミー賞の転機

2019年5月、ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』がカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した直後、CJグループの副会長ミキー・リーは社内幹部を招集した。
CJ ENMのグローバル映画部門責任者ジェリー・コーによれば、リー副会長はその場で「今こそオスカーを獲りに行く時」と宣言したという。当時、韓国映画はアカデミー賞にノミネートされた経験さえほとんどなく、スタジオにとっても未知の挑戦だった。
しかし翌2020年、『パラサイト 半地下の家族』はアカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の4部門を受賞。韓国映画史に残る快挙となり、世界的な韓国ポップカルチャーの躍進を象徴する出来事となった。
▼『パスト ライブス』から『ブゴニア』へ続くグローバル戦略

CJ ENMのアカデミー賞への挑戦は、単発の成功では終わらなかった。2023年にはセリーヌ・ソン監督の恋愛ドラマ『パスト ライブス/再会』に共同製作として参加し、再び賞レースの舞台へと戻る。
さらに今年は、ヨルゴス・ランティモス監督、エマ・ストーン主演の『ブゴニア』で作品賞ほか4部門にノミネートされた。同作は、2003年の韓国のカルト的人気作『地球を守れ!』を基にした英語リメイクで、CJ ENMが開発・製作している。
韓国映画の独創的な物語を世界のクリエイターと組み合わせるこの手法は、気鋭のスタジオA24の成功モデルにも通じるアプローチだといえる。
▼惜しくも届かなかった韓国映画のオスカー挑戦

近年、CJ ENMは有力視されながらノミネートを逃す経験も重ねてきた。是枝裕和監督による韓国語作品『ベイビー・ブローカー』(2022)や、パク・チャヌク監督の『別れる決心』(2022)、『しあわせな選択』(2025)などがその例だ。
『しあわせな選択』は国際長編映画賞のショートリストに残りながらも最終ノミネートを逃したが、海外プレセールスは韓国映画として過去最高レベルを記録。北米ではNeonの配給により、ホリデーシーズンに1,000万ドル(約15億6,000万円)以上の興行収入を上げるなど商業的な成功を収めた。
▼SNSと配信が後押しした韓国映画の世界的拡大

CJ ENMのグローバル展開は、時代の変化とも重なっている。SNSやストリーミングサービスの普及により、若い観客は国境を越えてコンテンツを発見するようになった。
CJ ENMのグローバル映画部門責任者ジェリー・コーは、「コンテンツの情報の流れは完全に変わった」と語る。かつては各国のメディアを通じて映画を知るのが一般的だったが、現在はSNSのおすすめを通じて世界中の作品が共有されるようになった。
Netflixなどの配信サービスは、ポン・ジュノ監督がアカデミー賞のスピーチで語った「字幕という1インチ程度の壁」を越えるきっかけとなり、外国語作品の視聴ハードルを大きく下げた。K-POPやアニメに慣れ親しんだ若い世代にとって、字幕作品はもはや障壁ではなくなっている。
▼CJ ENMが描く次の韓国映画プロジェクト

CJ ENMは今後もグローバル展開を加速させる方針だ。マイケル・マン監督とともに、韓国の大ヒット犯罪アクション『ベテラン』(2015)のリメイクを開発中のほか、パク・チャヌク監督の『親切なクムジャさん』(2005)や『渇き』(2009)、クォン・オスン監督の『殺人鬼から逃げる夜』(2021)の英語版リメイクも企画されている。
そしてCJ ENMは、再びポン・ジュノ監督とタッグを組む。新作『The Valley(仮題)』は、監督初の長編アニメーションとなる予定で、人間と深海生物の関係を描く物語になるという。完成は今年後半が見込まれており、2027年の主要映画祭での披露が期待されている。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌

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