ブロードウェイの魔法を映画へ:空中パフォーマンスと生歌で魅せる『ウィキッド ふたりの魔女』
映画『ウィキッド ふたりの魔女』でアリアナ・グランデとシンシア・エリヴォの歌唱シーンが生歌撮影だったという事実が、多くのファンを驚かせている。
シンシア・エリヴォが「Defying Gravity」を空中で熱唱し、アリアナ・グランデが「Popular」でシャンデリアにぶら下がりながら歌ったのは、いずれも事前録音を行わない、生歌撮影だったのだ。
この生歌パフォーマンスを実現するために、ジョン・M・チュウ監督と出演者はブロードウェイ版『ウィキッド』の精神を理解し表現する事にこだわり、サウンドチーム、振付師、プロダクションデザイナー、衣装部門、スタントチームなど、多くの部門が協力をして本作を作り上げた。
ノイズを抑えた環境作り
音響ミキサーのサイモン・ヘイズ氏によると、「監督のジョンは最初のZoomミーティングで、『クレーンが3台、セットは15メートルもあるが、生歌は可能か?』と尋ねた」と語る。ヘイズ氏は「スタッフ全員がこの生収録に協力するなら可能だ」と応じたそう。
実際に実施された対策は、クレーンやワイヤーの静音化、ダンサーの足音を最小限にする事、マイクをドレスに設置し、撮影後にVFXで除去、そして発電機をセットから約90メートル離して設置し、ノイズを低減する事だったという。
プリレコーディングの活用
広角ショットでは事前に録音した歌を活用し彼女たちの声を温存。また、振付師のクリス・スコット氏が撮影開始5カ月前からリハーサルを開始し、ダンサーたちの動きに合わせてプリレコーディングが活用された。ただし、シンシア・エリヴォとアリアナ・グランデの卓越した声のスタミナにより、ほとんどの場合、生歌での撮影が可能だったという。
生歌パフォーマンスを支える音響技術
アリアナ・グランデは、頭をどの方向に向けても声を拾えるように、常に2つの個別マイクを装着していた。一方、エリヴォが「Defying Gravity」を歌う際には、「静かな風」を再現するため、風機械をスタジオの外に配置し、プラスチック製の柔軟なチューブを通して空気を送る工夫が施された。
さらに、「I’m Not That Girl」ではエリヴォがテンポを自由に操れるよう、ライブ演奏のキーボードをインイヤーモニターで流しながら収録が行われた。多くの工夫が積み重ねられ、俳優たちが感情豊かに演じられる環境が整えられたのだ。
制作チームのアイデアと努力によって『ウィキッド ふたりの魔女』ではブロードウェイの雰囲気を忠実に再現しただけでなく、映画ならではの新たな可能性が追求された。
『ウィキッド』生歌撮影の裏側は、下記の特別映像から見ることができる。
本記事は、米ハリウッド・レポーター誌の1月単独号に初めて掲載され、THR.comに掲載されたものを要約・抄訳したです。オリジナル記事はこちら。
【関連記事】
- アカデミー賞受賞作品との比較考察:映画『ウィキッド』は歴史的大作と同じ軌跡を辿るのか?
- 『ウィキッド』パート2、2025年公開に向け新タイトルが決定
- 映画『ウィキッド』がアカデミー賞受賞の有力候補となる理由
- 映画『ウィキッド』、海外で絶賛の声「アリアナ&シンシアは魔法のデュオ」「『シカゴ』以来の傑作」
- 2024年の映画ベスト10!日本公開予定の最新作がランクイン