ジェームズ・キャメロン、映画『ハウス・オブ・ダイナマイト』の結末を擁護――「唯一あり得た終わり方だった」
ジェームズ・キャメロンが、キャスリン・ビグロー監督による政治スリラー映画『ハウス・オブ・ダイナマイト』(2025年)のラストシーンをめぐる議論に言及。「あれこそが唯一あり得た結末だ」と擁護した。
※以下、ネタバレを含む。
ジェームズ・キャメロンが語る『ハウス・オブ・ダイナマイト』の結末
キャメロンは過去に、クリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』(2024年)について、広島・長崎への原爆投下の惨禍を直接描かなかったことを「モラル的な逃げ」だと批判し、物議を醸した。では、同じく「核」をテーマにした『ハウス・オブ・ダイナマイト』(2025年)の結末について、キャメロンはどう評価しているのだろうか。
本作は、正体不明のICBM(大陸間弾道ミサイル)がアメリカ本土を脅かすという政治スリラー映画。物語は、核爆発が実際に起きたのかどうかを描かないまま幕を閉じる。
ICBMの誤作動でシカゴが破壊されたのか、イドリス・エルバ演じる大統領がどのような決断を下したのかは、あえて明かされない。このクリフハンガー(※)的な終わり方は、Netflixで配信開始以降、観客の間で賛否を呼んだ。
(※クリフハンガー:物語の核心を明かさないまま、観客の想像に結末を委ねる終わり方)
「結末は最初から決まっていた」――キャメロンが強調する物語の本質

『ハウス・オブ・ダイナマイト』(2025年)の監督を務めたのは、キャスリン・ビグロー。キャメロンにとっては友人であり、元配偶者であり、長年の共同制作者でもあった。キャメロンは米『ハリウッド・リポーター』のインタビューで、数週間前にビグローと食事をともにし、このエンディングについて語り合ったことを明かしている。
「私はビグローに、あの結末を全面的に支持すると伝えた。あれ以外の終わり方はなかった。F・R・ストックトンの短編小説『女か虎か』(1882年)の結末と同じだ。最後まで行っても、どの扉の向こうに何があるのかはわからない。しかし、重要なのはそこではない」とキャメロンは語る。
キャメロンが強調するのは、物語の本質である。「ミサイルが発射され、探知された瞬間からすでに最悪の結末を迎えていた。良い結果など存在しないということを、映画は2時間かけて描いている。私たちは、核兵器が存在すること自体をけっして容認してはならないのだ」
アメリカの核システムが抱える恐ろしさ
キャメロンは、アメリカの核システムが抱える恐ろしさにも言及。「攻撃であれ防衛であれ、最終的に核を発射できるのは大統領だけだ。地球上のすべての人間の生死が、たった1人の判断に委ねられている。それが私たちが生きている世界の現実であり、次に投票するときは、この事実を忘れてはならない」と話す。
さらに結論として「『ハウス・オブ・ダイナマイト』(2025年)の終わり方は、あれしかあり得なかった。『ウォー・ゲーム』(1983年)のラストでコンピューターが導き出した答えと同じだ。勝つ唯一の方法は、最初からゲームに参加しないことなのだから」と語った。
キャメロン映画に一貫する「核への警鐘」
キャメロン監督はデビュー作『ターミネーター』(1984年)以来、核戦争の脅威を繰り返し描いてきた。『ターミネーター2』(1991年)、『アビス』(1989年)、『トゥルーライズ』(1994年)も核の存在が物語の重要な軸となっている。
現在キャメロンは、チャールズ・ペレグリーノによるノンフィクション書籍『Ghosts of Hiroshima(原題)』の映画化権を取得している。同書は、広島と長崎の原爆投下を生き延びた山口彊(つとむ)氏の実話を描いたものだ。キャメロンは2010年、山口氏が亡くなる直前に「かならず映画にする」と約束したという。
なお、キャメロンは以前『オッペンハイマー』(2024年)について「映画としての完成度は高いが、道徳的には踏み込みが足りないと感じた」と語っている。「原爆の影響をオッペンハイマー自身が理解していなかったはずがない。にもかかわらず、その現実を真正面から描くことを避けた点には強い違和感を覚えた。私は危険な第3のレールにこそ、あえて触れに行きたいタイプなんだ」とも述べている。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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