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ジェイコブ・エロルディ、不安定な時期を救ってくれた名作とは?「俳優として孤独ではなくなった」

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ジェイコブ・エロルディ、俳優として不安定な時期を救ってくれた名作とは
ジェイコブ・エロルディ、ロンドンでの『ラスト・サバイバー』ワールドプレミアにて=現地時間2026年8月20日 写真:Stuart C. Wilson/Getty Images
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現地時間10月16日(金)、カルティエのアンバサダーを務める俳優のジェイコブ・エロルディが、サンタモニカで開催された「カルティエ・シネマ・クラブ」のイベントに登壇。映画監督のショーン・ベイカーとともに、映画について語り合った。

このイベントで、エロルディは自身の精神状態が悪化した時期や、それを救ったある監督の名作について明かした。

俳優ジェイコブ・エロルディ、ジョン・カサヴェテスの名作に救われた過去を告白

「カルティエ・シネマ・クラブ」は、映画文化と映画制作者たちを称えることを目的に、高級ブランドのカルティエが立ち上げた取り組みだ。今年の第83回ヴェネチア国際映画祭で始動し、今回がアメリカでの初のイベントとなった。同ブランドのアンバサダーを務めるエロルディが、上映作品を自ら選定した。

エロルディが選んだ作品は、ジョン・カサヴェテス監督の名作『オープニング・ナイト』(1977年)だ。同作は、ジーナ・ローランズ演じる人気俳優マートル・ゴードンが、ブロードウェイでの新作舞台の初日を目前に控え、精神的に追い詰められていく姿を描いている。

上映後には、ショーン・ベイカー監督、脚本家でギレルモ・デル・トロ監督の妻でもあるキム・モーガンとともに、30分間にわたるトークセッションが開催。エロルディは次のように振り返った。

「若い頃に出演した映画が3本あったが、どれもかなりひどい出来だと思っていた。当時は、圧倒的な存在感を持つ舞台俳優になりたかったので、自分自身をあまり好きになれなかった。そんな時に、この映画を観たんだ。俳優がどのように役を作り上げていくのか、その過程をここまで詳しく描いた作品を観たのは初めてだった。この映画のおかげで、自分はずっと正気だったのだと思えたし、孤独ではなくなった」

エロルディは、ローランズ演じる主人公のように、自分も「どこか精神が崩壊しているのではないかと思っていた」という。しかし、映画の結末まで見届けたことで、「ようやく気持ちが楽になった」と振り返った。

同作について、エロルディは次のように説明した。

「この映画は、そこで起きていることが、実は役作りのプロセスの一部なのだと教えてくれた。セリフを覚えて、それを口にするだけでは足りない。自分の心身が壊れそうになっていた時の内面的な動きも、実は演技のプロセスの一部だった。それをこの映画が示してくれた」

新作の役作りで悩み中――名作を再鑑賞して得た気づき

エロルディによると、今回のイベントに備えて『オープニング・ナイト』を再度観たところ、「初めて鑑賞した時と同じ思いが蘇った」と語る。エロルディは間もなく新作映画の撮影に入る予定で、役作りに頭を悩ませているという。その新作はアリ・アスター監督の『スケープゴート(原題:Scapegoat)』で、エロルディはスカーレット・ヨハンソン、ジュード・ロウらと共演する。

「今、次の映画の準備をしているが、床に身を投げ出して、いっそウォッカをたっぷり飲むべきなのか、窓を叩き割るべきなのか、この境地にたどり着くには何をすればいいのかと考え込んでいる」

「10本以上の映画に出演してきた今、改めて『オープニング・ナイト』を観ると、創作のプロセスと、その意味について再び考えさせられる。自分が役を探していることに気づかないまま、役を探していることがあるんだ。それは、つま先や膝、胸のあたりから始まる。だからこそ、この映画を選んだ。観るたびに、『自分は正気を失っているわけではなく、長い歴史を持つ映画作りの流れの一部なのだ』と感じられるからね」

一方で、エロルディは、体を激しく動かしたり、酔った状態で演じたりするローランズの演技について、「いったいどのように実現したのか、まったく見当がつかない」と語り、会場の笑いを誘った。

「あれほどの演技をしながら、大げさに見えないのはなぜなのか、僕には分からない。彼女の演技はすべてが非常にダイナミックで、表情も豊かなのに、その内側には揺るぎない真実がある。あのシーンは何度も観たよ。目が回るまでぐるぐる回ったり、実際に酔っ払ったり、他にもいろいろなことができる。でも、彼女がどうやっているのかは何一つ分からない。彼女は天才だ」

『ANORA アノーラ』ショーン・ベイカー監督、インディペンデント映画の巨匠を絶賛

続いて、『ANORA アノーラ』(2024年)で知られるベイカー監督が、カサヴェテス監督の作品群や、彼自身から受けた影響について語った。

『ANORA アノーラ』
『ANORA アノーラ』 写真:NEON

「インディペンデント映画の監督をしていると、『カサヴェテスの作品でいちばん好きなのはどれですか?』とよく聞かれる。しかし、その答えはその日によって変わるんだ。どれも傑作だからね。彼の作品は非常に個人的で、誰もが経験するような普遍的な問題や葛藤を扱っている。だから、自分が人生のどの段階にいるかによって、惹かれる作品も変わってくる」

「以前は『ハズバンズ』(1970年)と答えていた。男同士の関係を描いた映画として、自分にぴったりだったからね。その後、ジャンル映画を探求し始めた頃は、『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』(1976年)に惹かれた」

さらに、俳優と仕事をする機会が増え、映画監督としての技術を磨いていくと、『こわれゆく女』(1974年)や『オープニング・ナイト』に関心を惹かれるようになったという。

「カサヴェテスについてなら、いつまででも語れる。彼は事実上、アメリカのインディペンデント映画のゴッドファーザーだ。さまざまな意味で、映画をどう作るべきかを私たちに示してくれた人物だ」

最後にモーガンは、「カサヴェテスが挑み続けた数々のリスクから、どのような刺激を受けているか?」と2人に尋ねた。

ベイカー監督は、「すべてのアーティストは、リスクを取るべきだ。カサヴェテスは、キャリアを通じてずっとそうしてきた。その過程では、当時の人々を傷つけることもあっただろう」と答えた。

「彼は常に時代を先取りしていた。しかしそれは、優れた作品は必ず世に認められるという、非常に重要なことを証明している。50年経った今、私たちはこうして彼の映画について語り、称賛している。それこそが、リスクを恐れず、自分自身に正直に、妥協することなく作品を作ることに価値があるという証拠だ」

この言葉に、会場からは大きな拍手が送られた。

エロルディは、カサヴェテス監督がかつて語ったとされる言葉を引用し、こう締めくくった。

「(カサヴェテス監督は)『スタジオシステムの一員になって、家賃を払い、家族を養う暮らしが安定したら、どんなにいいだろう。でも、どうしてもできない』と言った。僕がこうした(インディペンデント)映画の最も好きなところは、そこにある。彼には、他に語るべき物語がなかった。そうしなければ、あまりにも激しい怒りや苦しみに駆られてしまうからだ。彼には、ほかのやり方で映画を作ることができなかったのだと思う」

「今の映画界にはそういう、否定しようのないもの、何としてもやらずにはいられないものがもっと必要だ。たとえ破産しても、飢えても、疲れ果てても、仕事を失っても、自分が作らなければならない映画を作るしかない。それこそが、僕たちのやっていることだ」

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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