2025年のアニメ映画を総括!キーワードは「多様化・グローバル化」|日本・韓国アニメが世界で注目
アニメーション映画では、ストーリーと同様にその制作手法も重視される。今年は大手スタジオのCGI作品からヨーロッパの手描きアニメ、大人向け作品まで、世界各地で多彩なスタイルの作品が評価されている。
大手スタジオのヒット、配信アニメの台頭
先週末に北米などで公開されたディズニーの『ズートピア2』は、全世界で5億5,600万ドル(約865億3,600万円)という驚異的なオープニング興行成績を叩き出した。

その一方、大手スタジオの作品でも、必ずしもヒットするというわけではない。ピクサー・アニメーション・スタジオの『星つなぎのエリオ』は、同スタジオの卓越した技術を活かした作品にもかかわらず、興行成績は伸び悩んだ。
さらに注目すべきは、配信限定のアニメーション作品だ。Netflixで配信された『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』は、Netflixアニメーション映画で初の興行的大ヒット作となった。ハリウッド流のCGIと、韓国特有の神話やストーリー展開を融合させた同作は、第98回アカデミー賞長編アニメーション部門の受賞有力候補と言われている。

アレックス・ウー監督によるピクサー風CGI長編映画『イン・ユア・ドリームズ:願いがかなうなら』も着実に人気を集めている。
世界で多様化するアニメーション表現——アジア・アニメが脚光を浴びる
この流れは、従来の「テレビで放送されカルト的人気を集めるジャンル」ではなく、「主流の映画ジャンル」へと、アニメーションの立場が移行していることを示す。
ソニーグループ傘下のCrunchyroll(クランチロール)が配給する『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』は全世界興行収入7億5,000万ドル(約1,167億4,400万円)に上り、現在も記録更新中だ。同じく日本のアニメーション映画『チェンソーマン レゼ篇』も全世界興収1億7,500万ドル(約272億4,000万円)を突破した。

『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』と『チェンソーマン レゼ篇』は、古くからの手法である2Dアニメーションと、デジタル生成の3DCGを組み合わせている。この2作はいずれもアメリカではR指定(※日本ではPG12指定)で、完全に大人向け作品と言える。

これらの作品は『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』と並び、日本と韓国のアニメ作品を賞レースの話題の中心へ押し上げた。アレックス・ウー監督は次のように語っている。
「若年層の観客は、アニメーションを子ども向けコンテンツとは考えていません。この世代は、大人向けの表現や感動的、暴力的な表現など、アニメにはどんな表現もあり得ると知っています。欧米ではこうした変化は遅れていますが、確実に変わりつつあります」
ヨーロッパで根強い手描きアニメ人気
ヨーロッパに目を向けると、依然として手描きアニメーションが人気を保っている。特にフランスのアニメーターたちは、CGにある種の抵抗感を持っているようだ。
フランス人イラストレーターであるウーゴ・ビアンヴニュの長編監督デビュー作『アルコ(原題:Arco)』は、日本のスタジオジブリやフランス語圏のマンガであるバンド・デシネ、1970年代アニメから影響を受けた、シンプルなグラフィックの2Dスタイルを採用している。

マイリス・ヴァラードとリアン=チョー・ハンが監督を務める『アメリと雨の物語』は、子どもの視点から見た自然界を手描きの構図で表現するという、より印象的なアプローチを採っている。ハン監督は「輪郭線を使わずに描くのが好きで、こうするとキャラクターが背景に溶け込みます。この手法は子どもを描く物語にぴったりです」と説明した。
シルヴァン・ショメ監督、ソニー・ピクチャーズ・クラシックス配給による『A Magnificent Life(英題)』は、フランスの作家・映画監督マルセル・パニョルの人生を描いた作品だ。手描きアニメーションでありながらCGレンダリング処理に劣らない、欧州アニメーションならではの職人技が光っている。
ショメ監督は米『ハリウッド・リポーター』のインタビューに対し、「私の仕事は1950年代にウォルト・ディズニーがやっていたこととあまり変わっていません。デジタル環境で作業していますが、ツールがデジタルになっただけで、すべて手で描き、塗っています」と語った。
アニメ賞レースも変化、さらに多様化するか
今年のアニメーション映画市場を見ると、日本の『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』と中国の『ナタ 魔童の大暴れ』が世界で大ヒットするなど、アメリカ以外の作品が興行的に台頭した。世界にアニメ文化が浸透すると同時に、各地域のスタイルを反映した作品が受け入れられ、アニメーション大作のあり方の変化が改めて明らかとなった。
一方で、アニメーション映画の主流は依然として3DCG作品だ。アカデミー賞長編アニメーション賞の歴代受賞作品24本のうち、18本は3DCGで制作されている。しかし直近3年の受賞作品を見ると、この流れも変わりつつあることが分かる。
ギレルモ・デル・トロ監督の『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』(2022年)はストップモーション・アニメ、宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』(2023年)は手描きアニメである。そしてギンツ・ジルバロディス監督の『Flow』(2024年)は、全編が無料のオープンソース・ソフトで制作された低予算3D作品だ。

ハリウッドの大作を抑えて、こうした作品がアカデミー賞を受賞するようになった。これは同賞が単純な「美学」に囚われず、革新性や多様性をますます受け入れていることを意味する。
※為替レートは2025年12月2日時点の数値で換算しています。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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