ゴールデングローブ賞の司会者がスキャンダルを揶揄「黒人だから、選ばれたんだ」
先日開催された第80回ゴールデングローブ賞の司会者でコメディアン、ジェロッド・カーマイケルがオープニングでアワードにまつわるスキャンダルを痛烈に揶揄。“騒動明け初”となった授賞式のオープニング・モノローグの内容は、なぜ司会の仕事を受けたか?という説明に徹した。
「私がなぜここに立っているかって? 黒人だから。このゴールデングローブ賞っていうのは、去年テレビ放送を中止された。というのも、主催のハリウッド外国人映画記者協会(=HFPA)には、ジョージ・フロイド(BLM運動のきっかけになった事件の被害者)の死以来、黒人のメンバーが1人もいなかったらしい。今から、司会をすることになった経緯を話すよ」と初っ端からチクリ。
さらに、「家でミントティーを作っていたと思ったら、今度は渦中の団体の“黒人の顔”になってくれと頼まれる。マジで人生はどんどん進んでいく。正直言って、複雑だ。最高の機会には感謝するけど、選んだ理由は私が黒人だからじゃないか? ってね。そしたら、スティーヴン(賞をプロデュースするMRCの重役)が『君を選んだのは才能があって、魅力があるからだ』と言った。でも、黒人のスティーヴンに何が分かる?」と自身の葛藤を吐露した。
「だから、道徳的・人種的なジレンマに陥った時にいつもやっていることをした。地元の友人のエイヴリーに電話したんだ。どうすればいい?と尋ねたら、『あなたを誇りに思う』と言ってくれた。HFPAのスキャンダルについて伝えると、『で、あなたはいくら貰えるの?』と聞いてくるんだ。これはお金の問題じゃなくてモラルの問題だ、と私が返すと、エイヴリーは『ギャラはいくらなの?』って。5,000万くらいと言うと、『ねえ、もし良いスーツを着て、白人たちのお金を受け取らないつもりなら…』とエイヴリーに言われた。その瞬間まで、私は自分自身の出自を忘れていたんだと思う。私たち黒人は、“お金をつかみ取っていく”という厳格なマインドで生きてるってね」
「自分の決断が誇らしかった。HFPAの社長のヘレンがマンツーマンで会いたがってる、と知らされるまでは。3度目の嫌な予感がした。ヘレンは団体がいかに心を入れ替えたか、熱弁をふるうつもりだったんだろう。でも、耳を傾ける必要はない。だって、団体がまったく進化していないと分かっていながら、この仕事を受けたから」
そして、「団体には黒人の新メンバーが6人入ったらしい。まあ、おめでとう。本当の意味で、今ここに立っている理由を言います。目の前には、私が敬愛し、憧れ、嫉妬さえ覚えるくらいの素晴らしいアーティストの方々がいらっしゃいます。HFPAの過去がどうであれ、今宵は祝いの夜です。この業界は、今日のような夜に値します。皆さんがここにいらっしゃって、幸せです。ぜひ、今夜楽しんでください」と締めくくった。
HFPAは、多様性に富んだメンバーの追加、選考条件の変更、倫理行動規範の厳格化など複数の改革を実施した。
※モノローグの内容は、抄訳・要約です。翻訳/和田 萌