カンヌ国際映画祭 2023: 遂に開幕!主演最新作『Jeanne du Barry(原題)』上映後のスタンディングオベーションにジョニー・デップが感涙
16日夜、第76回カンヌ国際映画祭が開幕。ジョニー・デップが登場し、主演作『Jeanne du Barry(原題)』がオープニング上映された。以前より同作は、デップとマイウェン監督を取り巻く疑惑が原因となり、映画祭のラインナップに追加されたことが物議を醸していた。当日もSNS上で議論が繰り広げられ、今年のレッドカーペットはより一層注目を集めた。
デップは撫で付けた髪をポニーテールにまとめ、サングラス姿でファンの前に登場。そして5分以上にわたり、サインや写真といったファンサービスに応じた。カーペットを歩くのは2021年のローマ国際映画祭以来で、元妻アンバー・ハードとの泥沼離婚や裁判を経たデップは今回表舞台へのカムバックを果たした。騒動後初となる大舞台で、デップは大勢のファンに温かく迎えられた。
2011年に『パリ警視庁:未成年保護部隊』でカンヌの審査員賞を獲得したマイウェン監督は、ジャーナリストのエドウィー・プレネル氏に対する暴行疑惑で渦中にあった。奇しくもプレネル氏は、マイウェン監督の元夫リュック・ベッソンの性的虐待疑惑に関する報道を担当していたという。先週出演したテレビ番組で、マイウェン監督は自身の暴行疑惑を認めるに至った。
一方レッドカーペットのインタビューで、デップはマイウェン監督の手腕を称賛。作品の製作を通して監督は「つねにビジョンが一貫していた」とし、さらに「とても素晴らしい人です。現場での仕事ぶりも目を見張るものでした」と評価した。
オープニング作品『Jeanne du Barry(原題)』のデップ、マイウェン監督とキャスト陣は、ザ・クラッシュの「ステイ・オア・ゴー」が流れるなか、カンヌのカーペットに降り立った。
オープニングを飾った『Jeanne du Barry(原題)』は、この日フランスの映画館で公開された。米The Hollywood Reporterは、フェミニストのフランス人女性たちが会場や映画館の外で配布していたチラシを入手。その紙にはデップのDV疑惑などについての記述があり、業界に対し権力における力関係を捨て去るように要求している。
「世界で最も名誉ある映画祭が、群衆に向けて手を振る加害者とともに幕を開けるなんて…明らかに致命的なメッセージを発信してしまってる。2023年現在、被害者や支持者の声はかき消され続けています。映画は、私たちが大切にしているアイデアや価値観を守るものです。それが物語の中だけでなく、映画づくりや上映方法にも受け継がれることを求めます」
劇場入りしたデップとキャスト陣は、観客にスタンディングオベーションで迎えられた。上映後、劇場は再びスタンディングオベーションに包まれ、デップとマイウェン監督は感涙。監督は、同作の製作にあたって資金調達に苦労したことを明かし、支援者に感謝を述べた。
また同日、これまでの功績を称え、マイケル・ダグラスに名誉パルムドールが贈られた。ダグラスは妻キャサリン・ゼタ=ジョーンズと娘ケーリーとともに出席。ユマ・サーマンに映画界に多大な影響をもたらした“重鎮”として紹介され、数十年以上にわたるキャリアを通して出演してきた『ウォール・ストリート』や『危険な情事』といった数々の代表作の映像が流された。
御年78歳のダグラスは、壇上でカンヌ映画祭よりも2歳年上だとジョーク。その後、55年間のキャリアを振り返り「どうしてこんなに続けることができたのか」と思いを巡らせると、「唯一無二のカンヌ。40年以上、この映画祭には素晴らしい思い出があります」と語り始めた。
ダグラスは自身のキャリアの土台を築いた人物として、カール・マルデンや亡き父のカーク・ダグラスの名を挙げた。また、スピーチではベンジャミン・フランクリンを演じる最新作『Franklin(原題)』の撮影のため、8か月間フランスに滞在したことを明かした。ダグラスがカンヌとフランスに感謝を捧げると、カトリーヌ・ドヌーヴが壇上に登場し、今年のカンヌ映画祭の開幕を公式に宣言した。
オープニングセレモニーには、世界各国の俳優や製作者が集結。ヘレン・ミレンをはじめ、エル・ファニング、マッツ・ミケルセン、ナオミ・キャンベル、ポム・クレメンティエフ、ファン・ビンビン、グザヴィエ・ドランらが会場に駆け付けた。
さらに、今年の映画祭で審査員長を務めるリューベン・オストルンド監督を筆頭に、ブリー・ラーソン、ポール・ダノ、ジュリア・デュクルノー監督、ルンガーノ・ニョニ監督、ドゥニ・メノーシェ、ダミアン・ジフロン監督、アティク・ラヒミ監督、そしてマリヤム・トゥザニ監督ら審査員団がカーペットを歩いた。
“ある視点部門”で審査員長を務めるジョン・C・ライリーをはじめ、ダヴィ・シュー、アリス・ウィンクール、パウラ・ベーア、エミリー・ドゥケンヌら同部門の審査員団も登場した。
審査員団の記者会見で、米Varietyからラーソンに“『Jeanne du Barry(原題)』を鑑賞するか?”という質問が飛んだ。ラーソンは性的暴行の被害者たちの支持者としても知られ、“Time’s Up”の諮問委員会ではメンバーとして活動。そして質問に対し、ラーソンは「もし私が観ることになれば、それはその時に分かるでしょう。観たら何を感じるかは、今は分かりません」と答えた。
15日、開幕に先立って行われた記者会見で、映画祭のディレクターを務めるティエリー・フレモー氏は「自分の人生のなかでルールはたった1つ。法が許す範囲での思想の自由、言論・行動の自由です。もしジョニー・デップや『Jeanne du Barry(原題)』が映画界から締め出されていたのなら、今ここで私たちが話をすることもなかったでしょう」と語り、デップに関する報道などは気にしていないとした。さらに「関心があるのは、あくまでも俳優としてのジョニー・デップです」と続けた。
※今記事は要約・抄訳です。オリジナル記事はこちら。翻訳/和田 萌