「PFFアワード2024」グランプリは川島佑喜監督のドキュメンタリー『I AM NOT INVISIBLE』
若手映画作家の登竜門とされる第46回ぴあフィルムフェスティバルのコンペティション部門「PFFアワード2024」の表彰式が20日、都内のホテルで行われ、川島佑喜監督の『I AM NOT INVISIBLE』がグランプリに輝いた。
川島監督は武蔵野美術大学映像学科在学中の21歳。『I AM NOT INVISIBLE』は、フィリピン人の祖母に依頼し同国のスラムでたくましく生きる人々を取材。さらに、自らにカメラを向け、恵まれている環境にいながら何もできない自身の思いをさらけ出すドキュメンタリーだ。
「映画を見ている間だけ社会や現実、自分自身のつらいことやイヤなこと、許せないところを忘れることができました。そういうものから逃げる先として映画に救われてきたのですが、今作で初めて逃げるのではなく立ち向かっていく術というものを見つけたと思っています」と感激の面持ち。「これからもたくさんいろいろなことを考え続けて、答えが出ないかもしれないし、答えがあるかないかもしれないことについて、ずっと考え続けていきたいと思っています。精進して参ります」と意欲を語った。
準グランプリは、稲川悠司監督の『秋の風吹く』が受賞。実写とアニメ7本の短編で構成されるオムニバスで、「半ばやけっぱちで作りました。独りで作るのはもうイヤなので、お金(副賞20万円)が入ったから、今度はSF超大作を作ります」とスピーチし、会場の笑いを誘った。
そのほか、審査員特別賞はKako Annika Esashi監督の『END of DINOSAURS』、林真子監督の『これらが全てFantasyだったあの頃。』、畔柳太陽監督の『松坂さん』の3作品。エンタテインメント(ホリプロ)賞は遠藤愛海監督の『さよならピーチ』、映画ファン賞は白岩周也、福留莉玖監督の『ちあきの変拍子』、観客賞は山田遊監督の『あなたの代わりのあなた展』にそれぞれ贈られた。各受賞者には、PFFスカラシップへの挑戦権が与えられる。
今年は692本の応募の中から19本がコンペに入選。応募者の年齢は9~80歳、上映時間も1~172分と幅広く、入選作のうち12本が女性監督だった。
審査員を務めた俳優の仲野太賀は、「それぞれ個性が強くて、映画に対する情熱と愛と、なんとかして自分の表現を貫き通したいという気持ちを感じて、見ているだけでパワーをもらえる作品ばかりでした。表彰式で監督さんたちのキラキラした表情を見ていると、やっぱり映画って素敵だなと改めて思いました。いつか、どこかの映画の現場でご一緒できることを楽しみにしています」と講評。同じく審査員の𠮷田恵輔監督も、「映画を作り続けていけば、きっかけはやってくるかもしれない。いろいろなストレスがあって、時には映画を嫌いになることもあるし、鬱々(うつうつ)とすることもある。それでも、やる価値があると思う瞬間がいっぱいあります。100辛くて、1幸せの、1の力がとんでもなくデカい。どうか今の才能を手放さず、走り続けてもらえたら幸いです」と、後輩たちにエールを送った。
取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴木元
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