アマンダ・セイフライドがゴールデングローブにノミネート、来夏日本公開『アン・リー/はじまりの物語』を米レビューとともに紹介

『アン・リー/はじまりの物語』
『アン・リー/はじまりの物語』 ©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
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歴史が描き出す衝撃の実話が、ついに日本上陸へ──。

ヴェネチア国際映画祭で史上最長クラスとなる約15分のスタンディングオベーションを受け、賞レースで早くも熱い視線を集める話題作『The Testament of Ann Lee』が、邦題『アン・リー/はじまりの物語』として2026年初夏に日本公開されることが決定した。さらに、本作で主演を務めたアマンダ・セイフライドが、第83回ゴールデングローブ賞(2026年)主演女優賞(ミュージカル/コメディ部門)にノミネートされた。

2025年9月1日、第82回ヴェネツィア国際映画祭での邦題『アン・リー/はじまりの物語』プレミアにて
2025年9月1日、第82回ヴェネツィア国際映画祭での邦題『アン・リー/はじまりの物語』プレミアにて 写真:ANDREAS RENTZ/GETTY IMAGES

ヴェネチアでの熱狂:演技とミュージカル表現が世界を揺さぶる

本作は、18世紀に実在した宗教指導者アン・リーの波乱に満ちた生涯を、ミュージカル的手法を大胆に取り入れて描き出した歴史劇だ。初お披露目となったヴェネチアでは、観客・批評家ともに熱烈な反応を呼び、主演のアマンダ・セイフライドは涙ながらに称賛を受けた。現地報道は本作を“圧倒的なパフォーマンスと映像美を備えた一作”と評している。

物語と演出の核――“はじまり”を歌い、踊る伝説

物語は、イギリスの鍛冶職人の家庭に生まれたアンが幼い子を次々と失う悲劇を経て「自らこそキリストの女性的化身である」という啓示を得るところから始まる。性別や人種の平等を唱え、わずかな信徒とともにアメリカに渡り、シェーカー教団(Shakers)の理想郷を築こうとする彼女の信念と受難を、歌唱・ダンスを交えて表現する本作は、“信仰のエクスタシー”と“共同体の現実”を映像的に結実させる挑戦作だ。監督はモナ・ファストヴォールド、共同脚本・製作にブラディ・コーベットが名を連ねる。演出面では、ダニエル・ブルームバーグの音楽とセリア・ローソン=ホールの振付がミュージカルシーンの中核を成す。

圧巻のキャストと制作陣

主演のアマンダ・セイフライドは、本作で“優しさと狂気”を併せ持つ複雑な内面を体現。共演にはルイス・プルマントーマシン・マッケンジークリストファー・アボットら実力派が揃う。製作はアカデミー賞受賞作『ブルータリスト』の主要メンバーが再結集しており、フィルム撮影による荘厳で深みのある映像表現が特徴だ。ヴェネチアや各国の批評では、音楽・振付・撮影を含めた総合的な芸術性が高く評価されている。

映画『アン・リー/はじまりの物語』撮影現場にて、モナ・ファストヴォールドとアマンダ・セイフライド
映画『アン・リー/はじまりの物語』撮影現場にて、モナ・ファストヴォールドとアマンダ・セイフライド 写真:COURTESY OF SEARCHLIGHT PICTURES

ゴールデングローブの評価と賞レースの行方

第83回ゴールデングローブ賞のノミネート発表で、アマンダ・セイフライドは主演女優賞(ミュージカル/コメディ部門)に名を連ねた。ヴェネチアでの熱烈な受容と批評家の高評価を受け、アカデミー賞に向けた評価も高まる“受賞候補”として期待が高まっている。授賞式は現地時間2026年1月11日に執り行われる予定だ。

2025年9月1日、第82回ヴェネツィア国際映画祭にて、ジュリア・ロバーツの衣装を借り受けたことでも話題になった
2025年9月1日、第82回ヴェネツィア国際映画祭にて、ジュリア・ロバーツの衣装を借り受けたことでも話題になった
写真:ANDREAS RENTZ/GETTY IMAGES

米『ハリウッド・リポーター』レビュー

アマンダ・セイフライドが魅せる“狂喜と献身”──モナ・ファストヴォルドが描く圧巻のスピリチュアル・エピック

モナ・ファストヴォールド監督の最新作『アン・リー/はじまりの物語』は、18世紀に実在した宗教指導者アン・リーの生涯を大胆に再解釈したスピリチュアル大作。構想から演出、音楽まで一貫した美学で貫かれた本作は、鑑賞者を宗教的恍惚と共同体の熱気へと没入させる。主演のアマンダ・セイフライドは、激しい祈り、揺らぎ、歓喜を全身で表現し、アン・リーという謎多き人物に強烈な生命力を吹き込んでいる。

本作最大の魅力は、シェーカー教徒の祈りや讃美歌を現代的に構築した音楽性と身体表現のダイナミズムだ。作曲家ダニエル・ブルームバーグによるスピリチュアルな楽曲が、登場人物たちの祈りや躍動と呼応し、観客を儀式の中心へと誘う。特に、神への献身を身体的な恍惚として表すシーンは圧巻で、2時間を超える物語を力強く牽引する。

アマンダ・セイフライド主演、『アン・リー/はじまりの物語』より
アマンダ・セイフライド主演、『アン・リー/はじまりの物語』より 写真:COURTESY OF SEARCHLIGHT PICTURES

ストーリーは、労働者階級の少女アンが霊的ビジョンを抱きながら成長し、やがて「第二の救世主」と信じられる存在になっていく軌跡を追う。信仰と共同体への献身、性やジェンダーを超えた平等思想など、シャーカー教の革新的精神をファストヴォルド監督は繊細かつ敬意をもって描写する。歴史的資料が乏しい人物ながら、セイフライドの演技がアンの情熱と信念を確かな説得力で示す。

また、ルイス・プルマン、トマシン・マッケンジー、クリストファー・アボットら実力派キャストが物語に厚みを加え、共同体としての人間ドラマを豊かに支えている。ハンガリーで撮影されたセットは細部に至るまで緻密で、18世紀の世界を再現した映像美も見どころだ。

壮大なテーマを扱いながら、信仰心そのものを押しつけることはない。むしろ、「共同体の理想とは何か」「人は何を拠り所に生きるのか」という普遍的な問いを静かに投げかける。商業性よりも表現を優先した大胆な作品であり、芸術映画として強い存在感を放つ一作となっている。

公開情報・作品データ

  • 邦題:『アン・リー/はじまりの物語』
  • 原題:The Testament of Ann Lee
  • 監督/脚本/製作: モナ・ファストヴォールド
  • 脚本/製作: ブラディ・コーベット
  • 音楽: ダニエル・ブルームバーグ
  • 出演: アマンダ・セイフライド、ルイス・プルマン、トーマシン・マッケンジー ほか
  • 配給: ウォルト・ディズニー・ジャパン
  • 日本公開:2026年初夏予定

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