ストライキ中の脚本家たちがピケ開始でスタジオを非難「初日に決意を固めなきゃいけないなんて、本当にばかげてる」

ケネス・リン、ジェニー・ルメット、アレックス・カーツマン、デイモン・リンデロフがアマゾン・スタジオの外でピケを張る 写真: ©Mia Galuppo for THR

火曜日の午後、ロサンゼルスのあちこちで自動車のクラクションが鳴り響く。しかし、それはいつもの理由からではない。

これは、少なくとも10カ所のテレビおよび映画スタジオのオフィスの外で、太平洋標準時の午後1時前に結成されたピケラインを支持する反応であり、WGA(全米脚本家組合)とAMPTP(全米映画テレビ製作者協会)との協議が決裂した月曜日の夜に宣言された、脚本家ストライキの最初の動きであった。

数百人の脚本家や同調者が組合指定の場所に集まり、3月に始まった契約協議が今のところ実を結んでいないことについて、Amazon、Netflix、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー、Fox、Disney、Sony、NBCユニバーサル、Paramountを非難。ブレット・ゴールドスタインは、バーバンクにあるワーナー・ブラザーズの敷地の外で、「そろそろ脚本家に正当な賃金が支払われるべきだと思う」と話した。脚本家であり『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』に出演した俳優でもあるゴールドスタインは、群衆の中に紛れる有名人の1人で、執筆業務停止の呼びかけが公式に行われた際は、Apple TV+のコメディ『シュリンキング:悩めるセラピスト』のシーズン2に取り組んでいたという。「こうした作品がすべて脚本家によって作られているのに、ただ本当に生きるために苦労している作家がいることを残念に感じる。本当におかしいことだよ。」

利益の分配を求める声は、ピケラインで話を聞いたほぼすべての作家から上がっていた。月曜日の深夜の書面によると、組合が具体的に争点としているのは、視聴率に基づく支払い、AI(人工知能)の使用に関する規制、ライターズルームへの最低限の人員配置だ。いくつかの分野では妥協が成立していたが、組合の交渉担当者によれば、それでは十分ではなかったという。交渉委員会の共同議長であるデイヴィッド・グッドマンは月曜日にこう語った。「今夜、彼らが取引する気が本当になかったのが明白になった。つまり実際、これは企業側の決定であって、私たちが決断を下したのではない。」

サンセットストリップにあるNetflixのオフィスの外ではストライキ参加者たちが、「ヘイ、ヘイ、ホー、ホー」の掛け声とともに「企業の強欲さ」を非難し、センチュリーシティーのFoxの敷地内では、多くのストライキ参加者がルパート・マードックに怒りを集中させた(ボードに注目)。フォックス・コーポレーションの創業者兼会長であるルパート・マードックの純資産は、現在180億ドル弱と推定される。

脚本家のストライキということで、ピケのボードには個人的な意見と皮肉がたくさん書かれているのが見受けられた。“ページが欲しいのか?それならもっといい賃金をよこせ(You want pages? Give us better wages)”と書かれたものもあれば、“ノートを取れ(Take the note)”とだけ書かれたものもある。『スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド』のショーランナー、ジェニー・ルメットは、カルバーシティのAmazonスタジオの外でピケを行い、“ナイス テスラ!(どういたしまして…)(Nice Tesla! (You’re welcome…) )」と書かれたものを持っていた。中には、具体的な要望が書かれているボードもあった。『Wyatt Cenac’s Problem Areas』の脚本家であるクリス・ダフィーは、自身の脚本におけるAIの問題をボードに書いた。脚本における実用的なAI規制を約束する代わりに、“テクノロジーの進歩を議論する年次会議”を開催するというスタジオの提案をあざ笑ったようだ。

『Adam Ruins Everything』の脚本家で主演も務めるアダム・コノバーは、CNN(自身のネットワークのひとつ)でワーナー・ブラザース・ディスカバリーのCEO、デイビット・ザスラフの給与についてコメントした後、その日のうちにNetflix外のピケラインに乗り込んで、「AIは私たちの代わりにはなれないし、ならない。ただしテクノロジーの幻想は、私たちの価値と給料を下げるために使われるだろう。」と話した。

しかし多くにとって、すべてはお金に帰結する。俳優のフィル・ラマールは、新しくWGAの一員になったばかりで、NBCのシットコムに携わっているが、脚本家の報酬とスタジオの利益との間の格差を嘆く。「これらすべての企業は、会社の一部利益に反して、従業員から重点を移して私たち全員を機械の歯車のように扱っているんだ。昔スタジオのトップが一人だった頃は、トップが気にすることと言えばスタジオがどう見られるかとか、スタジオが何を製作するかだった。今のトップが唯一気にしていることなんて、“今日の株価”だよ。」

BETの『ファースト・ワイフ・クラブ』や『アメリカン・ソウル』などで活躍する脚本家のイヴェット・フォイは、“ミニルーム”の問題について話してくれた。物議を醸す人材配置のトレンドは、一概に定義できないが、AMPTPがまだ譲らない分野の一つである。「AMPTPは、より少ない労力で働くよう求めてくる。半分の時間で2倍の仕事をしきゃいけないの。(中略)しかも給料も半分で。」

企業への非難ばかりでもなかった。「私は資本主義者だ。」と、IATSE Local 728の一員で、仲間の組合への団結を示すために参加したマイク・ストックトンは断言した。「資本主義が家族や国に与えてくれるすべてのものを私は享受している。私は自分の取り分が欲しい。だから私は組合に入ってる。」

「私は特定の要求よりも、要求のパターン全体と、この業界で脚本家の安定したキャリアを取り戻そうとしているという考えにすごく関心がある。脚本家であること、そしてそれが持続可能なキャリアであるという約束がかなり侵食されているから、私たちはそれを取り戻したいし、取り戻せると思う提案も持ってる。(中略)ビジネスの流れを乱してこの街を混乱させ、交渉の場に戻ることができるようにしたい。」と話すのは、Sonyのオーバーランドゲート前に集まった約100人のうちの1人でWGAW(西部全米脚本家組合)の役員であり、『ボージャック・ホースマン』のクリエイターであるラファエル・ボブ=ワクスバーグだ。

組合には11,000人以上の組合員がおり、IATSE(国際映画劇場労働組合)、DGA(全米監督協会)、SAG-AFTRA(全米映画俳優・テレビ・ラジオ芸能人組合)など他の組合からの支援も十分にあることを踏まえたら当然だが、場所によって混み具合は異なるものの、ストライキ初日は予想通りの盛況ぶりであった。ニューヨークでは、NBCユニバーサルのストリーミングサービス『Peacock(ピーコック)』がニューフロント・プレゼンテーションを開催した5番街の会場の外で、東海岸の脚本家たちが一区画全体を占拠して、ストライキを開始した。

業務停止に伴い、ストライキがいつまで続くかは誰にとっても気になるところだが、この質問に対する回答に、明確さや希望はほとんどなかった。

ルイジアナからロサンゼルスに移り住んだのは、単に執筆するためではなく、作家として生計を立てるためだったというフォイは、こう話す。「私はストライキに参加できるように貯金したし、これからもこうして外に立ってストライキができるように、なるべく節約して行こうと思ってる。」

WGAが2007年から2008年にかけて実施した前回のストライキは100日間に及んだ。それ以前の2回はさらに長く続いた。既に終了したFXのコメディ『You’re the Worst』を手掛けたことで知られるショーランナーのスティーブン・フォークは、15年前のストライキも経験し、今回のストライキがどう違うのか、自分なりの考えをこう話す。「前回はAMPTPももっと良い主張をしていたと思ってしまうほどだが、今回はそれがないから気にも留めてないんだろう。今朝目が覚めるまでは、そこまで腹が立ってなかった。でもWGAの提案に対するAMPTPの対応に、本当に、本当に怒りが沸いてきたよ。初日にあんな風に決意を固めなきゃいけないなんて、本当にばかげてると思うよ。」

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