北野武監督、実験的映画『Broken Rage』会見で持論「お金を払って見ても損はしない」
北野武監督が脚本・主演も兼ねたAmazon Original映画『Broken Rage』の配信記念記者会見が5日、都内のホテルで行われた。
「ネット配信というお茶の間で見る映画はどういうものか悩んで、かなり実験的にやらせてもらおうとAmazonさんに無理な相談をしたら、やっていいということになってありがたかった」という北野監督。「暴力映画とお笑いの融合」をテーマに、前半は警察に逮捕された殺し屋が生き残りを懸けて奮闘するハードボイルド、後半は同じ物語をセルフパロディで描いた。
だが、「劇場映画とテレビということはあまり意識していなくても、これだけ違うものになってしまうのか。エンタメは見る、作る環境が変わるとここまで違うものになるのかということが分かった」と説明。撮影した映像は2時間半ほどだったが、完成した作品は約60分。「家で寝転がっている感覚で編集したら、えらい短くなった」と苦笑した。
昨年のヴェネチア国際映画祭に、日本の配信作品として初めて出品。絶賛を浴びたことが伝えられたが、「恥ずかしい話だが、映画祭の島(リド島)に行く時にボートに乗ったんだけれど、頭をぶつけて帰るまでの記憶がない。病院に行って脳波を調べたら衝撃を受けた形跡はあった。スタッフが携帯で撮ったお客さんの写真を見せてもらったら、まあ反応は良かったのかな」と自嘲交じりに話した。
同行した共演の浅野忠信は、「Aパターン(前半)では、シリアスな今までの監督のテンションを感じていたけれど、Bパターンになるといきなりアットホームになって全く違うムードになった。僕も一緒に笑って見ていました」と解説。大森南朋も「ヴェネチアには古くからの監督のファンがいっぱいいるので、熱狂的だった」と明かした。
今後の配信の可能性については、「絵画は何千年という歴史があるが、映画はたかだか100年ちょっと。だから映画はじゃんじゃん進化すべき。そのうち全部のシーンをバラバラにして、ガラガラに入れて出てきた順番につなげても成立するかもしれない」と持論を展開。その上で、「映画が仕事になっているのは非常にうれしいこと。後付けだけれど、コメディの舞台の経験が映画につながっているとも思う。今のところ、自分が一番楽しめるエンタメ」と力強く語った。
そして、「昔の映画は、劇場に足を運んでくれるお客さんを対象にしたが、通信機器などがどんどん発達してこれからどういう方法を取るのか。過渡期に入っている中で、我々はいろいろなチャレンジをしていきたい」と意欲。その端緒となる『Broken Rage』については、「凄いとは言いませんがそんなにひどくない。お金を払って見ても損はしないと思う」と控えめながら自信をのぞかせた。
『Broken Rage』は、2月14日からPrime Videoで世界独占配信される。
取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴木元
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