第38回東京国際映画祭『恒星の向こう側』の福地桃子&河瀨直美が最優秀女優賞を受賞、日本人11年ぶり快挙
第38回東京国際映画祭のクロージングセレモニーが5日行われ、コンペティション部門の東京グランプリ(東京都知事賞)はアンマリー・ジャシル監督のパレスチナ・イギリス・フランス・デンマーク合作『パレスチナ36』に輝いた。
ジャシル監督は既に帰国していたため、「初めての日本では特別な気持ちになりました。そして、素晴らしいニュース。本当に光栄です」とビデオでメッセージ。出演俳優のワーディ・エイラブーニが代理でトロフィと東京都知事賞を受け取った。

準グランプリに当たる審査員特別賞は、リティ・パン監督のカンボジア・フランス合作『私たちは森の果実』。パン監督は「たくさんの方にお礼を言いたいが、とりわけ4年に及ぶ長い旅をサポートし続けてくれたプロデューサーのカトリーヌ・デュサールに感謝したい」と喜びをかみしめた。
日本から選出された『恒星の向こう側』の福地桃子と河瀨直美が、最優秀女優賞を同時受賞。日本人としては2014年『紙の月』の宮沢りえ以来11年ぶり5、6人目となる。
余命が分かった母親と娘の確執と絆の再生を描く物語。主演の福地は、「生まれ育った故郷での歴史ある映画祭での受賞は身の引き締まる思い。とてもうれしく思っています」と万感の表情。「主人公を見つめて追いかけ溶け合っていく時間は、決して私一人の力で乗り越えられなかった。一緒に歩んでくれた中川龍太郎監督、チーム一人一人のおかげです」と声を詰まらせた。

一方、映画監督の河瀨は「中川監督が、俳優として現場に立つ機会を設けてくれた。その現場で自身の全てを出し切れたと思う」と胸を張った。そして、「現場ではカットがかかっても娘には冷たい態度で接した。最後は彼女の重さ、温かさが作品を背負っていると感じ涙があふれた」と福地を称えた。
中国映画『春の木』は、チャン・リュル監督が最優秀監督賞、主演のワン・チュアンジュンが最優秀男優賞をダブル受賞。チャン監督は、「私個人ではなく、チーム全員に贈られた賞だ」と笑顔。ワンは「私は目立つのが怖い人間だが、(共演の)バイ・バイホーの素晴らしい演技が私を照らし出してくれた」と謙虚に語った。
また、坂下雄一郎監督の『金髪』が観客賞を受賞。10月27日からこの日までの10日間の会期で184本を上映。観客動員数は16万3009人と発表された。

【第38回東京国際映画祭の受賞作品】
▼コンペティション部門
・東京グランプリ(東京都知事賞):『パレスチナ36』(アンマリー・ジャシル監督)
・審査員特別賞:『私たちは森の果実』(リティ・パン監督)
・最優秀監督賞:アレッシオ・リゴ・デ・リーギ監督、マッテオ・ゾッピス監督『裏か表か?』
チャン・リュル監督『春の木』
・最優秀女優賞:福地桃子、河瀨直美『恒星の向こう側』
・最優秀男優賞:ワン・チュアンジュン『春の木』
・最優秀芸術貢献賞:『マザー』(テオナ・ストゥルガル・ミテブスカ監督)
・観客賞:『金髪』(坂下雄一郎監督)

▼アジアの未来部門
・作品賞:『光輪』(ノ・ヨンワン監督)

▼アジア学生映画コンファレンス
・作品賞:『フローティング』
・審査委員賞:『フローティング』『永遠とその1日』
取材/記事:The Hollywood Reporter Japan 特派員 鈴木元
【関連記事】
- 東京国際映画祭コンペ『恒星の向こう側』で“俳優”河瀨直美がアピール「命懸けでやりました」
- “ブラック校則”の意味を問う意欲作『金髪』――坂下雄一郎監督が語る、着想を得た事件と込めた思い
- 【第38回東京国際映画祭】ハリウッド・リポーターと映画協会による「アメリカン・フィルム・ナイト」開催! 平岳大がトレイルブレイザー賞を受賞、ポール・シュレイダー監督らハリウッドの重鎮が集結
- 【第38回東京国際映画祭】是枝裕和×クロエ・ジャオ監督『ハムネット』で涙「なぜ映画を撮るのかを肯定してくれた」
- 【東京国際映画祭】世界が注目した名場面を厳選|レオナルド・ディカプリオも来場
