【インタビュー】『免許返納!?』河合勇人監督が語る、舘ひろしとの撮影秘話とコメディへのこだわり
舘ひろし演じる70歳の映画スターが、免許返納をめぐる騒動に巻き込まれるノンストップドライブコメディ『免許返納⁉︎』が、6月19日より劇場公開される。
主演の舘は、1994年の映画『免許がない!』以来、32年ぶりに同じキャラクター・南条弘を演じる。南条のマネージャー・川奈舞役を西野七瀬が演じるほか、黒川想矢、南野陽子、大地真央、真矢ミキ、MEGUMI、吉田鋼太郎、宇崎竜童ら豪華キャスト陣が集結したことでも話題になっている。
順風満帆な俳優人生を歩んできた南条弘は、芸術映画で映画賞を受賞する大御所となった。しかし心の底では「アクションをやりたい」という情熱を抱えていた。そんな中、俳優仲間が起こしたバイク事故をきっかけに、南条の発言が思わぬ注目を浴びてしまう。「南条はいつ免許を返納するのか?」といった声まで上がっていく。車やバイクに乗ってまだまだアクションをやりたい南条は、70歳にして人生最大のピンチをどう切り抜けるのか…。
本作の監督を務めたのは、『俺物語!!』(2015)や『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』(2017)などを手がけた河合勇人監督。
“免許返納”という社会的テーマを、笑いと人情味を混ぜながら、ときには泣けて思いっきり楽しめるドタバタコメディとして描き出している。
この度、ハリウッド・リポーター・ジャパンは、河合勇人監督に単独インタビューを実施。
監督にとって“永遠のヒーロー”だったという舘ひろしとの撮影秘話や、『あぶない刑事』を彷彿とさせるハーレーシーンの舞台裏、そして本作に込めたこだわりや想いについて話を聞いた。
舘ひろしと作り上げた映画スターの南条弘「コメディタッチな面白さを加えた」
――本作の監督オファーを受けた際は、どのようなお気持ちでしたか。
河合勇人監督(以下、河合):『免許返納!?』というタイトルを聞いたときは、社会派でシリアスな作品になるのではと思い、少し尻込みしていました。『免許がない!』から約30年を経て、オリジナルのコメディとして作っていいとお話をいただいたので、「それなら自分にもできるかもしれない」と思ったが最初でした。
――本作はノンストップドライブコメディとなりますが、主人公の映画スター・南条弘を演じる舘ひろしさんとは、役づくりについてどのようなお話をされたのでしょうか。
河合:映画スターの南条弘というキャラクターは、舘さん本人ではないんだけど、かなり近いキャラクターです。普通の映画とは少し違う感覚がある中で、“普段の舘ひろし”よりも少しコメディタッチな面白さを加えて、南条弘という人物を作り上げていただいたと思っています。
舘さんとは本作りの段階から何回か打ち合わせをして、役作りというより全体の話をしました。

「舘ひろしがバイクに乗って、ショットガンをぶっ放すシーンが見たい」
――監督にとって、舘さんは中学時代から永遠のヒーローだそうですね。舘さんとの撮影シーンで「これだけは譲れない」演出やこだわりはありましたか。
河合:すごく緊張したんですが舘さんが和ませてくれました。本当に話しやすくて、色んなリクエストにも応えてくれたり、アドバイスもいただきました。現場でもやりやすい空気や雰囲気を作ってくれて、とても助かりました。
僕がどうしても実現したかったのは、ハーレーに乗ってショットガンをぶっ放すシーンと、舘さんの名曲「泣かないで」をカラオケで歌ってもらうことでした。
――初期段階から、監督の中では「泣かないで」を歌うシーンの構想があったのですね。
河合:オリジナルで作っていいというお話だったので、自分がやりたい要素も入れたいと思っていました。『免許返納!?』とはそこまで関係はないんですが、「これならそのシーンを入れられるな」と。
「泣かないで」を歌うシーンはセットで撮影しました。色んなアングルで何度か歌っていただいたんですが、本当にすごかったですね。
――『あぶない刑事』でお馴染みのハーレーに乗るシーンも取り入れようと考えていたそうですね。
河合:やっぱり舘さんと言えば『あぶない刑事』でバイクに乗ってショットガン、というイメージがありますよね。僕だけではなくパブリックイメージとしてすごく強いと思うので、 なんとかその要素を作品に入れたかったんです。
本作では『ハーレーライダー』という昔の映画の中で登場します。やっぱり映画館に足を運ぶモチベーションとして、「舘さんがバイクに乗ってショットガンをぶっ放すシーンが見たい」と期待している方も多いと思うんです。なんとかそのシーンを無理なく取り入れたいと考えていました。

――アクションシーンを演出するうえで、こだわりの演出はあったのでしょうか。
河合:アクション映画ではないので、当初はアクションシーンを多く入れるつもりはありませんでした。ただ、舘さんから「もう少しアクションを足した方が面白いんじゃないか」というアイデアをいただいて。悪役2人組に追われるシーンでは、自分が想像していた以上に膨らんでいきました。それから、夜に車で待ち伏せされて黒川想矢くんをバイクに乗せていくシーンも、撮影を進める中でどんどん広がっていったんです。

遊び心がつまった『免許がない!』のオマージュ
――舘さんは毎朝、アイデアも出してくださっていたそうですね。
河合: 脚本作りの段階から何度も打ち合わせをしていく中で、舘さんからたくさんのアイデアをいただきました。撮影が始まってからも、どんどんアイデアが出てくる方で、セリフの“てにをは”まで、「これはどっちがいいんだろう」とずっと考えていました。撮影直前まで、どうするのがベストかを細かく話し合いましたね。
――現場でのやり取りから生まれた名シーンもあったのでは。
そうですね。直前まで「どっちのパターンがいいか」について試行錯誤しました。今思い出したんですが、冒頭でステッカーをパトカーへ投げるシーン。あれは舘さんのアイディアなんです。すごく面白い発想だなと思いましたね。舘さんのそういうこだわりは、本当にすごいですよね。
――『免許がない!』から約30年を経て、本作で再び舘さん演じる“南条弘”が登場しますが、『免許がない!』を知るファンにどのようなメッセージを届けたいと考えていましたか。
河合:舘さんから伺ったのですが、『免許がない!』は脚本を担当した森田芳光さんが舘さんへ当て書きしたオリジナルの脚本だったそうです。もちろん本作は、『免許がない!』を受けて制作した作品ではあるのですが、僕たちが新しく舘さんへ当て書きした作品として制作しています。
『免許がない!』を観たことがあるファンの方にとっては、細部に少しずつ散りばめられたオマージュも感じ取っていただけると思います。そういった意味でも、2倍楽しめる作品になっているんじゃないかな。『免許がない!』を観ていたら、さらに楽しめると思いますね。

――『免許がない!』を観ましたが、本作に散りばめられた懐かしのシーンに気付いたときは思わず心をくすぐられました。名ゼリフも登場しましたね。
河合:名ゼリフが登場するシーンでは、舘さんも監督役の方に「その言い方じゃなくて、こうです」と細かいニュアンスまで演技指導してくれました。
「シリアスではなくポジティブになれる映画に」本作に込めた思いとは
――約30年後の南条弘という人物像を作り上げるうえで、意識されたことや大切にしたことはありますか。
河合:僕にとって、南条弘というキャラクターはほとんど舘さんなんです。もちろん『免許がない!』を受けて制作しているんですが、自分の中で「これだけはやめておこう」という発想はなかったですね。
どちらかというと、「どうすればもっと面白くできるか」ということを常に考えていて、様々なアイデアを取捨選択せずに足していきました。舘さんはじめキャスト皆さんの力で、映画としてうまく落とし込んでいただけたと思っています。

――足した部分というのは、具体的にコメディの要素でしょうか。
河合:そうですね。できるだけコメディ要素をどう足していけるのか、ということを意識しました。やはり免許返納というテーマはどうしても重くなってしまうので、そこだけにフォーカスが当たらないようにしたかったんです。細かくコメディ要素を足していって、笑って楽しめる映画になればいいなと。
――免許返納というセンシティブなテーマを扱うなかで、監督も以前「舘さんの魅力と作品の熱量をどう両立させるか、正直怖かった」とお話しされていましたが、悩まれた部分もあったのではないでしょうか。
河合:免許返納という社会派のシリアスな映画を制作した方がいいと思うのですが、僕自身としては少ししんどくなってしまう感覚がありました。免許返納というテーマなんだけど、この作品を観て免許返納しようと思う人は多くいないんじゃないかなと思っています。
メッセージ性のある映画ではないというか、「免許返納してもいいかな」と思う人や、逆に「まだまだ返納しないで、ハーレーに乗っていたいし、ショットガンだってぶっ放したいんだ」と思う人がいてもいいと。
メッセージを投げかける作品ではなくて、どちらかというと人生には色々なことがあるけど、また次へ進んでいこうとポジティブになれる映画にしたかったんです。
「『免許返納⁉︎』だったっけ?」という感じで映画館を出てもらえたら嬉しいな(笑)。
西野七瀬との「漫才のような掛け合い」
――西野七瀬さんと舘さんの掛け合いが面白かったです。西野さんは南条弘のマネージャー役でしたが、2人の関係を通して、普段とは違う南条の素顔や新たな側面を描こうとしたのでしょうか。
河合:南条とマネージャーは、ある意味でバディのような関係です。だから2人の掛け合いから面白さを出すのはすごく重要でした。南条が何かを仕掛けたときに、その受けを全てマネージャーが拾っているんです。そこが崩れてしまうと笑いが成立しなくなる。
だからこそ、西野さんが絶妙なタイミングでツッコみをしてくださったことで、すごく良い掛け合いになったなと感じています。漫才のような関係性なんですよね。南条のボケとマネージャーのツッコミが非常にうまくハマって、“2人で1つ”のような一体感がありました。

河合:舘さんも細かい部分までこだわっていましたね。西野さんも最初は緊張されていて、なかなか踏み込めない部分もあったんですが、舘さんがうまく盛り上げてくれました。
2人のコンビネーションがしっかりハマることが、コメディとして重要だったので欠かせない要素でしたね。

――大地真央さんと舘さんは本作で20年ぶりの共演となりますが、撮影現場の雰囲気はいかがでしたか。
河合:東映の撮影所で撮影したシーンだったんですが、本当に“往年の大スター”という設定そのままで華やかな雰囲気でしたね。2人のやり取りも見ているだけで楽しかったです。
大地さんの役は、極妻役を演じている女優という設定で、岩下志麻さんをモデルにしたキャラクターでした。これまであまり見たことのない“大地真央さんの極妻”がすごく新鮮で、完璧に演じ切る姿を見ているだけで楽しかったですね。
物語のキーとなる絶景ロケ地での撮影秘話
――本作の冒頭とクライマックスに登場する、物語のキーとなるロケ地がとても美しくて印象的でした。
河合:僕もあんな美しい場所があるとは知らなかったんです。福島県福島市にある磐梯吾妻スカイラインという場所で、バイク好きの間では“聖地”として知られているようです。本当に壮大で美しい景色が広がっています。日本のアリゾナのような雰囲気がありましたね。

――映画と同じように、大きい橋を渡っていくとあの場所に到着するのでしょうか。
河合:そうそう、橋を渡って行くんですよ。あのロケ地に出会えていなかったら成立しなかった映画ですね。
――あまりに素敵なロケーションだったので、監督が以前からご存じで「いつか映画で使いたい」と思っていたのかと感じてました。
河合:そういうことにしといてください(笑)。全然知らない場所でした。もともとは、北海道の一本道という設定だったんですよ。周りには温泉もいっぱいあって、すごく魅力的なロケ地でしたね。
天候が不安定だったので、みぞれのような天気になったり撮影は色々と苦労しました。撮影は9月だったんですが、標高が高いので暑いというよりは寒かったですね。しかも11月になると雪で通行止めになってしまうので、それまでに撮り終えなければいけませんでした。
最高のロケーションなんですけど、撮影となると大変な場所かも(笑)。あのシーンは、実際のロケ地で撮影した部分と、セットで撮影した部分の両方があるんです。でもやっぱり、本物の景色があってこそ成立するシーンだったので、ロケーションの持つ力は大きいなと感じましたね。
――最後に、本作を楽しみにしているファンの皆さんへメッセージをお願いします。
河合:約30年前の映画『免許がない!』をご存じの方も、観たことがない方も十分楽しんでいただける作品になっています。舘さんのファンはもちろん、豪華キャストもたくさん出演しています。難しい社会派映画ではないので、気軽に楽しんでいただければ嬉しいです。
『免許返納!?』作品情報

・公開日:2026年6月19日(金)
・配給:東映
・監督:河合勇人
・脚本:林民夫
・出演:舘ひろし 西野七瀬 黒川想矢 南野陽子 八嶋智人 / 吉田鋼太郎 大地真央 / MEGUMI 真矢ミキ
吉田鋼太郎 宇崎竜童ほか
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