『見はらし世代』井川遥が語る「振り返られる映画」──カンヌ監督週間 in Tokio 2025 トークイベントレポート
12月12日よりヒューマントラストシネマ渋谷で開催中の映画祭特集「カンヌ監督週間 in Tokio 2025」にて、団塚唯我監督の長編映画『見はらし世代』の上映後トークイベントが13日に行われ、出演の井川遥、団塚唯我監督、そして「監督週間(Quinzaine des Cinéastes)」のアーティスティック・ディレクターであるジュリアン・レジが登壇した。
「カンヌ監督週間 in Tokio」は、カンヌ国際映画祭《監督週間》に選出された世界最前線の作品を日本でいち早く上映する企画で、今年で3回目の開催となる。『見はらし世代』は、日本人監督として史上最年少の26歳で《監督週間》に選出された話題作だ。

「街が変わり、家族が変わる。その変化を映画にした」
上映後、満席に近い客席を前に団塚監督は、「カンヌでワールドプレミアを迎え、再びこのような形で上映できることをとても嬉しく思っています」と喜びを語った。
本作が選出された理由について、ジュリアン・レジは「父と息子の関係性を描いた物語が非常に感動的でありながら、東京という都市が美学的に捉えられ、現代の若者のあり方が描かれている点に強く惹かれた」と評価。これを受けて団塚監督は、「身近な〈家族〉を描くことから始まり、自分自身が感じてきた“東京という街が変わっていく感覚”を映画にしたかった」と制作の原点を明かした。
さらに、舞台に渋谷を選んだ理由については、「これまで、納得できる形で渋谷を描いた映画が少なかった。“人が街をつくり、街が人をつくる”という感覚をどう映像に落とし込めるかを考え続けた」と語った。

「空洞化された都市」と「空洞化された若者の心」
都市と若者の関係性について問われると、団塚監督は「明確な意思を持たず、漂流している感覚を映画に出したかった」と説明。主人公・蓮が渋谷で胡蝶蘭の配送運転手として働く姿を通して、「喪失感を抱えた若者の内面」と「スクラップ&ビルドを繰り返す都市の空虚さ」を重ね合わせたという。
これに対し井川遥は、「ただ街の風景を描くのではなく、社会的な問題と人の心の揺らぎが軽やかに描かれている」と作品を評し、「時代の流れを切り取った、いつになっても振り返られる映画」と称賛した。
また、遠藤憲一演じる父・初と、自身が演じた母・由美子の夫婦関係に触れながら、「10年前と現在で、家族や働き方の価値観が大きく変わっている。その変化を、若い世代の監督が鋭く描いている点が印象的だった」と語った。

「この街で観ることに意味がある」
イベント終盤、ジュリアン・レジが「宮下パークを望むこの場所で上映されること自体が象徴的」と語ると、団塚監督は「街を歩いたあとに映画を思い出してもらえたら嬉しい。ここでしか得られない体験を持ち帰ってほしい」と観客にメッセージを送った。
「カンヌ監督週間 in Tokio 2025」は、12月25日までヒューマントラストシネマ渋谷にて開催中。『見はらし世代』をはじめ、世界各国から集められた全12作品が上映される。

作品・イベント情報
カンヌ監督週間 in Tokio 2025
開催期間:2025年12月12日(金)~12月25日(木)
会場:ヒューマントラストシネマ渋谷
© Cannes Directors Fortnight in Tokio 2023-2025
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