石井裕也監督、池松壮亮の提案で『本心』映画化決意「今すぐに立ち向かわなければいけないテーマ」
石井裕也監督の最新作『本心』の完成披露上映会が10日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた。石井監督は主演の池松壮亮をはじめ三吉彩花、水上恒司、妻夫木聡、田中裕子とともに舞台挨拶に登壇した。
2019年『マチネの終わりに』、2022年『ある男』に続く、平野啓一郎氏の同名小説の映画化。2040年の日本を舞台に、孤独な青年が急逝した母親をAIを使ってバーチャルフィギュア(VF)で再生させ、生前に願っていた自然死の真相を探る物語。映画化のきっかけは、2020年の連載時に原作を読んでいた池松の思いだった。
「コロナ禍で人と会うのが難しい時期だったが、アフターコロナの全てが書かれているような気がした。人は暗闇からどこに向かうのか、あらゆる問題提起がされていてインパクトが強く、今を生きる私たちの物語だと思い映画にできたらなあと思った。ダメ元で石井監督に読んでくださいと提案しました」
これに石井監督は、「AIと対峙する人類の喫緊の問題であり、考えなければいけないテーマ。AIは人の知性を超えるのかばかりがフォーカスされ、人間の尊厳はどう保たれるのかは議論のテーマにすらなっていない。その不安と恐怖が小説として見事に書かれていて、映像作家として今すぐに立ち向かわなければいけないと思った」と呼応。「ここに目を付けた池松くんはさすが」と称えた。
実際の母親とVFの母親の“2役”を演じた田中は、「AIやVFのことはいまだに分かりませんが、監督のおっしゃることをそのまま受け取ってシンプルにできたらいいなと思いました」と説明。だが、「池松さんとはセリフ以外、何も話せていません。話したい気持ちはあるのですが、何を話していいか分からなくて、目が合ってもいまだにぎこちない」と話し、池松を恐縮させた。
それでも、池松は気を取り直し「問題意識を持った俳優が、それぞれのパートで責任を持って演じる姿が神々しく映っている。それぞれのベストの芝居をしています」とアピール。「堅苦しい、難しい映画ではなく、今私たちの周りにある共通トピックが入っています。迷子の青年と登場人物たちが、何を求めて生きているかを堪能してほしい」と訴えた。
石井監督も、「全く新しいエモーションを表現でき、その一方で人間の普遍的な感情が今までにない形で浮き彫りになっている」と自信たっぷり。そして、「その大きな要因は、俳優たちの芝居。芝居が何なのかいまだに研究中だが、情熱のある俳優たちが役に向き合っている姿は確実に届くと信じている」と期待した。
『本心』は、11月8日から全国で公開される。
取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴木元
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