計34件の罪状で窮地に立ったトランプ前大統領 再び政界の注目の的に

ドナルド・トランプ氏 火曜日、法廷にて 写真: ©TIMOTHY A. CLARY-POOL/GETTY IMAGES
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アメリカ前大統領として、史上初めて刑事告発されたドナルド・トランプ氏。4日、業務記録の改ざんについて全34件の罪に問われ、罪状認否の場で無罪を主張した。

トランプ氏は、手錠をかけられたり、監房に収容されるといった不名誉は免れた。さらにマグショット(=逮捕後に撮影される顔写真)も撮影されなかった。一方で、トランプ氏の偽のマグショットをプリントしたTシャツが販売されるなど、依然として“トランプ・キャンペーン”は続いた。

実はトランプ氏以外にも、逮捕された歴代アメリカ大統領は存在する。第18代米大統領のユリシーズ・S・グラントだ。1872年、グラントは馬車のスピード違反で捕まった。当時、グラントを逮捕した警察官は黒人だった。まさに歴史は繰り返す、と言えよう。

残念ながら、トランプ氏のリアリティ番組は未だに国民をザワつかせている。救いと言えば、今や犯罪ドキュメンタリーと化したことだろうか。トランプ支持者に“彼女を収監しろ!”とこき下ろされてきた、あのヒラリー・クリントンはどこかで高笑いしているはずだ。

現在、各メディアはカオス状態。まるでUFOや中国の気球のように、トランプ氏が搭乗中の飛行機を追跡した。とあるニュース局は、O・J・シンプソンのカーチェイスと同じように、トランプ氏を乗せた車列を空撮したりしている。当のシンプソン氏は、自身のSNSで「私たちの意見は無意味だ。陪審員制度に任せよう」と見解を示した。確かに、システムはO・Jの味方だった。事実、O・Jが友達なら敵は必要ない。

それに、メディアはやたらトランプ氏の“ムード(=気分)”に取り憑かれている。彼を形容するのは“楽観的”・“挑戦的”・“ショック状態”といった言葉の数々だった。

罪状認否を前に、トランプ氏は場所の変更を提案をしていた。実際に罪状認否が行われたマンハッタン区ではなく、スタテン島区を望んでいたという。というのも、超リベラルなニューヨークの中で、スタテン島は最も自身が逮捕される確率が低い区だからだ。

当日、マンハッタンの刑事裁判所の周辺には、トランプ支持者と反トランプ派が集結し一触即発。支持者で共和党のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員は10分間にわたってスピーチした。以前、グリーン議員は自身のインタビューで、トランプ氏をネルソン・マンデラやキリストといった、拘束された経験をもつ“偉大な人物たち”になぞらえていた。

一方でトランプ氏は、トランプ・タワーで一夜を過ごした後、ダウンタウンへと向かった。リムジンに乗る際に言葉を発することなく、苦々しい顔つきで群衆に拳を突き上げただけだった。声明は出さず、トランプ氏は自身の息子に向けるような残酷な視線で記者を睨み付けた。カメラマンのみが裁判所への入廷を許可され、メディア向けにリリースされた写真では、弁護士と並んで座るトランプ氏の姿が確認できる。どうやら、ファストフードの注文の横でポージングしている時ほど“ハッピー”ではなさそうだ。

公判は想像以上に長引いた。専門家は遅延の理由について、あらゆるセオリーを考えるヒマがあっただろう。そして、ようやく姿を現した後も、珍しくトランプ氏からコメントはなかった。結局トランプ氏を乗せた車列は空港へと向かい、終わりの来ないドラマにまたもやクリフハンガーを残す形となった。

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