ディズニー最新作『白雪姫』レビュー:レイチェル・ゼグラーの演技とガル・ガドットの悪役が光る実写リメイク

ディズニーのアニメーション名作の中で実写化された作品は数多くあるが、1937年の『白雪姫』ほど愛されている作品は少ない。この歴史的な作品は、ディズニーが誇る名作の宝庫への扉を開き、実写に適した数々の古典的なおとぎ話を生み出すきっかけとなった。それがやがてオリジナルストーリーの創造へとつながり、ディズニーはアニメーション界をリードする膨大なライブラリと、世界中で愛される遺産を築き上げた。
ブランドの拡張と知的財産(IP)の活用を一つのジャンルにまで発展させたディズニーの実写リメイク戦略は、ここ10年で爆発的に増加した。しかし、その出来栄えはまちまちである。デジタル技術に頼りすぎて「実写」と呼ぶのがふさわしいのか疑問な作品もあれば、古き良き時代の素朴な魅力を失ってしまった作品もある。また、アニメーションならではの唯一無二の魔法を再現するのに苦戦した作品も少なくない。
※以下、ディズニー実写映画『白雪姫』のネタバレを含みます
■騒動はあったが、作品には魅力が詰まっている
今回の実写映画『白雪姫』は、これまで公開された実写リメイク作品の『ムーラン』や『美女と野獣』、『クルエラ』と並ぶ良作であり、『ダンボ』や『ピノキオ』、『ライオン・キング』のような評価が分かれる作品とは一線を画している。
本作はあらゆる騒動が巻き起こったが、それらは映画本編には影響を与えていない。白雪姫役のレイチェル・ゼグラーが「白人らしくない」と批判され、1937年のオリジナル版を軽視する発言や政治的立場が物議を醸す形で広がった。共演者のガル・ガドットとの対立をめぐって、世間の関心を集めることとなったが、これらの背景は映画の内容に影響を与えることなく、最終的に作品のクオリティには関係しない。
マーク・ウェブ監督による本作の再構築は、エリン・クレシダ・ウィルソンの脚本を基に、「白馬の王子様を夢見るプリンセス」の物語を、父親の後を継ぐリーダーとしての勇気を見出す物語に変えている。劇中歌「夢に見る ~Waiting On A Wish~」などでそのテーマは情熱的に表現され、レイチェル・ゼグラーの演技が説得力を与えている。
唯一気になるのは、現代における多様な表現に配慮しつつ「七人の小人」をどのように描くかという点だ。CGIで描かれた小人たちの姿は少し不気味に見えるが、そのキャラクターたちとの心温まる交流が進むにつれ、視覚的な違和感はすぐに忘れられるだろう。
邪悪な女王が白雪姫を使用人として扱い、魔法の鏡から「世界で一番美しい」と告げられると、猟師に白雪姫を殺させるよう命じる。このオリジナルへのオマージュとして、鏡の中のマスクが特徴的である。ウィルソンの脚本は一般的な物語の展開を維持しつつ、王子の役を庶民のジョナサンに変え、彼が盗賊団を率いるという新たな設定が加えられている。
現代のファミリー映画に見られるように、白雪姫とジョナサンの関係は初めは対立的で、ジョナサンが王女問題を歌いながら二人は出会う。しかし、白雪姫が生きているという情報が女王に届くと、白雪姫を捕まえようとする。ジョナサンとその仲間たちは、白雪姫を守るために戦うことになる。
最終的に、白雪姫は女王と直接対決し、王国を元の姿に戻す決意を固める。善良な心が最も強力な力であることが示されるが、クライマックスの追跡劇は欠けているものの、女王の虚栄心にふさわしいドラマティックな結末が描かれている。
■ディズニーの伝統を感じる仕上がり
ガドットはその身長を大いに活かし、悪役にぴったりの姿を見せる。彼女の演技には、例えば『マレフィセント』のアンジェリーナ・ジョリーのような、少し大げさで華やかな表現を期待するかもしれないが、ガドットは力強い存在感を放ち、歌のシーンには、邪悪さを楽しんでいる様子が感じられる。
ゼグラーは歌声で観客を魅了し、美しさと強さを兼ね備えた白雪姫像を見事に演じている。彼女の歌唱力は、特に「二人ならきっと」のデュエットシーンで輝きを放ち、感動的な一幕を作り出している。
また、オリジナル映画から引き継がれた「口笛吹いて働こう」のシーンを小人たちと共に楽しく演じ、白雪姫のキャラクターにさらなる深みを与えている。その演技は、従来の白雪姫像に新たな息吹を吹き込んでいる。
「ハイ・ホー」では、小人たちが鉱山に向かう途中で歌う元気な曲で、映画の中で鉱山やその深部を描いたシーンが、まるでディズニーランドのアトラクションのような雰囲気を醸し出す。撮影監督マンディ・ウォーカー、美術監督ケイヴ・クイン、エフェクトスタッフたちが手掛けた美しい世界は、サウンドステージのセットや森林ロケーション、CG環境を見事に融合させて、穏やかな色合いの森と暗く陰鬱な宮殿を対比的に描き出している。
CGで描かれた小人たちは少し馴染むまで時間がかかるものの、全体としてはディズニーの伝統を感じさせる心温まる家族向けエンターテインメントに仕上がっている。
『白雪姫』
公開日:3月20日(木)
キャスト:レイチェル・ゼグラー、ガル・ガドット、アンドリュー・バーナップ、アンドリュー・バース・フェルドマン、タイタス・バージェス、マーティン・クレッバ、ジェイソン・クラヴィッツ、ジョージ・サラザール、ジェレミー・スウィフト、アンドリュー・グロテリューシェン、アンス・カビア
監督:マーク・ウェブ
脚本:エリン・クレシダ・ウィルソン
上映時間:1時間49分
※この記事は要約・抄訳です。オリジナル記事はこちら。
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