フィリッポウ兄弟の新作映画『Bring Her Back』レビュー:サリー・ホーキンスが喪失に苦しむ母親を熱演

映画『Bring Her Back(原題)』より、ジョナ・レン・フィリップス(写真:ngvar Kenne)
映画『Bring Her Back(原題)』より、ジョナ・レン・フィリップス(写真:ngvar Kenne)
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フィリッポウ兄弟が手掛ける2作目となる『Bring Her Back (原題)』は、喪失感が人を変える様を探る不気味な作品だ。そして、サリー・ホーキンスが悲しみに打ちひしがれた母親を演じる。彼女は亡き娘を取り戻そうと、恐ろしい行動に出ていく。

喪失と悲しみがもたらす恐怖

物語は、アンディ(ビリー・バラット)と視力障害のある妹パイパー(ソラ・ウォン)から始まる。二人は浴室で父親(ステファン・フィリップス)の遺体を発見する。この突然の喪失感から、不吉な出来事が連鎖していく。

その後、二人は元ソーシャルワーカーのローラ(サリー・ホーキンス)に引き取られる。しかし、この里親には暗い意図があった。実は、ローラは最近亡くなった盲目の娘キャシーを蘇らせようとしていたのだ。そのため、視力障害のあるパイパーを生贄に選んだのである。

また、家には不思議な少年オリバー(ジョナ・レン・フィリップス)も住んでいる。やがて、アンディはローラの恐ろしい計画に気づき始める。

フィリッポウ兄弟のホラー世界

『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』、小写真:ダニー&マイケル・フィリッポウ
(写真:A24 / Courtesy Everett Collection; Matt Winkelmeyer/Getty Images)
『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』、小写真:ダニー&マイケル・フィリッポウ
(写真:A24 / Courtesy Everett Collection; Matt Winkelmeyer/Getty Images)

フィリッポウ兄弟の長編デビュー作『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』は特異な作品だった。彼らは呪われた手の彫刻を通じて霊界と交信する若者たちを描いた。結果として、ホラー映画界に新風を吹き込むことに成功した。

そして『Bring Her Back (原題)』でも、彼らは同様のテーマを追求している。特に、悲嘆が人の精神状態をいかに変化させるかに焦点を当てている。

フィリッポウ兄弟の演出手法

本作の恐怖は、派手な驚かせ方に頼っていない。むしろ、陰鬱な雰囲気から生まれる不安感が支配的だ。

撮影監督アーロン・マクリスキーとの協働も効果的である。フィリッポウ兄弟はカメラワークを通じて恐怖を表現する。たとえば、ローラがパイパーを見つめる熱狂的な眼差しや、オリバーへの不気味な虐待シーンは巧みに捉えられている。

また、特殊効果メイクも観客の心に残る。特に、ナイフで歯茎を切り裂くシーンは強烈な印象を与える。

さらに、キャスティングも見事である。サリー・ホーキンスは喪失に苦しむ女性を見事に演じている。加えて、バラットとウォンの自然な兄妹の絆も作品の魅力を高めている。

フィリッポウ兄弟のさらなる成長

本作は『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』とほぼ同時期に執筆されたという。そのため、前作と同様の物語的な迷走も時には見られる。しかしながら、その直感的な演出スタイルは観客の心に強く残る。

興味深いことに、フィリッポウ兄弟は善悪の対比よりも深いテーマを追求している。彼らは、人が悪意ある行動に走る動機そのものに関心を持っているのだ。

また、彼らは再びサウンドデザイナーのエマ・ボルティニョンとタッグを組んだ。その結果、緊張感あふれる音響表現が実現している。

結論として、『Bring Her Back (原題)』はフィリッポウ兄弟の新たな成長を示す作品である。彼らは心理ホラーとボディーホラーを見事に融合させた。そして、人間の悲しみを深く掘り下げることに成功している。

作品情報

  • タイトル:『Bring Her Back (原題)』
  • 公開:2025年5月30日(金)
  • キャスト:ビリー・バラット、ソラ・ウォン、ジョナ・レン・フィリップス、サリー=アン・アップトン、スティーヴン・フィリップス、ミーシャ・ヘイウッド、サリー・ホーキンス
  • 監督:ダニー&マイケル・フィリッポウ
  • 脚本:ダニー・フィリッポウ、ビル・ハインツマン
  • 上映時間:1時間44分

※本記事は抄訳・要約です。オリジナル記事はこちら

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