【レビュー】劇場版『チェンソーマン レゼ篇』:予備知識なしでも楽しめる、“究極のエモ×バイオレンス”アニメ映画

劇場版『チェンソーマン レゼ篇』より
劇場版『チェンソーマン レゼ篇』より 写真:MAPPA/CHAINSAW MAN PROJECT/Tatsuki Fujimoto/SHUEISHA
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まず告白しておくと、筆者は藤本タツキによる原作漫画を読んだことがない。大ヒットしたアニメ版も未視聴だ。したがって、試写会の観客の中でおそらく唯一、完全な予備知識ゼロの状態で劇場版『チェンソーマン レゼ篇』を観ることになった。

もちろん、事前に少しは予習をした。主人公デンジ(声:戸谷菊之介)は、ヤクザに殺された少年であり、「チェンソーの悪魔」ポチタ(声:井澤詩織)の犠牲によって蘇生し、身体の一部をチェンソーに変化させる能力を得たこと。そして、「公安対魔特異4課」という悪魔を駆逐する政府機関に所属していることくらいは知っていた。また本作がR指定(※日本ではPG12指定)であることも踏まえ、当然ながら過激なバイオレンスが満載だろうと想定していた。

しかし、予想外だったのは、本作の前半が驚くほど繊細なティーンエイジャーの恋愛物語として展開することだった。

もちろん、やがてシリーズおなじみの幻想的なアクションシーンが怒涛のように登場するが、その前に描かれるのは、デンジが上司のマキマ(声:楠木ともり)と映画を観に行く場面だ。デンジは、完全にマキマに夢中である。マキマはどの作品にも辛口で、「10本に1本くらいしか良作はない」と言い放つが、やがて2人が心から感動する作品に出会い、涙を流すシーンは、デンジの恋心をいっそう強くする。

だが、デンジはまだ少年だ。その恋心は、あっという間に別の方向へと向かう。偶然出会ったカフェ店員の少女・レゼ(声:上田麗奈)に心を奪われてしまうのだ。何度か会ったのち、レゼはデンジに水泳を教えると提案する。そして、服を脱ぎ捨てて一緒に泳ごうと誘うレゼに、思春期真っ盛りのデンジは、まさにアニメキャラクターのような大げさな反応を見せる。

もっとも、ファンにとってはネタバレにもならないが、レゼの正体は単純ではない。2人のロマンスはやがて致命的な危険をはらみ、東京を巻き込む壮絶な戦いへと発展していく。

𠮷原達矢監督と脚本家・瀬古浩司が、前半をあえてじっくりと煮詰めるように描いた点は称賛に値する。アニメーション的なエロティシズムを含みつつも、その演出が、後半の怒涛のアクションをより感情的に際立たせている。デビルハンターたちはレゼとの死闘に挑む一方で、デンジは2人の愛が本物ではないという事実をなかなか受け入れられない。対するレゼは、彼の純粋さをあざ笑いながら命を狙う。

バトルシーンは、極めて凄絶で生々しい。圧倒的なアニメーション、爆音級のサウンドデザイン、そして推進力のある音楽が融合し、観客にサイケデリックな没入体験をもたらす。IMAXやプレミアムフォーマットでの上映が推奨されるのも納得だ。

原作ファンもアニメファンも、細部の違いについて議論するだろう。しかし、それを差し引いても、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』は、ファンを満足させる完成度の高い作品だと断言できる。

<劇場版『チェンソーマン レゼ篇』作品情報>

  • 公開日:2025年9月19日(金)
  • キャスト: 戸谷菊之介、上田麗奈、井澤詩織、楠木ともり、坂田将吾、ファイルーズあい、高橋花林、花江夏樹、内田夕夜、内田真礼、津田健次郎、高橋英則、赤羽根健治、乃村健次、喜多村英梨
  • 監督: 𠮷原達矢
  • 脚本: 瀬古浩司
  • 上映時間: 1時間40分/PG12指定

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌

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