ジョージ・クルーニー、新作『ジェイ・ケリー』で描くハリウッドの現実 ── AI・次世代スターへの本音トーク「SNSなんて全部やめちまえ」
俳優のジョージ・クルーニーが、ノア・バームバック監督の新作Netflix映画『ジェイ・ケリー』で主演を務め、再びアカデミー賞の有力候補として注目を集めている。クルーニーが本作で演じるのは、存在の危機に直面する老いた映画スターだ。だが、クルーニーは「本作が映画スターの物語だとはまったく思いませんでした」と語る。
クルーニーは今月、米『ハリウッド・リポーター』のポッドキャスト番組「Awards Chatter」に6年ぶりに登場した。同番組で、クルーニーは新作への想いを穏やかに、力強く語った。「本作は、仕事と人生のバランスを取ろうとしてきた、ほとんどすべての人に通じる物語のように感じたんです」

新作『ジェイ・ケリー』は名声と孤独、そして再生をテーマにしたドラマ作品だ。作品は秋の映画祭で高い評価を受け、11月21日(金)に一部劇場で公開、12月5日(金)にNetflixで配信が開始される。批評家の間では、クルーニーが本作で俳優として5度目のオスカーノミネートを果たす可能性も囁かれている。
ノア・バームバック監督は、主人公ジェイ・ケリーの役をジョージ・クルーニーのために書き下ろしたという。監督は「もし彼が断っていたら、この映画自体を作らなかった」と語っており、ジェイ・ケリーと同じくケンタッキー州出身のクルーニー自身の人生との共鳴が作品の核にある。物語には、彼の実際の過去作の映像もモンタージュで使用されており、虚構と現実が交錯する構造になっている。

クルーニーは「ケンタッキーのくだりとか、いくつかの要素は撮影中に追加されたんです。ノアは僕の人生を見ながら次々に書き足していって、僕は“ちょっと落ち着いて”と言いました」と笑う。自分の過去作が登場することについても「正直びっくりしました」と語りつつ、「気にしていないですよ」と穏やかに受け止めている。
では、クルーニーが『ジェイ・ケリー』の主人公のような孤独な道を辿らずに済んだ理由は何か。クルーニーは、「名声を得たタイミングとその過程の違いですね」と断言する。「彼(ケリー)は若くして有名になりすぎた。周りは何でも“イエス”と言う人間ばかりでした。悪人ではないけれど、無自覚なんです」と話す。クルーニー自身は33歳でブレイクを果たし、それまでに“普通の生活”を経験していたことが大きかったという。

名声を得る前、ジョージ・クルーニーはドラマ『ER 緊急救命室』で人気を博し、その後『アウト・オブ・サイト』、『スリー・キングス』といった作品に出演。続く『パーフェクト・ストーム』や『オーシャンズ11』の大ヒットで、一気に映画スターとしての地位を確立した。『シリアナ』でアカデミー賞助演男優賞を受賞し、『マイレージ、マイライフ』、『ファミリー・ツリー』では主演男優賞にノミネートされるなど、俳優としても監督としてもキャリアを重ねてきた。
クルーニーは同時に、自らのキャリアにおける「距離感」の大切さも語る。SNSが俳優の評価を左右する現状について、「SAG(全米映画俳優組合)で若い俳優たちと話す機会がありますが、みんなインスタグラムをやっています。スタジオでは、フォロワー数がキャスティングの基準になることもあるんです」と明かす。「なので、僕は俳優たちに言いました。“SNSなんて全部やめちまえ。やってなければ比較されることもない”とね」

さらに、AIの進化にも懸念を示した。「最近のAI関連の映像や投稿には、正直ゾッとします。“僕がヒトラーについて語っている”という偽の映像まで出回っているんです。でもAIも結局、ハリウッドがずっと抱えてきた問題を抱えると思います。“本物の映画スターを見つけるのは、いつの時代も難しい”ということです」
そんなクルーニーが注目する次世代のスターには、ゼンデイヤやグレン・パウエルの名が挙がる。「ゼンデイヤは本当にすごい。テレビや映画、すべての枠を超えていますね。グレン・パウエルも面白いことをやっている若手で、ユーモアも持ち合わせています。だから、まだ“ハリウッドは終わった”なんて言うつもりはありません」

最後に、クルーニーは「失敗と後悔」についてこう語った。「失敗なら受け入れられます。でも後悔は無理です。“あの道を選んでいたら、何か特別なことが起きたかもしれない”と思いながら生きることはできません」
時給3ドルでタバコ畑の手伝いをしていた少年が、いまや世界的スターとなった。その歩みを支えたのは、「安全な道ではなく、リスクのある道を選び続けてきた」という覚悟だ。クルーニーは、「僕の人生には、後悔という毒がない」と静かに言い切った。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌

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