【全ノミネート一覧】第83回ゴールデングローブ賞(2026):『ワン・バトル・アフター・アナザー』最多9部門候補に ―― 『鬼滅の刃』もノミネート、気になる今年の傾向とは…?
▼映画部門は『ワン・バトル・アフター・アナザー』がトップ、ドラマ部門は『ホワイト・ロータス』が6部門で最多
現地時間8日、2026年開催の第83回ゴールデングローブ賞のノミネーションが発表され、ポール・トーマス・アンダーソン監督×レオナルド・ディカプリオ主演の新作『ワン・バトル・アフター・アナザー』が作品賞を含む最多9部門に候補入りした。
映画部門では、『ワン・バトル・アフター・アナザー』に次いで『センチメンタル・バリュー』(ヨアキム・トリアー監督)が8部門、『罪人たち』(ライアン・クーグラー監督)が7部門、『ハムネット』(クロエ・ジャオ監督)が6部門、『フランケンシュタイン』(ギレルモ・デル・トロ監督)と『ウィキッド 永遠の約束』(ジョン・M・チュウ監督)がそれぞれ5部門で続いた。

さらにテレビ部門では、エミー賞受賞作『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル』(HBO Max)が6部門でトップに。続いて『アドレセンス』(Netflix)が5部門、『マーターズ・イン・ビルディング』(Hulu)と『セヴェランス』(Apple TV)が各4部門にノミネートされている。
配給会社別では、映画部門でNeon(ネオン)が最多の21ノミネーション、テレビ部門ではNetflixが22ノミネーションで首位となった。
▼『鬼滅の刃』も候補入り、国際的な作品が健闘

2026年のゴールデングローブ賞では、非英語作品の存在感がこれまでになく大きく、主要部門の随所に登場した。まず、映画部門(ドラマ)の作品賞6枠のうち3作、ミュージカル/コメディ部門でも2作が非英語作品で占められた。アニメーション映画賞でも『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』を含む3作が選ばれ、全体的に“英語圏以外の映画”が強く押し出された印象だ。
監督賞と脚本賞には、イラン出身のジャファル・パナヒ(『It Was Just an Accident(英題)』)とデンマーク/ノルウェー出身のヨアキム・トリアー(『センチメンタル・バリュー』)の2名が両部門でノミネート。演技部門でも、ヴァグネル・モウラ、イ・ビョンホン、レナーテ・レインスヴェ、インガ・イブスドッテル・リッレアースが候補に入った。作曲賞でもスペイン語映画『Sirāt(原題)』が選出されており、国際色は極めて濃い。
背景にあるのは、ハリウッド外国人映画記者協会(HFPA)の解体と組織再編だ。かつてはLA在住の約100名で構成され、実質“ハリウッド中心の賞”だったが、2年前のHFPAの売却を機に体制が刷新。世界中から数百人規模の新規投票者が加わり、さらに国際映画批評家連盟(FIPRESCI)の非会員投票者もノミネーションに参加するようになった。
その結果、非英語映画の評価は一気に拡大。これまでも増加傾向にはあったが、作品賞12枠のうち5枠が非英語作品というのは史上初で、ゴールデングローブ賞が名実ともに“国際的な映画賞”へと変貌したことを象徴している。
▼“アート作品寄り”の選出に

今年は有力な大作が多かったにもかかわらず、『ウィキッド 永遠の約束』、『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』、『F1®/エフワン』、『WEAPONS/ウェポンズ』は作品賞に届かず、『ウィキッド 永遠の約束』をのぞく3作品は興行成績賞の評価となった。ただし、演技賞や作曲賞など個別部門では複数がノミネートされている。
一方、作品賞で実際に興行的成功を収めているのは『ワン・バトル・アフター・アナザー』と『罪人たち』で、ほかの候補は小規模な興行のアート寄り作品が中心。結果として、現在のゴールデングローブ投票者は大手スタジオの大作よりも芸術性の高い作品を重視する傾向が明確で、独立系スタジオのNeon(ネオン)が外国語映画賞6枠のうち5枠を押さえる快挙を達成し、そのほかの小規模な配給会社も大手と並ぶ存在感を示した。
▼“スター頼み”の時代は終わり?

かつては作品の評価に関係なく、Aリスト級のトップ俳優が出演していればゴールデングローブのノミネーションは“確実”とされていたが、その時代は終わった。今回はシドニー・スウィーニー、ブラッド・ピット、ジェニファー・ロペスなど有力候補が軒並み落選し、ジョエル・エドガートン、イーサン・ホークら実力派が選出される結果となった。これも、投票者の再編によって生まれた変化だといえるだろう。
ただし授賞式には、レオナルド・ディカプリオ、ティモシー・シャラメ、エマ・ストーンら“確定枠”とされていたスターに加え、ドウェイン・ジョンソン、エミリー・ブラント、ジュリア・ロバーツら当落線上だった面々もそろい、大物スターが集結する見通しだ。
▼新設部門も!特別功労賞にH・ミレン&S・J・パーカー

ゴールデングローブ賞は映画、テレビ、そして2026年から初めてポッドキャスト部門も対象となる。映画・テレビの作品賞や演技賞に加え、映画の興行成績賞、テレビのスタンダップコメディ賞など多岐にわたるカテゴリーを設けている。
また今年は、特別功労賞としてヘレン・ミレンがセシル・B・デミル賞、サラ・ジェシカ・パーカーがキャロル・バーネット賞を受賞する。
2026年の第83回ゴールデングローブ賞授賞式は、昨年に続いてスタンダップコメディアンのニッキー・グレイザーが司会を務め、アメリカでは現地時間1月11日(日)午後5時ET/午後8時PTよりCBSとParamount+で生放送予定。
以下、第83回ゴールデングローブ賞(2026)のノミネーション
【映画部門(ドラマ)】
作品賞
- 『フランケンシュタイン』
- 『ハムネット』
- 『It Was Just an Accident(英題)』
- 『The Secret Agent(英題)』
- 『センチメンタル・バリュー』
- 『罪人たち』
主演女優賞
- ジェシー・バックリー『ハムネット』
- ジェニファー・ローレンス『Die My Love(原題)』
- レナーテ・レインスヴェ『センチメンタル・バリュー』
- ジュリア・ロバーツ『アフター・ザ・ハント』
- テッサ・トンプソン『ヘッダ』
- エヴァ・ヴィクター『ソーリー、ベイビー(原題)』
主演男優賞
- ジョエル・エドガートン『トレイン・ドリームズ』
- オスカー・アイザック『フランケンシュタイン』
- ドウェイン・ジョンソン『The Smashing Machine(原題)』
- マイケル・B・ジョーダン『罪人たち』
- ヴァグネル・モウラ『The Secret Agent』
- ジェレミー・アレン・ホワイト『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』
【映画部門(ミュージカル/コメディ)】
作品賞
- 『Blue Moon(原題)』
- 『ブゴニア』
- 『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』
- 『しあわせな選択』
- 『Nouvelle Vague(原題)』
- 『ワン・バトル・アフター・アナザー』
主演女優賞
- ローズ・バーン『If I Had Legs I’d Kick You(原題)』
- シンシア・エリヴォ『ウィキッド 永遠の約束』
- ケイト・ハドソン『Song Sung Blue(原題)』
- チェイス・インフィニティ『ワン・バトル・アフター・アナザー』
- アマンダ・サイフリッド『アン・リー/はじまりの物語』
- エマ・ストーン『ブゴニア』
主演男優賞
- ティモシー・シャラメ『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』
- ジョージ・クルーニー『ジェイ・ケリー』
- レオナルド・ディカプリオ『ワン・バトル・アフター・アナザー』
- イーサン・ホーク『Blue Moon』
- イ・ビョンホン『しあわせな選択』
- ジェシー・プレモンス『ブゴニア』
【映画部門】
助演女優賞
- エミリー・ブラント『The Smashing Machine』
- エル・ファニング『センチメンタル・バリュー』
- アリアナ・グランデ『ウィキッド 永遠の約束』
- インガ・イブスドッテル・リッレアース『センチメンタル・バリュー』
- エイミー・マディガン『WEAPONS/ウェポンズ』
- テヤナ・テイラー『ワン・バトル・アフター・アナザー』
助演男優賞
- ベニチオ・デル・トロ『ワン・バトル・アフター・アナザー』
- ジェイコブ・エロルディ『フランケンシュタイン』
- ポール・メスカル『ハムネット』
- ショーン・ペン『ワン・バトル・アフター・アナザー』
- アダム・サンドラー『ジェイ・ケリー』
- ステラン・スカルスガルド『センチメンタル・バリュー』
監督賞
- ポール・トーマス・アンダーソン『ワン・バトル・アフター・アナザー』
- ライアン・クーグラー『罪人たち』
- ギレルモ・デル・トロ『フランケンシュタイン』
- ジャファル・パナヒ『It Was Just an Accident』
- ヨアキム・トリアー『センチメンタル・バリュー』
- クロエ・ジャオ『ハムネット』
脚本賞
- ポール・トーマス・アンダーソン『ワン・バトル・アフター・アナザー』
- ロナルド・ブロンスタイン & ジョシュ・サフディ『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』
- ライアン・クーグラー『罪人たち』
- ジャファル・パナヒ『It Was Just an Accident』
- エスキル・フォクト & ヨアキム・トリアー『センチメンタル・バリュー』
- クロエ・ジャオ & マギー・オファーレル『ハムネット』
作曲賞
- アレクサンドル・デスプラ『フランケンシュタイン』
- ルドウィグ・ゴランソン『罪人たち』
- ジョニー・グリーンウッド『ワン・バトル・アフター・アナザー』
- カンディング・レイ『Sirāt(原題)』
- マックス・リヒター『ハムネット』
- ハンス・ジマー『F1®/エフワン』
歌曲賞
- 「Dream as One」—『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』
- 「Golden」—『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』
- 「I Lied To You」—『罪人たち』
- 「No Place Like Home」—『ウィキッド 永遠の約束』
- 「The Girl in the Bubble」—『ウィキッド 永遠の約束』
- 「Train Dreams」—『トレイン・ドリームズ』
アニメーション映画賞
- 『Arco(原題)』
- 『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』
- 『星つなぎのエリオ』
- 『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』
- 『アメリと雨の物語』
- 『ズートピア2』
興行成績賞(シネマティック&ボックスオフィス・アチーブメント賞)
- 『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』
- 『F1®/エフワン』
- 『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』
- 『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』
- 『罪人たち』
- 『WEAPONS/ウェポンズ』
- 『ズートピア2』
外国語映画賞
- 『It Was Just an Accident』 – フランス
- 『しあわせな選択』 – 韓国
- 『The Secret Agent』 – ブラジル
- 『センチメンタル・バリュー』– ノルウェー
- 『Sirāt』 – スペイン
- 『The Voice of Hind Rajab(英題)』– チュニジア
【テレビ部門(ドラマ)】
作品賞
- 『ザ・ディプロマット』
- 『ザ・ピット/ピッツバーグ救急医療室』
- 『プルリブス』
- 『セヴェランス』
- 『窓際のスパイ』
- 『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル』
主演女優賞
- キャシー・ベイツ『マトロック』
- ブリット・ロウワー『セヴェランス』
- ヘレン・ミレン『モブランド』
- ベラ・ラムジー『THE LAST OF US』
- ケリー・ラッセル『ザ・ディプロマット』
- レイ・シーホーン『プルリブス』
主演男優賞
- スターリング・K・ブラウン『パラダイス』
- ディエゴ・ルナ『キャシアン・アンドー』
- ゲイリー・オールドマン『窓際のスパイ』
- マーク・ラファロ『TASK/タスク』
- アダム・スコット『セヴェランス』
- ノア・ワイリー『ザ・ピット/ピッツバーグ救急医療室』
【テレビ部門(ミュージカル/コメディ)】
作品賞
- 『アボット エレメンタリー』
- 『一流シェフのファミリーレストラン』
- 『Hacks(原題)』
- 『こんなのみんなイヤ!』
- 『マーダーズ・イン・ビルディング』
- 『ザ・スタジオ』
主演女優賞
- クリステン・ベル『こんなのみんなイヤ!』
- アイオウ・エディバリー『一流シェフのファミリーレストラン』
- セレーナ・ゴメス『マーダーズ・イン・ビルディング』
- ナターシャ・リオン『ポーカー・フェイス』
- ジェナ・オルテガ『ウェンズデー』
- ジーン・スマート『Hacks』
主演男優賞
- アダム・ブロディ『こんなのみんなイヤ!』
- スティーヴ・マーティン『マーダーズ・イン・ビルディング』
- グレン・パウエル『チャド・パワーズ 人生コンバート大作戦』
- セス・ローゲン『ザ・スタジオ』
- マーティン・ショート『マーダーズ・イン・ビルディング』
- ジェレミー・アレン・ホワイト『一流シェフのファミリーレストラン』
【テレビ部門(リミテッド/アンソロジー/テレビ映画)】
作品賞
- 『アドレセンス』
- 『All Her Fault(原題)』
- 『BEAST -私のなかの獣-』
- 『ブラック・ミラー』
- 『人生の最期にシたいコト』
- 『ザ・ガールフレンド ~あなたが嫌い~』
主演女優賞
- クレア・デインズ『BEAST -私のなかの獣-』
- ラシダ・ジョーンズ『ブラック・ミラー』
- アマンダ・サイフリッド『ロング・ブライト・リバー』
- サラ・スヌーク『All Her Fault』
- ミシェル・ウィリアムズ『人生の最期にシたいコト』
- ロビン・ライト『ザ・ガールフレンド ~あなたが嫌い~』
主演男優賞
- ジェイコブ・エロルディ『奥のほそ道 -ある日本軍捕虜の記憶-』
- ポール・ジアマッティ『ブラック・ミラー』
- スティーヴン・グレアム『アドレセンス』
- チャーリー・ハナム『モンスター:エド・ゲインの物語』』
- ジュード・ロウ『ブラック・ラビット』
- マシュー・リス『BEAST -私のなかの獣-』
【テレビ部門】
助演女優賞
- キャリー・クーン『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル』
- エリン・ドハティ『アドレセンス』
- ハンナ・アインバインダー『Hacks』
- キャサリン・オハラ『ザ・スタジオ』
- パーカー・ポージー『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル』
- エイミー・ルー・ウッド『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル』
助演男優賞
- オーウェン・クーパー『アドレセンス』
- ビリー・クラダップ『ザ・モーニングショー』
- ウォルトン・ゴギンズ『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル』
- ジェイソン・アイザックス『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル』
- トラメル・ティルマン『セヴェランス』
- アシュリー・ウォルターズ『アドレセンス』
【スタンダップコメディ部門】
- ビル・マー『Bill Maher: Is Anyone Else Seeing This?』
- ブレット・ゴールドスタイン『Brett Goldstein: The Second Best Night of Your Life』
- ケヴィン・ハート『ケヴィン・ハートのそれなりのオトナ』
- クメイル・ナンジアニ『Kumail Nanjiani: Night Thoughts』
- リッキー・ジャーヴェイス『リッキー・ジャーヴェイスのどうせ皆死ぬ』
- サラ・シルバーマン『サラ・シルヴァーマンのサヨナラを振り返る』
【ポッドキャスト部門】
- 『Armchair Expert With Dax Shepard』
- 『Call Her Daddy』
- 『Good Hang With Amy Poehler』
- 『The Mel Robbins Podcast』
- 『SmartLess』
- 『Up First』
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌

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