ホーム » MOVIES » 映画『レンタル・ファミリー』製作陣が明かす、“日本式映画づくり”の舞台裏

全編日本ロケ!映画『レンタル・ファミリー』が映し出す“日本式映画づくり”―― ハリウッドのプロデューサーが東京で学んだこと

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映画『レンタル・ファミリー』より 写真:James Lisle/Searchlight Pictures
映画『レンタル・ファミリー』より 写真:James Lisle/Searchlight Pictures
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ブレンダン・フレイザー主演の新作映画『レンタル・ファミリー』は、スクリーンに映る物語だけでなく、その制作過程自体が“異文化との出会い”に満ちた作品だ。プロデューサーを務めたジュリア・レベデフエディ・ヴァイスマンは、東京での撮影を通して、ハリウッドとはまったく異なる映画づくりの価値観と向き合うことになった。

日本を舞台にした『レンタル・ファミリー』は、“レンタル家族”として他人の人生の中で“仮の”役割を演じる仕事を請け負うアメリカ人俳優フィリップ(演:ブレンダン・フレイザー)が主人公のヒューマンドラマだ。作品のテーマは、撮影現場そのものにも色濃く反映されていた。

▼東京ロケで直面した現実「ロケ地契約は絶対ではない」

映画『レンタル・ファミリー』より 写真:Searchlight Pictures
映画『レンタル・ファミリー』より 写真:Searchlight Pictures

2024年春、『レンタル・ファミリー』の撮影チームは、東京のある集合住宅での撮影準備を進めていた。しかし直前になって、近隣住民が撮影による騒音を懸念したことで、建物のオーナーが許可を撤回。ロケは中止となった。

アメリカでは、ロケ地契約を結んだ後にオーナーが撤退すれば、法的問題に発展する可能性が高く、極めて例外的な事態だ。しかし日本では、近隣への配慮が最優先され、直前のロケ中止も文化的に受け入れられている。

「彼らは、コミュニティの一体感や、お互いに対する責任を危険にさらすつもりはないのです」と、プロデューサーのジュリア・レベデフは語る。

▼「常に次の次を考える」日本で学んだリスク管理

(左から)ジュリア・レベデフ、ブレンダン・フレイザー、ゴーマン シャノン 眞陽、山本真理、HIKARI、柄本明、平岳大、エディ・ヴァイスマン
(左から)ジュリア・レベデフ、ブレンダン・フレイザー、ゴーマン シャノン 眞陽、山本真理、HIKARI監督、柄本明、平岳大、エディ・ヴァイスマン 写真:Phillip Faraone/Getty Images for Searchlight

当初は戸惑いもあったが、プロデューサーのジュリア・レベデフとエディ・ヴァイスマンは次第にこの価値観を理解し、受け入れていった。

「常に“次の次”までバックアップを用意していました。もしこれがダメなら次はこれ、それもダメならさらに別の手がある、という具合です」と、ヴァイスマンは振り返る。

この徹底したリスク管理は、結果的に成功を収めた。『レンタル・ファミリー』は、2024年9月のトロント国際映画祭で高い評価を獲得。米『ハリウッド・リポーター』の映画批評家は、「オスカー俳優が、受賞作以降にふさわしい主演作にめぐり合えないことは少なくない。しかしブレンダン・フレイザーは『ザ・ホエール』以来の初主演作で、見事な1本を生み出した」と絶賛した。

▼5年越しの企画、HIKARI監督との出会い

映画『レンタル・ファミリー』のHIKARI監督、主演ブレンダン・フレイザー
映画『レンタル・ファミリー』のHIKARI監督、主演ブレンダン・フレイザー 写真:THR

『レンタル・ファミリー』の企画が動き出したのは2019年。プロデューサーのジュリア・レベデフとエディ・ヴァイスマンは、監督兼共同脚本家のHIKARIと構想段階から話し合いを重ねてきた。

2023年に企画をサーチライトへ持ち込み、日本側プロデューサーとのZoomミーティングを何度も実施。1時間の予定が4時間に及ぶことも珍しくなく、通訳を介しながら、言語化しにくい文化的ニュアンスを丁寧にすり合わせていった。

日本側はロケ契約の考え方など制作文化の違いを説明し、レベデフとヴァイスマンは「日本式映画づくり」を理解してもらうため、アメリカのスタジオ側との橋渡し役を担った。

▼東京という巨大都市での50日間…1日1ロケ地という選択

米『ハリウッド・リポーター』のインタビューに登場したブレンダン・フレイザー&HIKARI監督、2025年のトロント国際映画祭にて

HIKARIと初めて会ってから約5年後、プロデューサーの2人は50日間の撮影のため来日。東京は端から端まで車で3時間以上かかる巨大都市であり、時間効率を考慮して1日1ロケ地という撮影スタイルが採用された。

「結果的に、俳優たちが急かされることのない、とても良い撮り方になりました」と、ジュリア・レベデフは語る。

▼靴を脱ぐ文化が生んだ“スローダウン”

ハリウッドでは、「時は金なり」が絶対原則だ。しかし『レンタル・ファミリー』では、あえてスピードを落とすことが前提となっていた。日本での撮影では、ロケ地に入る前に全員が靴を脱ぐ。

「作業はゆっくりになりますが、靴のまま入ってロケ地を傷つけたり、所有者を侮辱したりするなど、考える余地すらありません」と、ジュリア・レベデフは語る。

エディ・ヴァイスマンも、「オスカー俳優からキーグリップ、プロデューサーから監督まで、全員が靴を脱ぎます」と強調する。

▼桜の開花予測に翻弄されたシーン

物語の核となるのは、フィリップと少女ミア(演:ゴーマン シャノン 眞陽)の関係だ。とある場面では、東京の桜を背景に2人が顔を合わせるが、この撮影は最大の難関のひとつだった。

開花予測アプリを使っていたものの、「予測が15日もズレていました。制作現場がどれほど混乱したか、想像していただけると思います」と、エディ・ヴァイスマンは苦笑する。

▼東京で心に残った“ゴミの扱い方”

映画『レンタル・ファミリー』撮影現場より
映画『レンタル・ファミリー』撮影現場より 写真:Julia Lebedev

一方、桜や建築以上に印象的だったのが、東京のゴミ処理の習慣だったという。昼食後、スタッフ全員が食べ残しをコンポストに入れ、容器をきれいに重ねる。100人分のゴミが、わずか1袋で済む。

ジュリア・レベデフは、この習慣について次のように振り返った。「立場に関係なく、全員が自分のゴミを自分で処理します。毎日の昼食時の、あの小さな行動に文化の本質が凝縮されていました」

映画『レンタル・ファミリー』は、2026年2月27日(金)より劇場公開。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌

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