サンダンス映画祭: オウム真理教のドキュメンタリー映画の監督が語る「日本の方々に目を背けず観てほしい」

写真:©SUNDANCE INSTITUTE
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映画『Aum: The Cult at the End of the World』。今作は、オウム真理教の暗部に迫るドキュメンタリーだ。

D・E・カプランとA・マーシャルの本を基に、オウム真理教の背景を記録。作品には、元幹部の上祐史浩氏や、日本在住のジャーナリストのマーシャル氏の証言が含まれている。

今回、米THRが柳本千晶(以下C.Y)&ベン・ブラウン(以下B.B)監督にインタビューした。

Q. 作品製作前の、地下鉄サリン事件に関する知識は?

C.Y: 事件発生時、11歳でした。山梨県で育ち、当時は教団のことはよく知りませんでした。ところが、重大なニュースとなり、本部が山梨に存在することを知りました。当時、親が子供に白いローブを着てウロウロしている人には注意しなさい、と言っていたのを覚えています。

B.B: 私は、ニューヨークで育ちました。そして、子供時代に9.11のテロが発生し、大きなトラウマを抱えました。こうして、類似した出来事を調査するに至りました。何が起きたか、という記録は沢山存在します。一方で、何がそれを引き起こしたか、ということを掘り下げるのは容易ではありません。なので、監督に着手したいと考えました。というのも、重大な事件のトラウマを抱えて生きてきた身として、ある意味理解できる部分があったのです。

Q. メディアが報道していない事実が描かれている?

B.B: リサーチをしていると、それまで知らなかった経緯が見えてきます。なので、本やニュースなど各所で伝えられた事実をすべて1つにまとめる必要を感じました。よって、物語が蓄積されることで、より全容を把握できるようになります。

Q. 映画に使用されている資料映像の入手先は?

B.B: 当初は、YouTubeで動画を見ました。しかし、自分たちで映像を入手するのは大変でした。そして、初めて上祐氏と対面した時、「誰かが持っているはずです。探してみます」と言ってくれました。

C.Y: 2020年頃に、上祐氏の助言で長野県にあるオフィスへ向かいました。そこには、大量のVHSやカセットテープがありました。資料をスーツケースいっぱいに詰め込んで、ロサンゼルスに直帰しました。

Q. 他のカルトをテーマにした作品との違いは?

B.B: 他のカルト作品との違いは、一種のディザスター映画である点です。というのも、重大な事件を中心に話が展開します。それから、日本の奥地で起きた奇妙な事件について耳にした外国人ジャーナリストの視点も描かれます。まるで、“ゴジラ”のようですね。よって、今作は地方に潜むモンスターの物語だと言えます。

C.Y: 私たちは、むしろフィクションを作る姿勢で挑みました。なので、「カルトのドキュメンタリーを作ろう」という気持ちはありませんでした。登場人物がとても重要な作品だと意識していたので、他のカルト作品は参考にしていません。どちらかというと、『ゴジラ』や『ゴッドファーザー』に近いですね。

Q. サンダンスの観客に、どのように感じてもらいたい?

C.Y: 日本の方々の反応が気になります。今作で語られる物語は、大半の日本人が知らない、または目を背けてきたものです。私は、日本の方々に何が起きたかを観ていただきたいです。 そして、恥として認識せず、起きたこととして認識してもらう。これが、今作から学べることですね。

B.B: アメリカ人に、今作から現代につながるコンテクストを見出してほしいです。膨大な信者をもつ誇大妄想者が、やがて首都に攻撃するのです。きっと、人々の印象に残るでしょう。「アルマゲドンが来る。世界を滅亡させる」と言う人や、一方で「会社から出ない」と言う人もいます。私たちは、人々の話に耳を傾ける必要があります。なぜなら、時としてそこにどんな意図が隠れているのか、大きな謎ではないからです。

※インタビュー内容は、抄訳・要約です。

オリジナル記事はこちら。翻訳/和田 萌

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