光石研、カンヌ出品の主演映画「逃げきれた夢」で実父と共演「恥ずかしさの極み」

 俳優の光石研が主演の映画「逃げ切れた夢」の完成披露上映会が17日、都内で行われた。光石は共演の吉本実憂、工藤遥、坂井真紀、松重豊、二ノ宮隆太郎監督とともに舞台挨拶。12年ぶりの単独映画主演で、「どんな世代が見ても、いろいろな目線で見られる作品です」と自信のほどを語った。

 定時制高校の教頭が、記憶が薄れていく中でそれまでの人生を見つめ直していく物語。光石と同じ事務所に所属する二ノ宮が「特別な映画を撮りたい」と光石に直談判し、仕事で北九州に帰省する本人に同行し生まれ育った町を見て回った上で脚本を執筆した。

インタビューをした際に発した言葉もセリフに使うなど“光石愛”にあふれ、二ノ宮監督は「大好きなスタッフ、キャストだけで作った映画です」と満面の笑み。光石は、「映画になるとは思ってなくて、そんなに期待していなかったけれど、監督、おめでとう」と冗談交じりにねぎらった。

 同作は開催中の第76回カンヌ映画祭のACID部門に選出。22日の上映に参加する二ノ宮監督は、「素晴らしい環境で見てもらえる」と期待。光石も「カンヌの地で北九州弁が流れるのは快感でしょうね」と胸を高鳴らせた。

 だが、地元での撮影には「子供の頃に遊んでいた場所だから、とにかく恥ずかしかった。小学校の同級生が遠くから写真を撮ろうとするので、『やめろ。下品なことをするな』と言ってやりました」と苦笑い。さらに、自身の父親役で俳優ではない実父と共演しており「恥ずかしさの極み。スタッフに迷惑をかけないか冷や冷やだった」とバツが悪そうに振り返った。

 ここで横やりを入れてきたのが、光石の学生時代の友人役の松重豊で、「僕はそのお父さんと文通しています。光石さんより芸能界に向いている。あの父親ありきの光石さんということが分かる」と解説。さらに「30代から現場をご一緒しているが、常にベンチマークというかリアリティで光石さんにかなう人はいない。その生々しい姿がスクリーンに投影されています」と盟友を称えた。

 しかし、作品の内容にちなみ人生のターニングポイントを聞かれた光石が、78年のデビュー作「博多っ子純情」を挙げ「あの1本がなければこの世界にいない。俳優もやっていなかった」と話すと、福岡出身の松重が異議。「地元で『博多っ子純情』という映画のオーディションがあって、主役の男の子が光石研くんに決まりましたと新聞に載っていて、なんで北九州の人間が博多っ子をやりよっと、と思った。そこで僕の人生がガラッと変わりました」と明かし、会場の笑いを誘っていた。

 「逃げきれた夢」は、6月9日から全国で封切られる。

取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴⽊ 元

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