是枝裕和監督&坂元裕二氏が特別講義で「怪物」ラストシーンの解釈に言及

第76回カンヌ映画祭で脚本賞を受賞した「怪物」の是枝裕和監督と脚本の坂元裕二氏が10日、東京・早稲田大学で特別講義「マスターズ・オブ・シネマ」を開いた。

本作の企画は2018年にスタートしているが、互いの存在を意識したのは是枝監督が「奇跡」、坂元氏がドラマ「さよならぼくたちのようちえん」を手掛けた2011年にさかのぼる。是枝監督は、「共に子供たちが旅をする物語で、同じモチーフを思いついていたことがうれしかった」と振り返った。

坂元氏は撮影、放送中も執筆を続けることの多い連続ドラマを主戦場としているため、今回は「映画はある程度、ラストを想定しないと書きづらいが大きな課題で難しかった」という。だが、「書いている時から是枝監督の顔が浮かんでいたことは間違いない。一度、脚本を持って行ってみようかなと思ったこともある」と明かした。

是枝監督は、プロットで提案を受けた段階で、読む前に受諾することを決めていたという。実際に目を通すと、「とにかく面白かった。読み進めていく行為がスリリングで挑戦的。今の時代にものを作って伝えることへの批評性の高いプロットだった」とほれ込んだ。

劇映画デビュー作の「幻の光」以来、28年ぶりとなる自身以外の脚本での演出。通常、子役には脚本を渡さず1カットごとに口頭でセリフを伝えているが、今回オーディションで選んだ黒川想矢、柊木陽太には大人の俳優と同様の演出をしたが、「オーディションでいろいろな組み合わせを試し、これ以外にあり得ないと思った特別な2人。脚本を読んで覚えてきた方が圧倒的にうまかったから」と理由を説明した。

その子役2人が光の中に向けて走っていくラストシーンについても言及。中には2人が死んでしまったという解釈があることを受け、坂元氏は「僕もメールをもらったが、何を言っているんだと思った。彼らはこのまま生き続けるとしか思えない一択」と強調。是枝監督も、「彼らの生を肯定して終わるという共通認識があった。ただ、光に満ちているから現実離れしているという意見を否定するつもりもない」と補足した。

ただ、「カンヌで坂元さんと僕が並んでいる姿が、この子たちが大きくなった姿に見えたと言われたこともあったんですよ。自分で言っていて恥ずかしい」と照れ笑い。坂元氏も、「妻(森口瑤子)にも言われましたよ」と明かし、ここでも思わぬ合致を見せていた。

取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴⽊ 元

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