“どうして俳優はストをしているのか?” 今さら聞けない「俳優組合のストライキ」18の質問に回答

スト中のWGA・SAG-AFTRA、7月14日 LAにて 写真: ©TIFFANY TAYLOR/THR STAFF
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現在、俳優たちがハリウッドの有名スタジオの前で行進をしている。果たして、新作の公開に影響してしまうのか?ストリーミングがストとどんな関係があるのか?

以下、ストライキについてよく聞かれる質問にサクッと回答した。

どうして俳優はストをしているのか?

テレビ・映画をカバーする新たな3年契約をめぐり、俳優組合(SAG-AFTRA)とスタジオ・ストリーマーの間で合意が成立しなかったため。事前に大半の組合員がストを承認しており、交渉が決裂するとストが呼びかけられた。組合は“AIやストリーミング報酬”の問題は、俳優にとって極めて重要であり、ストは必須と語った。

スタジオと何を争っている?

組合によると、“生成AI使用の規制”・“給料のベースアップ”・“ストリーミング作品の出演俳優にサブスク収益を配分”といった主な争点について合意に達することができなかった。他にも、“パフォーマンスキャプチャー(例: ゴラムを演じたアンディ・サーキス)の仕事は組合の契約でカバーできるのか?”など多くの論点がある。一方スタジオ側は、10億ドル以上の利益拡大を含む契約にSAG-AFTRAが背中を向けたと主張している。

俳優ストは脚本家組合に関係している?

現在、ハリウッドの脚本家を代表する全米脚本家組合(WGA)もストライキ中。俳優・脚本家組合の要求の多くは異なっているものの、“AI”・“ストリーミングの再使用料”に関しては共通点もある。

「再使用料」とは?

再使用料は、俳優に支払われる印税のようなもの。過去の出演作が放送局や配信プラットフォームなどで再び流された場合、俳優は再使用料を受け取ることになる。

なぜストリーミングが大きな問題になっている?

ハリウッドは今、“ストリーミング時代”だ。例えばDisney+はスタジオが配信サービスを運営していて、Netflixはスタジオと配信サービスが一緒になっている。俳優の報酬に関して、ストリーミングは長年築き上げられてきたビジネスモデルに多大な影響をもたらしている。通常、ストリーミング番組は話数が少ないため、前払い金が制限されてしまう。ストリーミングにおける再使用料も、同様に制限される。組合は、視聴回数に基づく収益分配を要求している。一方で、スタジオはそれらのデータを明かさないことでも有名。

ストリーミングのサブスクを解約した方がいい?

SAG-AFTRAは消費者のボイコットを求めていないが、一部の組合員は呼びかけている。

俳優がボブ・アイガーとデイヴィッド・ザスラフに激怒している理由は?

ウォルト・ディズニー・カンパニーのCEO・アイガー氏とワーナー・ブラザース・ディスカバリーのCEO・ザスラフ氏は、組合員から激しい怒りを買っている。

スト以前、ザスラフ体制において、完成間近だった『バットガール』は消滅、HBO MAX(現・MAX)から数々のドラマ・映画が取り除かれた。この動きに、業界全体は怒り心頭。また、ストライキは“非常に不快”、組合の要求は“非現実的”と語ったアイガー氏に対して激しい非難の声が噴出。それに加えて、ストは“ビジネス全体に甚大な影響をもたらす”との発言も飛び出した。

組合は業界の賃金は停滞・低下状態だと主張する一方、ハリウッドのCEOたちは高給取りのままだ。アイガー氏の2023年の包括賃金は2,700万ドル、ザスラフ氏は3,930万ドルだった。

どうしてフラン・ドレシャーが俳優を率いている?

90年代のシットコム『ザ・ナニー』で知られるドレシャーは、現在SAG-AFTRAの会長を務めている。トム・ハンクスら有名俳優が後ろ盾となり、2021年に選出。現在、再選に前向きで、最有力候補である。

視聴中の番組に影響は出る?

すでに『ストレンジャー・シングス 未知の世界』や『イエロージャケッツ』など、人気ドラマの制作が中止されている。視聴者は、好きなドラマの新シーズンをより長く待たねばならないだろう。俳優・脚本家の同時ストで、プロダクションはコロナ禍以来最低レベルとなった。その上、俳優が作品の宣伝をしないため番組を延期するストリーマーも出てくるかもしれない。

映画の公開日は延期される?

映画に関しては、公開日が随分先に設定されているため不透明なままだ。しかし、『グラディエーター』の続編や『デッドプール3』を含む大作は、ストで制作中止を余儀なくされた。ストライキが長引くほど、プロダクションに遅れが出て、公開日に間に合わなくなってしまう。現時点では、ストが原因で公開が延期された映画はない。

どのくらいの俳優がストに参加している?

SAG-AFTRAに所属する16万人全員がストを行っているが、低予算のインディーズ系プロダクションで仕事をしている俳優に対してはごく限られた例外を設けている。

俳優はすでに高収入なのでは?

Aリスト級の著名俳優は、確かに大金を稼いでいる。その一方で、SAG-AFTRAが支える16万人の中には、エキストラ・歌手・スタントパフォーマーも含まれる。組合の健康保険料約2万6,000ドル(1年あたり)を納められるメンバーは12.7%のみだという。 SAGの交渉担当チーフによると、俳優の平均収入は2021年で約4万6,000ドルだった。

俳優がスト中に禁止されていることは?

スト中、SAG-AFTRAの組合員は主要なスタジオ・ストリーマーの映画・テレビの撮影ができない。ヴェネツィア・トロント映画祭への出席など、完成した作品の宣伝活動も禁じられている。クリストファー・ノーラン監督『オッペンハイマー』のロンドンプレミアでは、目前に迫ったストのためキャストが途中で退場した。SNSへの宣伝投稿のほか、エキストラ・代役、声優の仕事も禁止されている。

では、スト中でも可能なことは?

ごくわずかなプロジェクトに限り、撮影許可が下りるだろう。俳優はアメリカで撮影が行われない、カナダやイギリスの団体のプロジェクトで仕事ができる。さらに組合は、特定条件付きの免除措置で、アン・ハサウェイ主演のA24作品やライオンズゲートの『The Killer’s Game(原題)』といったプロジェクトの撮影続行を認めるとみられる。

どのくらい続く?

合意が成立するまで続き、見通しは不透明だ。AMPTPとSAGは「“ストリーミング再使用料”・“AI”といった重要な問題で大きく分かれている」という。ピケッティングの1日目、ドレシャー会長は「最長6か月間のストで予想されるコストを検討している」と伝えた。

「AMPTP」って何?

AMPTP(=Alliance of Motion Picture and Television Producers: 映画テレビ制作者同盟)は、DisneyやNetflixといった主要な制作者を代表し、SAG-AFTRA・WGA・IATSEとの交渉を行っている団体。現在の状況においては、AMPTPが経営者側である。ストを終わらせるためには、経営者と労働者双方の納得が必要だ。

いつ終わる?

新たな契約にスタジオと組合が合意し、組合員の過半数が承認すればストは終わりを告げる。

トム・クルーズはどんな活動をしている?

“映画館の救世主”ことトム・クルーズは6月の交渉に参加し、AMPTP・SAG-AFTRA両者に対し意見を述べた。AMPTPには“スタントのプロ”や“演技を取り込むための生成AI使用”に関する組合の懸念に耳を傾けること、SAGには映画市場の危機的状況を鑑み、夏の映画の宣伝活動を許可するよう要求した。

※今記事は要約・抄訳です。オリジナル記事はこちら。翻訳/和田 萌

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