「同時スト」で窮地に立った映画芸術科学アカデミー: 今年のオスカーへの影響は?

写真: ©MATT WINKELMEYER/GETTY IMAGES; KEVIN WINTER/GETTY IMAGES; JON KOPALOFF/GETTY IMAGES
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60年ぶりの俳優・脚本家による“同時スト”で、ハリウッドの大部分が打撃を受けている。今年いっぱい継続するのでは?という声も上がるなか、今後予定しているイベントの関係者らは開催方法を模索せざるを得ない状況だ。

アカデミー賞のほか、様々な重要イベントを主催する映画芸術科学アカデミーも例外ではない。通常なら「アカデミー・ミュージアム・ガラ」と「ガバナーズ・アワード」は秋に行われるが、今年は開催が危ぶまれている。

ミュージアム・ガラは西海岸版“メットガラ”とも言える資金集めイベントで、2021年9月の初開催以来、数々の著名人が出席してきた(総募金額は1,100万ドル以上)。今年は第3回目で、米ハリウッド・リポーターによると10月14日に予定されていたが、現在は未定のままだ。

ストにおいて、重役、脚本家、俳優らが所属するアカデミーは中立的な立場にある。さらに約90年前に労働争議から身を引いており、スト中の組合がアカデミー主催のイベントへの出席を禁じるとは考えにくい。

しかし、イベント開催とストが重なれば、組合員は欠席を選ぶだろう。オスカーの有力候補を含む出席者の多数は、出演映画の配給会社のゲストとして来場する(1席: 2万5,000ドル)。対抗する会社の重役と社交の場を持ったり、困窮する大勢の仲間を背に豪華なイベントに顔を出すとなると、出席に多くの待ったをかけるはずだ。

そして、今年で14回目を迎えるガバナーズ・アワードは、映画業界の4人に特別賞を授ける夕食会で、11月18日の開催が発表されていた。テレビ放送は行われず、脚本家らが携わるため組合側に有利に思えるが、事態は複雑化している。

ガバナーズ・アワードは、オスカーシーズン真っ只中に開催される。というのも、アカデミー賞を争う多くの有名俳優らが、注目を集めたり、アカデミー会員と交流するために来場するからだ。実際に、同アワードへの出席者数はアカデミー賞よりも多い(“ガバナーズ”開催段階では、誰でもオスカー候補に挙がる可能性があるため)。

一方で、ガバナーズ・アワードへの出席は高くつく(1テーブル: 7万5,000ドル、1席: 7,500ドル )。大抵の場合支払うのはスタジオで、俳優、脚本家らが会社の重役らとテーブルを囲む。その力関係は、現状では受け入れられないだろう。

今年のガバナーズ・アワードでは、アンジェラ・バセットとメル・ブルックスに名誉賞が授けられる予定だ。彼らが出席に難色を示した場合、アワードが実行されるとは考えにくい。その他2名の受賞者、編集技師のキャロル・リトルトンとサンダンス・インスティテュートの創設者ミシェル・サッターは素晴らしい功績を残しているが、注目度が十分に上がらない可能性がある。

さらに厄介なことに、アカデミーは“ガバナーズ”を来年1月16日以降には延期できない。同日は第96回アカデミー賞のノミネート者を決定する投票の締切日で、開催が16日以降となると俳優は“ガバナーズ”へ出席する一番の動機を失ってしまう。コロナが原因で第12回ガバナーズ・アワードがオスカー開催2日前に延期された際は、例年に比べ著名人の来場が激減した。

現在、第96回アカデミー賞はディズニーの子会社・米ABCで2024年3月10日に放送が予定されている。ストでは、ディズニーのボブ・アイガーCEOがスタジオ側の顔とも言える存在になっているが、オスカーが予定通りに開催されないとは考えにくい。なぜなら、ストが3月まで続いたとすると業界全体が大打撃を受けることになるのと、これまでストが原因でオスカーが阻止されたことは一度もないからだ。

1960年4月、第32回アカデミー賞は脚本家・俳優による同時ストの最中に開催された(14日後に解決)。当日、司会を務めたボブ・ホープはモノローグで以下のように切り出した。「ハリウッドの最も豪華なストライキミーティングへようこそ」「唯一仕事をしている俳優がロナルド・レーガン(当時のSAG会長)だけ。まさかこんな日が来るとはね」「今夜は両者が一堂に会しています。今年最高の演技は、まさに観客の中で披露されていると言えるでしょう」

その7年後の第39回アカデミー賞は、AFTRAのストによって頓挫しかけた。監督組合や音楽家連盟もAFTRAを支持し、アカデミーは「ストが続けられるなら、授賞式は行わない」と表明していた。

しかし、13日後の1967年4月10日、授賞式の数時間前にストは終了。同アワードで、再び司会者のボブ・ホープがモノローグを披露した。「やる、やらない、やる、やらない、そんな第39回アカデミー賞へようこそ。ハラハラドキドキの夜です。それも、授賞式を行うか、行わないかを決めるだけのことでした。実は30分ほど前に聞いたので、テレプロンプターがストの終わりを認識していることを願います。ともかく、ストが終わって何よりです。訴え、疑い、怒りはすべて過去のもの。今こそ、本当の戦いが始まります!」

※今記事は要約・抄訳です。オリジナル記事はこちら

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