ヴェネツィア国際映画祭 2023: 映画批評家が選ぶ大注目の10作品

「ヴェネツィア映画祭 2023」の出品作 写真: COURTESY OF EROS HOAGLAND; PHILIPPE LE SOURD; NEOPA, FICTIVE; COURTESY OF SEARCHLIGHT PICTURES; JASON MCDONALD/NETFLIX

『EL CONDE(原題)』

『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』・『スペンサー ダイアナの決意』のチリ人監督パブロ・ララインは、過去に『トニー・マネロ』・『ポスト・モーテム』・『NO』の3作品でピノチェト政権を回顧した。独裁者・ピノチェトを吸血鬼として描いた『EL CONDE(原題)』で再びその主題に回帰、風刺と捻りのきいたダークコメディーとなっている。250歳の吸血鬼ピノチェトは、なんと実存的危機に陥ってしまう。

『悪は存在しない』

オスカー受賞作『ドライブ・マイ・カー』(2021)の濱口竜介監督最新作『悪は存在しない』は、田舎の村に住むシングルファーザーと娘の物語。手つかずの自然や生態系と調和しながら営む親子の穏やかな生活が、高級キャンプ地の建設計画によって危機にさらされてしまう。出演は⼤美賀均、⻄川玲、⼩坂⻯⼠、渋⾕采郁ほか。

『FERRARI(原題)』

エネルギーに溢れ、巧みなテクニックで知られるマイケル・マン監督は、まさにイタリアの起業家エンツォ・フェラーリの物語を語るのにうってつけだろう。1957年夏、アダム・ドライヴァー演じる元F1ドライバーは倒産の危機に直面、息子の死をきっかけに妻ラウラ(ペネロペ・クルス)との結婚生活にも亀裂が走っていた。やがてエンツォは危険なクロスカントリー・レースで、一か八かの勝負に挑む。シェイリーン・ウッドリー、ガブリエル・レオーネ、パトリック・デンプシー、ジャック・オコンネル出演。

『THE KILLER(原題)』

『セブン』、『ゾディアック』、『ゴーン・ガール』など、殺人をテーマとする作品を制作してきたデイヴィッド・フィンチャー監督。サイコロジカルスリラー『THE KILLER(原題)』は、フランスのグラフィックノベルが原作だ。致命的なニアミスを犯した暗殺者(マイケル・ファスベンダー)は、国際的に追跡され自身の正気を問う。その他のキャストに、チャールズ・パーネル、アーリス・ハワード、ソフィー・シャーロット、ティルダ・スウィントン。

『マエストロ: その音楽と愛と』

レディー・ガガ共演『アリー/ スター誕生』で監督デビューを果たし、ヴェニスでも注目を浴びたブラッドリー・クーパー。新作「マエストロ」は、天才的な作曲家・指揮者レナード・バーンスタインとフェリシア・モンテアレグレ(キャリー・マリガン)の複雑な夫婦関係を描く。フェリシアは夫が同性愛者であると気付きながらも、27年の結婚生活を送った。マーティン・スコセッシ、スティーヴン・スピルバーグがプロデューサーに名を連ね、マット・ボマー、マヤ・ホーク、サラ・シルヴァーマンらが出演している。

『MEMORY(原題)』

ミシェル・フランコ監督作品の背筋の凍るような残虐性、感情の抑制は、“ラテンアメリカのミヒャエル・ハネケ”との呼び声も高い。揺るぎない独自性は、英語長編3作目『MEMORY(原題)』にも引き継がれるだろう。ジェシカ・チャステイン、ピーター・サースガード共演の今作は、高校の同窓会で再会を果たし、互いに信頼を築くのに苦労しながら過去への扉を開く2人の姿を描いている。キャストに、メリット・ウェヴァー、ジョシュ・チャールズ、ジェシカ・ハーパー、エルシー・フィッシャーら。

『ORIGIN(原題)』

テレビ業界で活躍後、長編復帰を果たしたエヴァ・デュヴァーネイ。ピュリッツァー受賞作家イザベル・ウィルカーソンのベストセラー『カースト アメリカに渦巻く不満の根源』の映像化の適任者と言えるだろう。ジョン・バーンサル、アーンジャニュー・エリス、ニーシー・ナッシュ=ベッツ、ヴェラ・ファーミガらが顔を揃え、現在のアメリカを形作った知られざる階層問題を掘り下げる。批判的人種理論をかき消そうとする一部の州の政治的陰謀を考えると、特に緊迫したドラマ作品だろう。

『哀れなるものたち』

2018年『女王陛下のお気に入り』でヴェニスを沸かせた「ギリシャの奇妙な波」の代表格、ヨルゴス・ランティモス。脚本家のトニー・マクナマラ、主演のエマ・ストーンと再タッグを組み、科学者(ウィレム・デフォー)によって命を吹き返した19世紀の若き女性のファンタジックな物語となっている。堕落した弁護士(マーク・ラファロ)と駆け落ちし、女性は経験や解放を追求してゆく。1992年のスコットランド人作家アラスター・グレイの小説を映画化し、ラミー・ユセフ、クリストファー・アボット、ジェロッド・カーマイケル、マーガレット・クアリーらが出演している。

『PRISCILLA(原題)』

若き女性の内面へと入り込むことは、これまでのソフィア・コッポラ作品を決定づける特徴だ。3作目『マリー・アントワネット』(2006)では、型破りな手法で伝記映画の殻を打ち破った。そんなコッポラの描くプリシラ・プレスリーには期待が高まる。アメリカで最もアイコニックなポップカルチャー物語をエルヴィス(ジェイコブ・エローディ)ではなく、「キング・オブ・ロックンロール」と結婚することとなった高校生の女の子・プリシラの目線から語る。新進気鋭の主演俳優、ケイリー・スピーニーは迫真の演技をみせたと評されている。

『THE PROMISED LAND(原題)』

マッツ・ミケルセンとアリシア・ヴィキャンデルが共演を果たしたニコライ・アーセル監督『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』(2012)は、印象的な歴史ドラマだった。デンマークのアーセル監督は、18世紀が舞台の壮大な物語でミケルセンと再タッグ。富・栄誉を求めユトランドの荒れ地を耕す貧しい兵士の姿を描いている。残酷な地主に敵視され、逃亡した使用人を匿って命を危険にさらしても、彼の決意は揺るぎない。

※今記事は要約・抄訳です。オリジナル記事はこちら

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