キアヌ・リーブスの一言が「スピード」の脚本を救った

「スピード」© 20TH CENTURY FOX / COURTESY EVERETT COLLECTION

「スピード」は、言うまでもなくキアヌ・リーブスの最高傑作の一つで、シリアスとユーモアが絶妙に調和した疾走感あふれるスリラー映画だ。

ポッドキャスト『50 MPH』では、監督のヤン・デ・ボンと作品に携わった脚本家、俳優、プロデューサーたちが、この映画での経験について語っている。

撮影現場での不品行疑惑(詳細は後述)の後、一年以上公の場で沈黙を守ってきた脚本家ジョス・ウェドンは、「スピード」の脚本の最終調整のために急遽招かれて参加し、最終的な台詞の約90%を手掛けたものの、WGA(全米脚本家組合)の仲裁もあり、彼の名前が脚本家としてクレジットされることはなかったという。この映画の元々の脚本家であるグラハム・ヨストは、長い間このプロジェクトに取り組んでおり、映画のコンセプト、登場人物、主要なストーリーの要素に責任を持っており、彼だけがこの映画で脚本家としてクレジットされている。

ともあれ、リーブスからの一つのシンプルな提案が、リーブスが演じる英雄的なキャラクターをどのように書くか考える上で、大いに役立ったとウェドンは話す。このキャラクターは、ロサンゼルスのSWAT(特殊部隊)の警官で、狂った爆弾魔に狙われたバスに乗っている乗客、中でもサンドラ・ブロック演じる共演者を含めて、全員を救おうと奮闘する。

「リーブスがSWATの人たちと一緒に過ごして役作りのためのリサーチをしたこと、そして彼らがいかに礼儀正しかったかを話してくれた。」とウェドンは回想する。「彼らは状況をいかに収めるかだけを考えていて、皆を『サー』や『マダム』とだけ呼ぶと。それを聞いて、このキャラクターがどんな人物なのかピントときたんだ。私の解釈では、彼は短絡的な思考をするタイプではなく、横断的な思考者だった。彼は自分が正しいと感じることを実行するためには、時には変わったアプローチも取るような人物。当時のアクション映画のヒーローは威勢が良いのが当たり前だったが、彼はその反対だったんだ」

「ホットショット」といえば、この映画で最も有名な台詞「ポップクイズ、ホットショット(=Pop quiz, hot shot!)!」であるが、ファンや映画関係者の多くは、このセリフがウェドンの仕事だと思い込んでいたようだが、ウェドンはこの「ホットショット」という言葉の生みの親ではないと語る。ヨストが「過去25年間、人々が私のところに来て『ポップクイズ、ホットショット!』と言ってきた。私はうなずいて微笑むしかなかったが、実はそれはウェドンの台詞であって、僕の台詞ではないんだ」と話すと、ウェドンは反論。「いや、それは違う。あの台詞はすでに脚本に入っていたんだ。みんなが覚えている唯一の台詞だけど、あれを考えたのは私ではないのだ」と。

不思議なことに、この映画の脚本に携わったスタッフの中で、この台詞のクレジットを主張する人物は1人もいない。しかし、ポッドキャストのホスト、クリス・タプリーは、入手可能な全ての草稿を調べたところ、このプロジェクトに参加した別の脚本家であるポール・アタナシオがこの台詞を思いついた可能性が高いと推察した。(ただしアタナシオ自身はそれを思い出せなかったようだ。)

ウェドンがクレジット争いに敗れた後、ウェドンとヨストは映画のプレミアで偶然再開した。「ウェドンがクレジットを得られなかったことで、私たちの関係は悪化しました。彼は私を責めているようでした。私は、『WGAのことだから、私が単独でクレジットされるべきだという手紙を書くに決まっている。私は何年もこの作品に携わってきたから、あなたが素晴らしい仕事をしたことを知っているが、WGAは “追加台詞 “のクレジットを認めないんだ』と伝えた。」とヨストは語る。

しかし、ウェドンはこう反論する。「彼は『君も同じことをするだろう』って言ったんだ。それが本当に悔しかった。なぜならそれは真実ではないから。私が次に作ったのが『トイ・ストーリー』だったが、(当時ピクサーのチーフだった)ジョン・ラセターが『主要なアニメーターは脚本家としてクレジットされるべきだと思う』って言ったんだ。それに対して私は100%同意したよ。なぜなら私は自分がやってもいないことで自分の手柄になることは求めていないから。でも、もう大丈夫、(クレジットを得られなかったことは)気にしていない。私にはもっと気にするべきことがたくさんあるから」と。

ウェドンは、テレビや映画の脚本家・監督として高く評価されていた人物から、2020年から2022年にかけて数々の不品行行為の告発を受けることになった。これは、1990年代の「バフィー 〜恋する十字架〜」シリーズのショーランナー時代から、2017年の「ジャスティス・リーグ」の監督に就任した時までの、スタッフや関係者に対する暴言が含まれている。さらに、「ワンダーウーマン」主演のガル・ガドットや、「バフィー 〜恋する十字架〜」の女優ミシェル・トラクテンバーグを含む複数の女優とも対立が起こっており、彼女たちは、撮影現場ではウェドンが女優と二人きりになることを禁じるルールがあったと暴露し、『ジャスティス・リーグ』の俳優レイ・フィッシャーは、ウェドンが自身のキャラクターのバックストーリーを削除したとも非難した。

ニューヨーク誌は、「バフィー」シリーズとそのスピンオフ作品である「エンジェル」を手掛ける際に、ウェドンが「マナー違反」や「礼儀知らず」であったことを認めた疑惑を深く掘り下げて調査した。それ以外の、人を脅したという疑惑や、彼の発言がしばしば誤解されたという主張について、ウェドンは否定している。「私は若かった。」と話した上で、「時々、怒鳴る必要があった。これは非常に若いキャストだったから、すぐに全てがカクテルパーティーに変わる可能性があった。」と話し、「(告発者たちは)私が暴力的な怪物であるかのように見せかけるために、現代のあらゆる武器となる言葉を使った。私は今までいた中で最も優れたショーランナーの一人だったと思う」と付け加えた。

※今記事は要約・抄訳です。オリジナル記事はこちら

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